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第51話 ノーパン決定ですわ(2ヶ月前、31)
「オレの服は?」
どっちにきけばよいのかわからず、オレは独り言のようにつぶやいた。
龍ヶ崎が、入り口の横にあるハンガーラックにかけられている制服を手に取り、放ってきた。
紺のブレザーにグレーのスラックス。
水色のシャツと臙脂色のネクタイ。
一番肝心なものがない。
「あのさ、龍ヶ崎」
「なに?」
「下着は?」
「捨てた」
「なんで?」
「汚いから」
「汚いパンツなんかはくなよぉ。チャラモテ男が台無しじゃん。いつでも、どこでも、臨戦態勢で、勝負下着をはいとけよ」
と、神田さん。
言葉たらずだよ、龍ヶ崎くん。
アレとかナニとかで、汚れたわけでして。
どこでなにかあったとき、人に見せても恥ずかしくないものを着用してますよ、神田さん。
「はくもの、ください」
と、オレ。
「ないよ」
と、龍ヶ崎。
「は?」
と、オレ。
「なくても、困んないでしょ」
と、龍ヶ崎。
ないと困るだろう。
だって、パンツだよ?
ノーパンの趣味なんてないし。
「……パンツぅ」
が欲しい。
オレは口の中で言ったけど、
龍ヶ崎の目が早く着替えろと催促してやがる。
「俺のでよかったら、かしてあげようか?」
と、神田さん。
「はい、よろこんで」
と、オレ。
やっぱ、神田さんはやさしい。
冷血感の誰かさんとは、ずいぶんな違いだ。
神田さんは膝立ちになって、ベルトを外しだした。
「……なに、してるんですか?」
と、オレ。
「パンツ脱ぐんだけと」
と、素の神田さん。
「はあ?」
と、オレ。
「パンツ欲しいんだろ?」
と、神田さん。
「はいてるパンツはいらないです。その気持ちっていうか、意気込みだけいただきます。パンツくらいなくても、なんとかなりますからっ!」
と、オレは早口でまくし立てた。
「そんな趣味してんの?」
と、神田さん。
人がはいてたパンツをはけるほど、神経が図太くないわですよ。
見た目通り、繊細にできてますから、オレ。
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