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第53話 ぶっちゃけ面倒くさい(2ヶ月前、33)

「なかったことにできない?」 と、オレ。 「ムリ」 と、龍ヶ崎が即答した。 オレの顔から両手をはずされた。 その手は離されずに、 「真っ昼間に抱っこされて、委員室に来てるのに、ごまかしはきかないでしょうが」 と、龍ヶ崎。 「……じゃあさぁ、少年Aとかにして、オレの名前を伏せたりできないかなぁ?」 と、ずるっこい提案をしたオレ。 「往生際が悪い」 と、龍ヶ崎に冷たい目でみられた。 「なんでそんなに嫌がるのか、わかんねぇわ。加害者をかばっちゃうほど、善人でもないくせに」 と、神田さん。 あのおそろしく、性格のねじまがった変質的な性癖をもったエロい先輩の肩をもつ気は毛頭ない。 ただ、 たんに、 自分の醜態をさらしたくないだけ。 他人に対する優しさなんか、これっぽっちも持ち合わせていません。 自分擁護のためだけですよ。 「で?」 と、神田さん。 オレのずるい気持ちを表にさらそうとする。 「調査書は勘弁して欲しい、です。……今回のことはなかったことにして、欲しいです」 「此花をかばうわけ?」 と、神田さんに険がある声で問われた。 「えっ?」 と、オレ。 なにもかも、お見通しですか……。 加害者も誰かしれちゃってるんですね。 眼前の龍ヶ崎をじっとりとみたけど、 無表情のままだし。 「なにも知らないで、二日間も仮眠室を占拠させれないしな」 と、神田さん。 好きで、立て籠っていたわけじゃない。 誰かさんに、体を酷使されと、疲労困憊で爆睡しちゃってたんだってば。 「此花先輩のことは、どうなろうとしったこっちゃないです。特に暴行されたりしてないし。オレは平穏無事に学園生活を送りたいだけたから」 と、オレ。 「平穏無事ねぇ」 と、龍ヶ崎だ。 かなり投げやりな言い方だ。

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