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第50話 真っ裸なんですけど(2ヶ月前、30)

ドアの方を見たら、逆光を背にした長身が立っていた。 部屋の電気がつけられ、 おそろしいほどの無表情の龍ヶ崎の顔がみえた。 「目ぇ、覚めたんだ」 と、龍ヶ崎の温度のない声。 「……あぁ、うん」 龍ヶ崎の顔がみづらい。 つーか、気まずい。 龍ヶ崎から目をそらした。 そうしたら、神田さんのにやついた顔があり、目線をおろした。 オレ、マッバだし。 上布団がめくれていて、素肌がさらされていて。 両手首には赤い痣。 これの原因はわかる。 一見エロかわいい子猫ちゃん先輩のせい。 でも、その実態は女王様小悪魔悪癖タチ先輩が、オレのネクタイで縛ったからだ。 両腕の前腕についている虫さされのような赤い跡。 これ、ナニ? 覚えがないんですけど。 「で、なにしてんの?」 と龍ヶ崎。 「ナニモシテイマセン」 顔が強ばって、片言になってしまった。 「どうみたって、あんたが神田さんを誘惑してるようにみえる」 と、龍ヶ崎。 「誘惑されてたの、俺?」 と、神田さん。 「してないでしょ」 と、オレ。 たんに、 おせっかいで、世話好きの、 自分に危害をくわえたりしない先輩を、 人間座椅子にして、みおろして、 楽しんでいたわけで。 オレは神田さんの膝からおりた。 動くと、体が痛い。 特に腰が。

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