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日置くんはコスってほしい7

次のポイントまで、移動時間は十分ちょっと。ホントすぐ着いた。 広い日本庭園と昭和初期の和洋折衷(わようせっちゅう)の邸宅がある公園だ。 邸宅はもともとそこにあったもののそばに、歴史的な建築物が二軒、保護のため移築されている。 全て見学ができて、そのうち一つが昼食会場になっていた。 四角い漆器にちまちま料理が入った『季節のお弁当』とかいう、全然弁当っぽくない弁当だ。 美味しいかもしれないけど、こんなもんで足りるのかなって思ったら、けっこう腹一杯になった。 美味い料理に満足して、ゆっくり食後の茶を飲もうとしていると、落ち着かない様子の日置に腕を引かれる。 「え……なに?」 「こっち……その、ここの邸宅さ、休憩室が取れるんだ」 入口すぐのカウンターに連れて行かれた。 日置がスタッフに声をかけると、すでに予約をしていたらしい。すぐに二階の部屋に通された。 畳の部屋だけど絨毯が敷いてあって、クラシカルなテーブルセットが置かれている。 「お茶とお菓子はいつお持ちしましょうか?」 「すぐで……その後、撮影をするんで退室の時間までそっとしておいてもらえますか?」 「かしこまりました」 日置の手際の良さと、ヤる気に圧倒された。 いや、でもこれこそオレの知ってるバイトサブリーダーの日置だ。 一応カメラも準備していると、スタッフがすぐにお茶とお菓子を持って来てくれた。 貸切のご休憩室とはいえ、庭園を眺めながらお茶とお菓子をゆっくり楽しむのが本来の目的のはずだ。 コウイウ『ご休憩』は想定外だろう。 基本は和室だけど、出入口はドアだ。 窓の障子もデザイン窓みたいに、少し変わった組木に貼られている。 日置は風景を楽しむ気なんかさらさらないようで、すぐにその障子を閉めてしまった。 けど、そんな即物的な行動も、この部屋の風情を損なうことはなかった。 組木細工の障子に光が差し込み、影が淡く綺麗な模様を作り部屋を彩ってくれている。 その幻想的な雰囲気に柄にもなく感動してしまった。 「きれいだな……。サツマ、写真撮ってよ」 オレの言葉に、日置は一瞬戸惑ったような顔をする。けど、すぐに嬉しそうに目を細めた。 「そうだな……。キレイだ」 うっとりとした表情でカメラをかまえる。 「あれ?オレを撮るの?」 「イブちゃん以外に何を撮るんだよ」 「影が綺麗だから……」 「……うん、影に彩られてイブちゃんがすごくキレイだ」 そう言って、クラシカルな布張りの椅子に座るオレを撮り始めた。 一応オレもささやかにポーズをとってみる。 日置は、腰を落としてちょっとだらしなく座るポーズをご所望だ。 背もたれに寄りかかるようにして、足をパタパタとさせると、なぜか日置の気分がぐっと上がった。 「イブちゃん、こっち、この柱のとこで、畳に直接座って」 言われるままに木肌の綺麗な柱のそばに移動して、足を伸ばして座ったり、片足ずつ立てたり、ポーズを変えていく。 だんだん、日置の期待するものもわかってきた。 どうやらパンチラも嬉しいけど、それ以上に見えそうで見えない感じが大好きのようだ。 特に、フトモモの後ろ側や内モモが見えると萌えるらしい。 「ああ……イブちゃん……かわいい……あ、も……それ……はぁ……」 もう少しはっきり言ってくれればいいのに、ブツブツ言うのが少し気持ち悪い。 ちょっとブツブツ言うのが気になったので、畳の上を四つん這いになって日置の側に行くとだんだんハァハァが大きくなってきた。 「サツマ、ハァハァ言ってる」 「あ、ゴメン……気持ち悪かった?」 「ふふっ。少し。でも、もっとハァハァ言わせたくなる」 「え……」 「どんなポーズ取ってほしい?一個だけなら、恥ずかしいポーズも取ってあげる」 「えっ、えっ、どうしよ、一個だけ?いっこ……えーっと……!」 急にウロウロして日置が悩み始めた。 「あまり迷ってると、またタイムアウトになるぞ」 そう言ったら日置が焦って指示をしはじめた。 「そこの押入のふすま開けて……、あ、いいね。何も入ってない。じゃ、そこの前に立って」 「普通に立つだけ?」 