34 / 59

第33話 興信所、できますよ?(2ヶ月前、13)

一番、学園の風紀を乱している人物が、現風紀副委員長の龍ヶ崎広明だ。 龍ヶ崎と目があった。 切れ長の黒い瞳が驚いたのか見開かれた。 そして、すうっと細められた。 「露出、緊縛、射精管理。とんだM男だね、桜井は」 と、龍ヶ崎。 汚いものを見るのは嫌なのか、すぐに視線がそれた。 「早く行ってよ。邪魔しないで」 先輩は龍ヶ崎にとげとげしく言ったあと、 「よそ見しないの」 と、オレに眉尻を下げて言った。 龍ヶ崎はオレを見ず、 オレらの横を通りすぎて行く。 「りゅう…が……い、……いで」 呂律がが回らなくて、うまくしゃべれない。 でも、 龍ヶ崎は引き返してくれた。 「来ないでよ。早くどっかいってよっ!」 と、先輩がわめくけど。 龍ヶ崎はオレの頭の横にしゃがみこんで、顔を覗き込んできた。 「なに?」 「……たっ、れて……」 龍ヶ崎はあいかわらず無表情で。 大きな手が伸びてきて、 「ひゃあん……」 龍ヶ崎がオレの頬をなでた。 「さわらないでよっ!」 と、先輩が龍ヶ崎のその手をはらった。 「薬を使いましたね」 龍ヶ崎はオレを見たまま、先輩に言った。 「……そんなの、使うわけないじゃない」 「この人、いたってノーマルなセックスしかしないですからねぇ」 「はっ、なにそれ?風紀はそんなんもんまで、把握してんの?」 先輩が鼻先で笑った。 龍ヶ崎は先輩を正面から見据えた。 「えぇ。正確な数は公表できませんが、何十人かはサーチしているのは事実です」 「はったりかますなら、もっと本当っぽいこと言ったら?」 「此花真希。あなたはS気質でタチ食い。自分より、体格のよい大柄なイケメンが好物。従順なネコに仕立てて奴隷のように扱うのが好き。常時、3、4人をキープしていて乱交三昧。あぁ、相手が恋愛感情をおしつけてきたら、めんどくさくてなって棄てるんでしたっけ?」 先輩は途中からみるみる顔色が悪くなり、 「なん……」 絶句した。 「あなたの中等部からの被害者たちの名簿も、ありますよ。見たいですか?」 龍ヶ崎は容赦なく、とどめをさした。 「強姦は犯罪ですよ」 「未遂だよっ!」 「つまり現行犯ですね。風紀委員室までご同行を。それとも連行される方がいいんですか」 龍ヶ崎は制服のジャケットから、スマホを取り出し、いじりだす。 「ちょっと待って。この子から誘ってきたんだから。だから強姦じゃないっ!」 必死に食い下がる先輩を、 「話しは風紀委員室で」 相手にしない龍ヶ崎。 「これ、あげるから、見逃して」 先輩は龍ヶ崎に何かを手渡した。 オレからは見えない。 先輩はかわいい顔の前に両手を合わせて、拝むポーズをした。 正体をしらなきゃ、ほんと、かわいいんだけどね。 「今回だけですよ」 と、龍ヶ崎。 え? 許しちゃうの? 賄賂(わいろ)に何をもらったんだよ。 「ありがと」 先輩は立ち上がって、軽やかに階段を降りていった。

ともだちにシェアしよう!