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第54話 交換条件(2ヶ月前、34)
神田さんは、オレの顎をつかんで首を横向きにした。
両手は龍ヶ崎につかまれたままだ。
「そんなにイヤなら、もみ消してあげようか?」
と、神田さん。
「ほんとに?」
と、オレ。
やっぱり、神田さんてやさしいな。
なんか、キラキラした目で見てしまうわ。
「あぁ」
と、神田さん。
「ありがとう、神田さん」
と、オレは語尾にハートマークが付きそうな勢いで感謝をつげた。
「だだし、条件がある」
と、神田さん。
「はい?」
と、オレは首をかしげた。
「風紀委員になること」
と、神田さん。
「は?」
と、オレは間抜けな声をだしてしまった。
「親衛隊結成の承諾」
と、神田さんがつけたした。
「え?」
と、オレ。
オレが嫌がってた両方を持ち出してきやがった。
「この二つの条件をのめたら、おまえの言い分をきいてやるよ、悠人」
と、神田さん。
「どっちもヤだ……」
と、しりすぼみに言ったオレ。
神田さんが、大きなため息をついてから、
「じゃ、被害届は広明が代筆して」
と、言った。
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