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日置くんはコスってほしい19[終話3]日置くんはラブちゃんをみつけた。…え?だから?
会いたい気持ちが我慢できなくて、まだ痛む足を誤魔化しバイトに出た。
いつも通りに働けないことが申し訳ないが、ラブちゃんに会いたいという、個人的な感情を優先させてもらった。
なのに、いざラブちゃんを目の前にすると、恋心が溢れ頭が真っ白になってしまう。
ただでさえドキドキするのに、それに加えて、先日の焼き網を落とし負傷するという自らの失態が思い出されて、萎縮する。
ラブちゃんの前でまた何かやってしまいそうで落ち着かず、まともに顔が見れない。
いや、まともには見れないが、コッソリとなら見つめまくっている。
まくり上げた袖から伸びるしなやかな腕に、ラブちゃんの足の印象を重ねる。
後ろ姿を見れば抱きしめたくなる。
あのお尻に腰をすりつけたい。
伊良部の姿をしていてもラブちゃんは可愛い。
一度その可愛さを認識してしまえば、もう気付かなかったことには出来ない。
メニューの受け渡しの時に手がふれた。
もう、それだけでドキドキが止まらない。
バイトの上がりの時間が一緒なら、できるだけ一緒に帰るようにしている。
いや、一緒に帰るというか、見守りだ。
俺が足に焼き網を落としたあの日も、大崎さんに狙われていたみたいだし、ラブちゃんの可愛さに気付いてしまったのが俺だけのはずはない。
頼まれるとついついサービスしてしまうラブちゃんの、あの流されやすさだって俺だけに向けられたものとは限らないんだ。
通りすがりに、アイドル並みのイケメンが、急に土下座をして『フェラさせてくれ』なんて頼み込んできたら、優しいラブちゃんは、うっかりファスナーを開いてしまうかもしれない。
ヤられるのは嫌だってキッパリ言ってたから、そっちは断るだろうけど『下のお口でキミを味見させて?』
なんて言われたら、ついついほだされて、入刀してしまうかもしれない。
ラブちゃんは『お腹がすいて力が出ないよ』なんて言ってる人がいたら、美味しいアレを、下のお口からお腹いっぱい埋め込んであげてしまうような、優しさと騙されやすさがありそうで、危うい。
そんな危険からラブちゃんを守らなければ。
ラブちゃん。
俺の天使。
キミの処女は俺が守るよ。
だから、かわりにラブちゃんの童貞を俺に……なんてなっっ。
……はぁ……。
永遠の処女か。
いい響きだ。
けど、俺の『見守り』も俺の帰り道とラブちゃんの帰り道が重なるほんの数百メートルだけだ。
それ以上見守ると、俺がストーカー扱いされてしまう。
そうやって、ラブちゃんを見守って、一週間。
帰りの夜道を行くラブちゃんが、急に足を速めた。
そして、サッと角を曲がる。
何かあったのか、心配になって俺も足を早め追いかけた。
ダンッッ!
何かにぶつかって、足を痛めている俺は踏ん張りが利かずに路上に倒れこんでしまった。
「大丈夫?足、痛くなったりしてないか?いや、足だけじゃなく、どっか痛いとことかない?」
ラブちゃんがしゃがみ込んで俺を気遣ってくれる。
ああ、天使降臨。
しかも、手をつないで立たせてくれる……。
ああ、柔らかい手だ。
こうやって見るとけっこう大きいし、指も長い。
「手を……」
「あ、ゴメン」
久しぶりに、しっかりとふれたラブちゃんの手の感触に、夢中になりすぎていた。
慌てて放そうとすると、ラブちゃんが俺の手をキュッと握ってくれた。
ケガ人だから手をつないでいてくれるって……。
ああ、だったら俺、ずっと怪我をしていたい。
歩きながら、たまにラブちゃんが俺の手をギュギュっと握ってくれる。
あふ……あふぁ……そんな、甘えるみたいな……可愛い……愛おしい……たまらない。
夜道なのに、全てが輝いて見え、フワフワと雲の上を歩いているみたいだった。
ずっとこのままで……もう、一生このままで……。
そんな事を思っていたら……。
「日置」
「え、あ、なに?」
急にラブちゃんに呼ばれた。
そして、いきなり……。
ラブちゃんにふんわりと引き寄せられて、チュッと甘く唇にキスをされた。
