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日置くんはスキだらけ2/日置くんは寝込みを襲う
「日置さんっ!なんすかコレっ!」
シャワーを浴びていた霧島が、脱衣所スペースから余計なものを持ってくる。
「はいはい、勝手にあさるな」
「オンナ?女スか?」
「勝手に想像してろ」
霧島が無断で持ってきたモノを奪って、尻ポケットにねじ込んだ。
……しまった。
ラブちゃんがいるのに、いつもみたいに『勝手に想像してろ』なんて、適当な答えを返してしまった。
勝手に想像されちゃ困る。
ぱっとラブちゃんを見ると、うさん臭いものでも見るかのような目を俺に向けていた。
「あ、ちが……」
「なにが〜?てか、霧島、何持って来たんだ?」
「それがっすね〜」
「霧島、余計な事言うなよ。なんか言ったら、このまま部屋からたたき出す」
「うわ〜、勘弁してくださいよ。野宿は嫌っす。伊良部さんスイマセン、知られたく無いモノみたいですっっ」
「……へぇぇぇええ〜?」
う……。ラブちゃんの不信感たっぷりの視線が痛い。
けど、ここでコレを見せるのはダメだ。
くそっ。霧島め。
よく懐いてくれる可愛い後輩だと思ってたけど、この空気の読めなさはどうにかならないものか。
……いや、それ以前に、ラブちゃんと俺の間に親密な空気を全く作れていないけど。
ああ、もう。
アホが二人、缶チューハイを同時にこぼした。
お酒を飲むラブちゃんを背後から抱きしめて、チュ……とか。そんな妄想をする隙もない。
◇
ラブちゃんが眠くなったと言うので、俺の寝室に案内した。
他の奴らはリビングで雑魚寝だ。
寝る場所を作るため、簡単にリビングを片付け、クッションを渡す。
そして、シャワーを浴びてから、ラブちゃんがいる寝室に向かった。
当然、皆がいるからイチャイチャなんか出来るはずないけど、ラブちゃんと同じ部屋で寝たってだけで上出来だ。
いや、最初はラブちゃんが俺の部屋に泊るなんて想像もしてなかったから、これは想像以上の成果かもしれない。
……やっぱり、余計な奴らがついてきたからプラスマイナスゼロかな。
とはいえ、俺のベッドで寝るラブちゃん……。
んっ、はぁー。想像だけでドキドキする。
尻チララブちゃんの写真パネルの下で、生ラブちゃんが寝ているとか。
はぁぁ……。
素敵だ。
夜中トイレに起きる奴もいるだろうから、トイレだけ電気をつけ、居間 の明かりは消す。
うす明かりが居間にも漏れてきてるから、誰かが踏みつぶされて大惨事になったりはしないだろう。
寝室の引戸を横に滑らせると、中は真っ暗だった。
う…これじゃ、ラブちゃんの寝顔が見れない。
豆電球だけはつけさせてもらおう。
そう思って、一端蛍光灯をつけた。
……え……。
何故か床にラブちゃんがゴロ寝している。
でも、ベッドに誰か……。
……やっぱり、お前か霧島っっっっっっっっ!!!
ああ、もうっっ!
俺のベッドでラブちゃんが待ってる。という、ほんのり淡いロマンすらもブチ壊しやがって。
あれ……?しかも、ラブちゃんのパネルが……。
あ、パソコンデスクの上に伏せて置いてある。
これは……ラブちゃんを先に部屋に案内したから……外してくれたのか。
とりあえず、豆電球だけにして、念のためパネルを確認した。
表がえして見ると、サインペンでデカデカと『ひおきのすけべ』と落書きしてあった。
う……これ、ラブちゃん??
いや、当然、ラブちゃんしか考えられないよな。
落書きされたのはショックだけど、こんな落書きしちゃうとか、字も酔ってちょっと乱れてるし、ラブちゃん…か、か、かわいい……。
写真はいくらでもプリントできるし、コレ、記念に取っとこう。
振り返って、仰向けで眠りこけるラブちゃんを見つめた。
あ、枕。
枕だけは俺のを使ってくれている。
はぁ……。
明日からこの枕で寝るのが楽しみだ。
酔っぱらいだから、ちょっとよだれ垂らしてくれたりとか……しないかな。
いや、よだれは無理でも横向いて、ほほをすりつけてくれないかな。
無防備に投げ出された、裸足もかわいい。
ロングパンツから足首がチラリと見えてるだけだけど……。
そっと足元にしゃがみこんで、足裏をつんつんとつついてみた。
ピクンと弾かれたように足が逃げる。
さらに指三本使って、しょしょっとくすぐってみた。
「んん……っ」
ビクビクッっと、また足が逃げる。
くすぐりから足裏を守るためだろうか。軽く膝を立てた。
でも、俺としてはその状態のほうが美味しい。
床と立てた膝がつくるこの三角の中に顔を入れたい。
けど、さすがにできない。
ズボン越しにちょっとふとももに触るだけなら。
……ちょん。
お……おおおお。
大丈夫だ。
まったく嫌がられない。
もう少し、しっかり。
ペタ……。
おおおお。
スリスリ……。
ふぉぉおおおおおっっ!
大丈夫だ。
なんて素敵な……。
この調子なら……。
くすぐらないように気をつけながら、かかとを持ってそっと片足を持ち上げてみた。
……大丈夫だっ!
酔っぱらいって素晴らしい!
ああ、余計なオマケはいっぱいついてきたけど、勇気を出して飲みに誘って良かった!
そして、俺はさっき尻ポケットにねじ込んだものを取り出した。
そう、コレは霧島が勝手に脱衣所から持ち出した……靴下だ。
スクール風の紺のハイソックスだが、厚手のストッキングと似たような素材感なので、すぐに女物だとわかる。
なんで、こんなものがあるのかと言えば、霧島の想像した通り、女の子の忘れ物……などでは決してない。
もちろんこれは、いつかラブちゃんに履いてもらえたら……と考えて、勇気を振り絞って購入した、ラブちゃん専用の靴下だ。
女性もののほうが、こういう足のラインがよくわかる薄手のものを見つけるのが簡単だった。
買ってすぐに、一度洗濯をしておこうと、自分の洗濯物と一緒に洗った。
俺の洗濯物に、ラブちゃんの洗濯物(予定)が混じっているというだけで、少しワクワクしていた。
そして、洗い上がりの洗濯物を取り出したら、ラブちゃん専用靴下が俺の靴下と少し絡んでしまっていたんだ。
その様子に、俺は……胸がキュン!とした。
俺のグレーの靴下に絡み付く、ラブちゃんの紺の靴下。
軽く引くと、シュルッとほどけて揺れた。
………。
それから、もう洗う必要なんか全くないこの靴下を、何度か自分の洗濯物と一緒に洗った。
入れるときもトキメくが、洗い上がりに俺の衣服にラブちゃんの靴下がからんでいるの見ると、ニタニタが……いや、微笑みが止まらない。
酔っぱらいの霧島なんかに、俺のささやかな楽しみ(靴下)を、奪われてなるものか。
……けど、今、この靴下の本来の目的を達成できそうな気がする。
……やって、しまおうか。
いや、でも、もし途中でラブちゃんが起きたら……?
一応葛藤しながらも、心中では、何が何でもやる!と決めてしまっていた。
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