「え……ええっと、恥ずかしいポーズやってくれるんだよね……」 「あんまり変なのは無理だぞ」 「だ……いじょうぶ……だと思う。その……スカート……ちょっとづつ……その自分でめくって……くれたりしない……ですか」 「…………………………どこまで」 「あ、いや、ゆっくりでいいし、その、イブちゃんがここまでなら……ってとこで止めていいから、ほんと、その、イヤじゃない範囲で」 まあまあ変態チックな要望だと自覚があるんだろう、妙におどおどしながら頼んでくる。 自分で大丈夫なトコまででいいんなら、ま、いいか。 そう思ってスカートを持ち上げていくけど……日置の興奮具合がスゴイ……。 まだゆるゆると、五センチあげたくらいなのに、目を爛々(らんらん)とさせている。 「サツマ……これ、どういうイメージなの?」 わざわざ押入を開けた意味が分からなくて聞いてみた。 「あ……と、お仕置きで押し入れに閉じ込められ、許してもらうためにいいなりになっちゃってるイブちゃん」 「……」 ちょっとマニアックな設定に顔をしかめたら、日置の興奮度が増した。 「その、イヤそうな顔……イイ……」 やっぱり、日置はマニアックだ。 「サツマの変態。…………何嬉しそうに笑ってんだよ」 「い、いや、イブちゃんがかわいいから……。はっ。はぁ……イブちゃん、そんなギリギリ……」 スカートを下着ギリギリのとこまで持ち上げたら、日置のハァハァがかなりのものになった。 「これ以上見たかったら、写真は、ダメだぞ?」 からかうつもりで言ったオレの言葉にピタッと日置の動きが止まった。 そしてゆるゆるとテーブルの上にカメラを置いたと思ったら、畳に崩れ落ちた。 「え……どうした」 「や、そんな……うん、いや、その先を……見たい……です」 「どうせ見せパンとかいうやつだけどな。中にもう一枚はいてるし」 「見せパン……見せ……見ていいってこと……いや、見たい」 「サツマ……そんな見たい?ていうか、見て嬉しいの?」 「み、見たいよ……見せパンって言ってもそうそう見れるものじゃないだろ。……あ……まさか……結構見せてるとか?だから平気なのか?」 急に日置の目つきがカッと変わった。 怖い。 「見せてるわけないだろ。こんなの履くの初めてなんだから」 「は……。よ、よかった」 ホッとした様子で日置が畳をズリズリと膝立ちで近寄ってくる。 近いよ! オレの股間まで数十センチの距離でかぶり付きだ。 たかだか見せパンでここまで期待されると、さすがに恥ずかしい。 けど、自分で言いだしてしまったことだし、しょうがない。 そろそろと、さらに上までスカートをめくり上げる。 見せパンだから平気だって思ってたのに、ガン見される恥ずかしさで膝がモジモジしてしまう。 多分、顔も赤い。 スカートをパンツの半分くらいまで持ち上げたけど、日置は無反応だ。 あんなに見たがってたくせに。 やっぱ、ガッカリしたのかな。 見せパンって言っても、ペチコートとパンツの間みたいな、ふんわりかぼちゃパンツだ。 しかもよく見ると下に履いてる男モノのローライズが透けてる。 目立ちにくいよう、イエローにしたけど、逆にブルーのラインが目立っちゃってるかも知れない。 「サツマ、こんなの、見ても楽しくないよな」 ちょっと困り顏で聞いたら、ずっとフリーズしたみたいに動かなかった日置が激しく目を彷徨わせ始めた。 「た、楽しいとか、楽しくないとかそんなこと超越して、とにかく可愛いくって、感動して……。この透けてる中の下着も……見、見せてもらえたり……?」 う……なんか日置がスゲエ変態臭い。 「男モノのパンツだぞ?見て嬉しいの?」 「うっっっれしいに、決まってるだろっっっっ。こんな可愛いイブちゃんが男モノの下着を着けてるとか、興奮するに決まってる!」 決まってる……とか言われても、全然ピンとこない。 「じゃ、サツマがコレ、脱がせてよ」 ただ言ってみただけのつもりだった。 けど、日置はコントみたいに両手をブルブル震わせながら、そっとオレの履いてる見せパンを掴んだ。

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