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第52話 サンドイッチの気分(2ヶ月前、32)
オレは観念して、制服を着ることにした。
ぴしっとしたプレス跡。
クリーニングしたばかりの独特の匂いがした。
シャツに袖を通してボタンをはめていく。
そばにいた神田さんが、後ろからオレの首にネクタイをまわしてしめてくれる。
神田さんがオレに覆い被さった格好になった。
龍ヶ崎がベッドに近より、ゆっくりとのりあがってきた。
「龍ヶ崎?」
こいつはオレの足首をつかんで、制服のズボンをはかしてくれる。
なに、この図?
前から、後ろからかしずかれるお姫さまかよ……。
怖すぎる。
そんな趣味ないし。
両足にズボンを通されて、
「腰、浮かして」
と、龍ヶ崎に言われたけど、
素直に従えなくて、
「……手、離して。自分ではくから」
シャツのおかげで、なんとか隠れてるアソコに、少しほっとする。
人に堂々とさらすもんでもないし。
「い″っ」
体を動かすこと激痛がはしる。
そっとお尻を浮かしてズボンをはいた。
龍ヶ崎がオレの顔に近づき、
「被害届、出してね。じゃないと調査書と終結報告書が書けないから」
と、言ってきた。
媚薬もられて襲われそうになったことを書くのが、被害届だとわかるけど、調査書ってなに書くんだ?
首をかしげたら、
「おまえ、ほんと、そんな仕種にあわねぇの」
と、神田さん。
耳元でクスクスと笑われて、くすぐったい。
「調査書って、なに書くの?」
と、オレ。
「踊り場から、薬が抜けたいままでの現状を詳細に書き込むこと」
と、龍ヶ崎。
「どの程度の詳細さで?」
と、オレ。
「ありのままに」
と、龍ヶ崎。
ありのままって……。
あれや、これや、それ、ですかっ!
カッと、顔に熱が集まってきた。
頬が熱い。
「それはそれは興味深いなぁ」
と、神田さん。
後ろから長い腕をまわし、オレの体を抱きしめてきた。
オレの顔を覗きこんで、
「びっくりだな。おまえがそんな顔するなんて」
と、驚いた顔をするから、オレはますます顔がほてってきた。
両手で顔をおおった。
「……それは、困る」
と、オレ。
「どうして?」
と、真正面にいる龍ヶ崎に問われた。
オレの醜聞なんて、いまさらだけど。
噂ならどんな尾ひれがついたって、戯れ言にすぎないから、気にとめなかった。
でも、文書にして残したら、誰かの目にふれるわけで。
風紀委員には守秘義務がかせられているけど、赤裸々な事実をしられるのだ。
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