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第35話 香水の銘柄は?(2ヶ月前、15)

「重いんだから、暴れないの」 と、龍ヶ崎。 「おりょし、てっ」 「そんな体じゃあ歩けないでしょ。落とさたくなかったら、じっとしてて」 わざとじゃなくても、腕に限界がきて、落とされるかもしれない。 「……どこ、いくにょ……」 「風紀委員室」 「やらぁ」 「そこが一番近いから。それとも、このぼくに寮まで運ばす気?」 と、いらいらしたような龍ヶ崎。 とんでもないです。 オレはブンブンと首を横に振った。 「うっん……っ」 あげたくないのに、声かでてしまう。 オレを抱っこしたまま、階段をあがるもんだから、けっこうな振動が伝わってくるのだ。 「変な声ださないでよ。力がぬけちゃうよ」 「ご…れん」 愛撫なんかされていないのに、呂律がまわらないまま。 いつになったら、薬の効果が切れるんだろ? 階段を昇りきったのか、振動がゆるやかになった。 軽やかな足音が、静かなローカにひびく。 「りゅうっ……き、たっ……てくれれ……りがと……」 ちゃんと、お礼を言ってなかったから。 言ったのに、 「まだ、半分しか助けてないよ。礼は薬が抜けて正気になった時に、きっちりとしてもらうから」 少し怒ったような口調に、 「めいにゃ……をか……ごれん」 と言ったら、 「本当に。とんだ貧乏くじをひいたよ」 あ、 なんか、この人、 性格、悪いよ? 強姦されるところを助けてもらって、いまも運んでもらって。 話したこともないのに、面倒かけまくっているオレが悪いんだけど、ね。 『風紀委員で、仕事だから、仕方なく、助けてやった』 そういうのが、もろに出ている。 早く、この状況から、解放されたい。 けど、 密着した龍ヶ崎の体から、とても、いい匂いがしてて。 ずっと、このまま嗅いでいたい気にさせた。 オレ、匂いフェチとかじゃないのに。 龍ヶ崎の首にまわしている腕に力を入れた。 ぎゅっと抱きついた形になったけど、薬のせいに出来るから、いいよね。 龍ヶ崎が立ち止まった。 「落としたりしないから」 オレは返事の代わりに、龍ヶ崎の胸に頭を預けて、力を抜いた。 「あっんっ!」 龍ヶ崎は、オレの体をさらに密着するように抱き直した。 そして、ゆっくりと歩きだした。

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