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第46話 ……どんだけ寝てんの、オレ(2ヶ月前、26)

「腹、減ってねえ?」 神田さんがオレの腹をさわってきた。 くすぐったくて、体をひねったら、 「いっ……。減ってます」 動くと、やっぱり、痛い。 神田さんの手は動かなくなったが、腕は腰にまわったままだ。 「何がいい?  買ってきてやるよ」 と、神田さんが耳元でしゃべってきた。 「甘いもん」 神田さんから頭を離して答えたのに、 「ケーキ系で?」 神田さんはしつこく、耳をおってきて、話してくる。 また離れても、同じことをしてきそうなので、そのままにした。 神田さんに再び、体重をあずけて、欲しいものを答えた。 「う~ん、プリン系」 「がっつりしたもん食わないの?」 「寮に戻ってから、食べる」 「食堂もう、閉ってるぞ」 「えっ、もうそんな時間?」 神田さんの腕時計を見るけど、暗くて時間が確認できなかった。 「俺が来たのが7時すぎだったからな。もう、9時をまわってるんじゃないかな?」 「……2時間もなにしてたんですか?」 「なかなか目覚めない眠り姫を見てた」 「キモっ!」 ばっと、神田さんから離れた。 でも、神田さんにホールドされているから、たいして離れていないけどね。 「あのなぁ。ずっとね、起きないから、気になるじゃんか」 「おおげさな」 「丸1日以上、爆睡したやつに言われたくないな」 「は?」 「今日は4月9日の夜」 「……うそ」 昨日の午前中に始業式とHRがあり、そのあと、此花先輩と会った。 それが11時すぎ。 その後、すったもんだあったあと、この風紀委員室の仮眠室にきた。 どう見積もっても12時までには、ここに来たはず。 龍ヶ崎とあれこれした時間の経過が、わからない。 いくらなんでも、何時間も、やってないと思う。 ……否、思いたい。 入学式は寝こけて欠席してしまったようだ。 出席しなくても、別に支障がないけどね。 「疲れたのはわかるが、寝すぎ」 と、神田さんがあきれたように言った。 「……起こしてくださいよ」 「声かけたけど、寝っぱなしだったぞ」 「マジで?」 「死んでないか、気になるじゃん?」 ……風紀副委員長にヤられまくって衰弱死。 なんて前代未聞のスキャンダルだよ? そこまで、いくらなんでも、あの龍ヶ崎はやんないでしょうが。 「これって薬の副作用?」 と、オレ。 たしか龍ヶ崎が強力な媚薬と言ってたし。   「あぁ……過労じゃねぇの?」 「……心配かけてすみません」 「棒読みすぎ。心がこもってないぞ~」 と、苦笑いの神田さん。 丸1日寝てたのに、この体の痛さ。 オレが体を繋げた恋人たちも、 こんなつらい思いをしてたんだろうか?

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