48 / 59

第47話 中3まではバレー部だった(2ヶ月前、27)

「部屋、帰りてぇ」 と、オレはため息まじりにつぶやいた。 「もう一晩、泊まれば? まだ体がつらいでしょ」 「風呂入りたいし」 「ここで入ればいいじゃん?」 「……風呂あるんだ」 「……入ったの、覚えてないんだ?」 「えっ?」 「頭も洗ってるよ」 襟足にのびたくるっとまいた髪を、神田さんがいじってきた。 確かに、ふだん使っているシャンプーとは違う匂いがした。 腕からも、石鹸の香りがしている。 身体中、精液や体液で、ひどいありさまだったオレを、風呂にいれてくれたようだ。 「迷惑かけて、本当にすみませんでした」 すっきりさっぱりした体。 ということは、情事のあとの体を見られたわけだ。 龍ヶ崎はゴムを用意してたのに、(なま)でして、中出していた。 たぶん、何度も何度もエッチをしたわけで。 かなり体は汚れていた、と思う。 特に下半身がっ! ……体の中も洗われたはず。 じゃなかったら、お腹もこわさずに眠りこけていられないから。 「いやらしいこと、してませんよね?」 恥ずかしさをかくすために悪態をついた。 神田さんに顎をつかまれ、上をむかされた。 「して欲しかったの?」 と、真顔で問われ、 「……ごめん」 なぜか、怖くなってあやまった。 「……おまえ……その顔は反則」 神田さんが、オレから目をそらした。 そして、オレの顎からも手をはなした。 「悠人が嫌がることはしてないし」 「……でも、しつこい」 「それはおまえが、俺の言うことを聞いてくれないから。今回の件もそう。同じ目にあいたくなければ風紀に入れ。おまえに仕事なんかさせないし。籍だけおいとけばいい」 初等部3年からやっていたバレーボールを、中等部で辞めた。 ポジションはライト。 右膝の故障で跳べなくなり、引退前の中体連予選にはでれなかった。 戦力外のオレはチームメイトをスタンド席から応援していた。 そのとき、神田さんは高等部生だったのに、何度も中等部に来てオレにまつわりついていた。 高等部に入ったら風紀に入るように勧誘してきた。 あきもせず、2年間、誘われっぱなし。 断り続けるのも疲れるんだけど。

ともだちにシェアしよう!