え……。
クラリと視界がゆらめいた。
と思ったら、俺は歩道にへたり込んでいた。
ただでさえ、フワフワと足がおぼつかないくらい浮かれていたところに、不意打ちのキスだ。
もう全く足に力が入らなかった。
あまりにおぼつかなくて、魂だけになって漂っている気分だ。
「お前、オレになんか言いたいことあるんじゃない?」
すっとラブちゃんの顔が近づいた。
……言いたいこと……そう聞かれても、フワフワとした頭は全く動かない。
でも、とりあえず、今一番の望みは……。
「も……も……もう一回……。キス……して。…………ください」
一瞬、ラブちゃんが『え?』っという顔をした。
どうやら、ラブちゃんにとって、俺の答えはハズレだったらしい。
けど、今はそれしか思い浮かばない。
そして、流されやすいラブちゃんは、見当違いな俺の言葉を一蹴することもなく、再び俺にキスをしてくれた。
さっきのキスで少し湿った唇が、柔らかく俺の口を塞ぐ。
俺はすぐにその感触に夢中になった。
はふ……と息をつこうとするラブちゃんの口を、離すまいと追う。
すると、クッとあごを掴まれた。
「ガツガツすんなよ。逃げないから」
俺が『もう一回』と言ったから、一度離したらおしまいだと思って焦っていたけど、ラブちゃんはそんな狭量ではなかったようだ。
また、優しく唇があわされ、そろりと舌で唇を舐められる。
ふぁ……。
鼻から抜けるような、ふんわりとした快感が踊った。
ラブちゃんの舌を求め、口を開け、軽く吸う。
すると、躊躇なく侵入した舌が、前歯の裏をネロリとなぞる。
そのくすぐたいような甘い快感に、一気に現実感が無くなった。
みっともないくらい息が荒い。
ラブちゃんの舌をねだるように、俺もそっと舌をからめた。
「ぁ……はぁ……」
「さっき、オレに言うべきことないか考えてろって言っただろ?思いついた?」
そういえば、さっきそんな事を言っていた気がする。
言うべきこと……今……言うべき……。
「……ぁは……ぁ。キス。……きもちぃ……」
「いや、そうじゃなくて」
そうじゃない……?
「はふ……キモチいいデス」
「いや、まあ、オレも気持ちいいけど?」
ああ、ラブちゃんも俺とのキスで気持ちよくなってくれてる。
嬉しくなって、さらに絡み付かせるようにラブちゃんの舌をなぞった。
「ぁふ……もう、路上だってわかってる?てか、めっちゃ太ももさわってくるし」
「ん……わかって……マス」
わかってるけど……止まらない。
そんなこと、どうでもいい。
こんな自分が信じられない。
ああ、ラブちゃんを見つけたら、ご褒美くれるって言ってた。
『このツアーの後にサツマがオレのこと見つけられたら、今度はオレがサツマのこと、キモチ良くしてあげるから』
コレがご褒美ってことだろうか。
あの時は『ラブちゃんが俺のモノをさわってくれる』ってことだと思ってた。
けど、こんなところで、人目もはばからずに、こんな前戯みたいなイヤらしいキス……。
コレもキモチいい……。
ぁ……ほんと……スゴイ。
もう……ぁふ……キモチ良過ぎて……頭がおかしくなるっ。
「ああ、もうなんか日置ダメだな」
「ふっっっ???えっ?俺ダメ?」
ビクンと緊張してラブちゃんの服を握りしめた。
俺、キスに夢中になりすぎて、何かやらかしてしまったんだろうか?
「ん、キスに夢中でダメになっちゃってるぞ?」
優しく首をなでながら甘く言われて、一気に緊張がとけ、よりメロメロになってしまった。
「……ダメでゴメン。でも……壊れそうなくらいキモチいい……」
ああ、もう、最高だ。
けど…………。
コレはコレでかなりのご褒美だけど、やっぱりラブちゃんの手に包まれてみたい。
さらに言えば、ラブちゃんがお口いっぱいに俺のモノを頬張ってくれたりとか……。
はぁ……もっともっとって、欲張りだな、俺。
でも、ラブちゃん。
俺、言われた通り、ラブちゃんを見つけたよ。
だから……。
だからどうか……。
どうやったらご褒美としてさわってもらえるのか、どうかどうか教えてください!!!!
《1章=終》
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