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日置くんはコスってほしい14

やっと撮り終わって、ほっと息をつく。 似たようなシーンを何度も撮られてさすがに疲れてしまった。 「ラブちゃん、本当にありがとう!俺、感動した!」 アレのどこに感動の要素があったのかさっぱりわからないけど、目を潤ませたこの嬉しそうな表情からして、本当に感動したんだろう。 「もう、次は絶対こんな事しないからな?」 オレの言葉に日置が目を見張った。 なんだ?そんなにショックだったのか? でも、絶対しないぞ。 そう思っていたら、勢いよく日置に抱きしめられた。 「ラブちゃん……。うん。次……。次……本当に会ってくれるんだ」 「あ…………。だから……そう、言っただろ?ちゃんと、見つけろよ?」 「うん。必ず見つける。ラブちゃん……まだ数時間しか一緒にいないのに、自分でも信じられないくらいに……本当に大好きなんだ。……って、その目……信じてない?」 日置がじっと見つめてオレの頬を撫でる。 「だから……信じるかどうかは……」 「また会ったとき……だね?」 フッと日置が笑った。 そして顔が近づく。 ……あ……どうしよう……。 一瞬のためらいを吸い取るように、日置の柔らかい唇が、オレの唇を塞いだ。 ……けど。 チュッと音をたて、すぐに離れる。 なんだか、小学生みたいな微笑ましいキスだった。 オレの顔にも自然と笑みが浮かんだ。 日置の目を見つめて、ほんのちょっとだけ唇を突き出す。 子供のキスの催促だ。 「ん〜」 「ちゅっ」 見つめ合って、フッと笑って、どちらからともなく、また唇をチュ、チュと軽く合わせた。 ハッと気付くと、部屋の貸切の時間を少しオーバーしてしまっていた。 慌てて、障子と窓をあけ、自分の姿におかしなところがないか、鏡台でチェックする。 服もカツラも大丈夫。 足の……キスマークも見えない。大丈夫だ。 口紅は……完全に落ちちゃってるけど、元から薄くしかつけてないし……大丈夫かな? 化粧道具なんて持ってないし、そもそも自分で直せる気がしない。 オレは大丈夫だけど……。 「サツマ、顔洗った方がいいかも」 「え……?」 「目が潤んでるし、その……顔にもその……オレのがふれただろ?」 日置が慌てて鏡で顔を確認したけど、 「洗わなきゃダメかな?」 「え、何言ってんだよ。汚いだろ」 「汚くないよ。ほら、有名人とかと握手して、手を洗わないとか言う人いるだろ?」 「は……?ばかっっっ、手とチンコじゃ全然違う。顔洗って、うがいもしろ」 オレの言葉に日置が情けなく眉を下げる。 「うがいは嫌だ。ラブちゃんとキスしたすぐあとなのに……」 オレはその横を通り抜け、窓際の細い廊下の奥にあるトイレ前の小さな洗面台でガラガラとうがいをした。 「あっっ……!ラブちゃんヒドイ……」 情けない声を出す日置の唇を、人差し指でちょんと押さえる。 「サツマも、顔洗って、うがい。そしたらもう一回……」 軽く唇を突き出してキス顔を見せたら、素直に言うことをきいた。 ほんと操作楽々だな。 だけど、日置のそんなチョロいところもすっかり可愛く思えるようになってしまった。 顔をタオルでガシガシと拭いてから、ニコニコ顔で日置がオレを振り返る。 そして、軽く唇を突き出したら……。 「お時間過ぎておりますが、そろそろよろしいでしょうか……」 「はっっっはいっ!もう出ます!」 扉の外からのスタッフの退出を促す声に驚いて、日置がオタオタとなる。 慌てて荷物を手にして、けど、オレのほうをチラチラ。 キスできなかったから後ろ髪引かれる思いなんだろう。 けど……。 「サツマ、ん〜〜ちゅっ」 スタッフは扉の外だ。 チュッとふれるだけのキスくらい、全然問題ない。 「……ラブちゃんっっ!!!……ん……ちゅ」 嬉しそうに日置もキスを返した。 ふれるだけのキスでも、唇の先が甘く痺れる。 ヤバイな……。 オレ、かなり……日置にハマってるのかも。 そのまま、チュ、チュ……と二度ほどキスを交わして、オレたちはツアーバスへと戻った。

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