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第45話 起きたら体が痛いです(2ヶ月前、25)

オレは目が覚めた。 目を開けたら部屋が暗い。 もう夜なんだな、と。 あぁ喉が渇いた。 なんか飲みたい。 ベッドから体を起こすと、 「うっあう!」 腰の痛みに悲鳴をあげた。 あえなく、シーツに撃沈した。 なに? この痛さ。 ちょっと動くだけで、激痛がはしる。 喉も痛いし。 腰以外にも、節々が痛くて、体を動かすのがつらい。 「……くそぅ、龍ヶ崎め」 声、だしにくいし。 「悠人ぉ、広明の名前を呼ぶなんて、ぼくちゃん、妬けちゃうな」 「神田さんっ?」 驚いて、声が裏返った。 暗くて、どこに人がいるのかわからない。 体を起こすのは、痛くて、したくない。 首をまわして、探すのも面倒くさい。 「喉、渇いた」 「はいはい、お姫さま」 動く気配がして、すぐに、ペットボトルを頬にあてられた。 あんまり、冷たくない。 常温ですか。 めちゃくちゃ近くにいたんだな、神田さん。 暗闇に目がなれてきて、神田さんをとらえられた。 うらやましい長身に眼鏡をかけた男前。 知的でクールな外見的な印象があるが、 実は、ざっくばらんなおおらかな性格、だと思う。 「……どうも」 「すごい声だな。どんだけ啼かされたら、そんなに嗄れちゃうんだか?」 声嗄れは事実で、反論するのも、だるいし。 ペットボトルのキャップを開けるのも面倒で。 「開けて」 神田さんにペットボトルをわたした。 「起きられる?」 オレは両手をつきだしお手上げポーズをした。 神田さんがベッドにのりあがってきた。 頭元に座られ、両脇に腕を入れられ、後ろから、体を引きあげられた。 掛け布団がずり落ちて、裸の上半身がさらされた。 痛みに顔がゆがんだ。 神田さんの膝の間に座る格好になった。 神田さんの体に体重をあずけた。 「人間座椅子、楽~」 と、少しはテンションがあがったオレ。 「……ちょっとは警戒しろよ」 逆にテンションの下がった感じの神田さん。 「して欲しいんですか?」 「いらねぇが、恥じらいが欲しいかなぁ」 「恥じらいねぇ」 復唱したら、頭をこづかれた。 神田さんはオレの背中から腕をまわすと、オレの腹の前で、ペットボトルのキャップを開けた。 口元に持ってこられた。 「飲まして」 と、オレ。 「……」 「神田さん?」 黙ってしまった神田さんを、見ようと首をひねったら、 「ほら」 と、頭を戻された。 口元にペットボトルの口をつけられ、本体をかたむけられた。 ぬるい水が喉をうるおした。 「……おいしい。もっと、欲しい」 「……」 「神田さぁん?」 「……おまえの場合、狙ってやってないとこが、たち悪いよな。ほら、好きなだけ飲め」 ペットボトルの口を、口につけられて、 オレのどこが、たちが悪いかききそびれた。 喉にながれていく水が、たまらなくおいしかった。 ペットボトルのたかむけかたが高くなって、たくさん水が口内に入ってきて、嚥下がおいつかない。 口角からあふれた水が、喉元をぬらした。 神田さんが、オレの口からペットボトルをはずし。 オレの胸元に流れていく水を、神田さんの指がぬぐった。 くすぐったくて、体を動かしたら、 「つっ……」 痛みに、うなり声がでた。 「まったく、簡単に薬なんか飲まされてんじゃないよ」 「……すみませんでした」 あの飴が媚薬なんて、しらなかったし。 まぁ、此花先輩の色仕掛けに、 ころりとはめられたオレが、 バカだったんだけどね。

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