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2章:日置くんはスキだらけ1/日置くんはラブちゃんを飲みに誘う
バイトの帰り道、ラブちゃんがキスをしてくれた。
多分、ご褒美のキス。
バスツアーの後、ラブちゃんに再会したはいいけれど、約束のご褒美をどうやって貰えばいいのかわからず、困っていた。
ラブちゃんに近づきたいと思うけど、距離の詰め方もわからないまま。
そして、ラブちゃんとお近づきになりたいのは、自分だけじゃないということに思いいたり、距離を縮めることと、ラブちゃんの安全の確保のため、ずっと見守りを続けていた。
そう、あれは俺が帰り道ラブちゃんの安全を見守っていることに対しての、感謝とご褒美のキスなんじゃないかと思っている。
いや、思いたい。
あれがコスプレ撮影イベントで約束した『ラブちゃんを見つけたご褒美』だったりしたら、俺のコレをさわってもらったり、さらにはラブちゃんのお、お口に入れてもらうという甘い夢は露と消えてしまうことになる。
ラブちゃんの柔らかな手に包まれ、慎ましやかな口に俺のコレが入って……。
あの可愛らしい舌が、俺のコレにふれて……。
……ダメだ、ついついコスプレのラブちゃんで想像してしまった。
あの格好じゃ、可愛らしく清廉なラブちゃんを穢すという背徳感で興奮しすぎてしまう。
ふれた途端イクという、みっともないことになってしまいそうだ。
伊良部 で…、伊良部のときのラブちゃんなら…。
バイトの和風な制服の胸元がちょっと乱れた伊良部が、座敷席の畳の上で膝立ちで……とか。
こ、このあいだのベージュのハーフパンツはエロかった。
肌とそんなに変わらない色で、体勢によっては綺麗にお尻のラインが出て……。
だめだ、薄いようで綺麗な丸みもある、あのお尻を思い出すと……。
いや、お尻が見えなかったとしても、俺の顔の上にまたがってしゃぶられたりしたら……。
うぁ…………。
69という体位を考えたヤツに、ノーベル賞を与えたい!
ラブちゃんにお口でしてもらいながら、ラブちゃんの下半身にさわり放題とか!!
あの太ももにさわったり、ラブちゃんのモノにキスしたり。
太ももできゅっと顔を挟まれたりしたら……。
はふ……ダメだ。
俺…………秒殺だ。
ま、まぁ同一人物だからな。
むしろ素のラブちゃんの方が、想像がリアルでヤバい。
とにかくご褒美をもらう前には一度抜いておかないと、早漏の烙印を押されてしまう可能性が非常に高くなりそうだ。
早漏対策はいいとして、そもそもどうやってご褒美をくださいとお願いすればいいのか、ずっと悩み続けている。
もう本当にラブちゃんのお口に入れてほしくてたまらないんだけど、ラブちゃんに『コイツしゃぶらせたがってんだな』と思われるのはいやだ。
ツンデレで『もう、エッチなんだからっ!』なんて言われる分にはいいけど、『まじカラダ目当てなんだな……』とドン引きされたら……。
あ……想像だけで涙が。
お願いをするためには、とにかくバイト以外で二人きりで会わなければ。
はぁ……。
ラブちゃんと二人で……。
デ、デート……。
映画とか、水族館……。
いや、それはまだ早い。
あ、今の季節なら夏祭り。
いいかもしれない。
……いや、不自然か?
今の俺とラブちゃんの距離感でいきなり夏祭りに一緒に……とか。
着乱れた居酒屋制服を妄想しただけでこんなにドキドキするのに、夏祭りに浴衣のラブちゃんとか……。
わかってる、男性用の浴衣だ。
男性用の浴衣……だから……ラブちゃんは何も気にせずに大股開きで歩いてしまって、浴衣の裾 が大きく開いて、膝なんか丸見えで……。
……。
「金魚すくいしようか?」
無邪気に水槽の前にしゃがみ込んで俺を見上げるラブちゃん。
きっと可愛いだろうな。
俺も横に並んで座って、
「はい、日置の分!」
ラブちゃんからポイを貰って……。
けど、俺はすぐに破けてしまって。
「あはっ!ヘタクソっ♡」
なんて、言われたりっっっ???
「こうやるんだって、ちゃんと見てろよ?」
なんて一生懸命狙いを定めるラブちゃん。
見てろなんて言われなくても、もちろん俺はいつだってラブちゃんを見てるよ。
ちょと奥のほうに狙いを定めたラブちゃんが片足をたてて……。
ガッパリ開いた浴衣の合わせ目から、柔らかそうな太ももがのぞいて、夜店の裸電球に照らされ俺を誘うんだ。
はぁ。ラブちゃんの捕まえた金魚と一緒に、俺も部屋に連れて帰ってほしい。
ラブちゃんに飼われて、餌をもらって……。
……だめだ。
それじゃあ世間一般で言うところの、ヒモというヤツだ。
それは違う。
それにまだ二人で夜祭りワッショイな段階じゃない。
ここはもう少し普通に、飲みに誘ってみよう。
大学の学生会館の売店に行くと、中央の円形になっている大きな吹抜けから、二階の食堂前広場のソファにラブちゃんが座って数人で話しているのが見えた。
しかも霧島も一緒だ。
霧島は俺の後輩で、俺がいるからと同じ居酒屋でバイトをするようになった。
その関係でラブちゃんとも親しくしている。
しかし随分楽しそうに笑ってるな。
俺がどうやってラブちゃんに話しかければいいかわからず困ってるというのに、霧島の能天気な顔にイラッとくる。
けど今なら俺があの輪の中に入っていっても不自然じゃないはずだ。
よし。今日、いや、今からラブちゃんを飲みに誘うぞ!!!!
◇
はじめに居酒屋に行って、それからもう一軒飲み直してから、今、ラブちゃんが俺の部屋に……。
コンビニで買い込んだ缶ビールを開けている。
床に座ってあぐらを組んで、アルコールで頬を赤くして、ぐびぐびと喉を鳴らして。
ロングパンツなのは残念だけど、目がトロンとして酔った顔が最高に可愛い。
今日ラブちゃんをこの部屋に呼ぶという、きっと無理だろうと思っていた目標を達成してしまった。
けど……。
これじゃだめなんだ。
くそっ。
霧島め。
呑気にシャワーなんか浴びやがって。
俺はラブちゃんだけを飲みに誘ったつもりだったのに、今この部屋にいるのは計八名。
俺とラブちゃんをのぞけば、六人も余計な輩 が。
大学生の一人暮らしの部屋だ。
全部で二部屋を、居間 と寝室として使っているけど、それぞれは狭い。
男ばかり八人も入れば、キッチンと一続きの居間はギュウギュウ。
もうすでにローソファや床でイビキをかいてる奴も二人いる。
ポテチや柿の種、サキイカなんかを床にこぼして、空き缶も雑に転がってるし。
もう、ゴミはゴミ箱に入れろよ。
はぁぁ……。
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