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日置くんはスキだらけ14[閑話]日置くんは自覚する
スタッフルームでイチャイチャしたあと、ハッと気付くとなぜかラブちゃんがウチのベッドに座って可愛らしく俺を見上げていた。
夜道を二人で歩いた記憶はうっすらある。
けど、どういう経緯でお泊まりなんていうロマンティックすぎる展開になったのかわからない。
ベッドの上で、両手を広げて「おいで」なんてっっっ!
はぁ……ラブちゃん。かわいい。
ちょっとわざとらしくて、おふざけでやってますって感じがまたいいんだよな……。
ラブちゃんのための部屋着が間に合わなかったのが悔やまれる。
いや、こんな展開想像してなかったし、そもそもネットで選んでる時点で先走りすぎてると思ってたくらいだ。
前回、飲んで泊まった時には果たせなかった、ぎゅっと抱きしめて、一緒に寝る……という、ほんとうにやりたくてしょうがなかったことまで実現してしまった。
トントン拍子に上手くいきすぎて怖いくらいだ。
夜中、目を覚まして、隣にいるラブちゃんを眺め、幸せを噛みしめた。
起こさないよう気をつけて、ほっぺたにチュウもした。
本当は『起こさないように気をつけたんだけど、ラブちゃんが目を覚ましちゃって、ラブラブチュッチュ……』なんて展開を期待しなくもなかったが、ラブちゃんは起きなかった。
前に靴下を履かせた時も起きなかったから、一度寝付いたら簡単には起きないタイプなのかもしれない。
でもこれで、朝、寝ぼけ眼のラブちゃんの顔を見れたら最高だ。
二人でモーニングコーヒー。
そして、二人で登校……。
さらに、待ち合わせて一緒にバイトに行ったり………。
そんな甘い夢を見ていた。
なのに、朝起きると、ラブちゃんの姿はもうなかった。
愛しいラブちゃんとの、夢のような一夜。
俺の記憶も、夢のように曖昧だった。
ラブちゃんが部屋に泊ったってこと自体が夢だったのかもしれないと不安になったけど、バイトの時にラブちゃんに確認したら、講義があるから朝早くに帰ったということだった。
その日、初めてきちんとラブちゃんと一緒に帰った。
ちょっと前まで、どう声をかければ良いのかすらわからなかったのに、確実に距離が近づいているのが嬉しい。
これでもう、どこまでいったらストーカーなのかと、ネットで調べて悶々とする必要も無い。
ラブちゃんが仲のいい国分くんのことを心配していたり、こんな日常っぽい会話を二人で出来ることが本当に幸せだ。
「……明後日……何があるんだ?」
そんな事をラブちゃんが急に言い出した。
「え……?別に何もないけど?何?」
「えっ、何もないのか?本当に?」
「バイトも休みだし。何も?」
そこまで言って、ハッと気付いた。
これは……これは……。
スタッフルームで可愛くペロペロしてくれた、あの続きをしてくれるってことじゃないか???
だから、俺の予定を確認して……。
「ラブちゃんいつも水曜日はバイト入れてるよな?何かあるの?その、何かあるならラブちゃんのバイト終わりに……そ、その……迎えに……行くよ?」
そう言ってはみたものの、ラブちゃんは『何もないから』の一点張りでさっさと帰ってしまった。
う……これは……。
完全にしくじった。
『何かあるの?』なんて、受け身の姿勢はあまりにも女々し過ぎた。
もっと、ズバっと『迎えに行くから、俺の部屋においでよ』くらいのことは言うべきだった。
でも、ラブちゃんのことだから『え〜、部屋に連れ込んで、何するつもりだよ』とか言われそうだ。
……いや、言われても良い。
い、一応、酔っぱらいの口約束とはいえ、スタッフルーム以外の場所で続きをお願いしますって言ってるし、ラブちゃんもバスツアーでの『ご褒美』の件を忘れていないからこそ、俺にあんなサービスしてくれたんだろうし。
俺が期待しまくってるのは、充分すぎるくらい伝わってるはずだ。
明日……。約束を取り付けよう。
ああ、そう思っただけで、ドキドキする。
でもラブちゃんのための部屋着も明日の夕方届くし、バッチリだ。
はぁ……だけど……ラブちゃんに『ご褒美』を貰ってしまったら、俺はそのあとどうしたら良いんだろう。
ラブちゃんはあの約束があるから、俺にイロイロしてくれるけど、それが果たされたら……全く相手にされなくなりそうで、少し怖い。
ラブちゃんは、優しくて、天使みたいなのに、ちょっとエッチで……足も綺麗だし、イタズラな風に振る舞うのも可愛い。まるでマンガから飛び出してきたみたいに本当に魅力的だ。
目が離せないし、好きにならずにはいられない。
対して俺は、唯一の武器と言える外見は、好みじゃないと一刀両断されてしまっている。
そして写真撮っては、ハァハァいって……軽く気持ち悪がられて。
道端でキスされて、こけて。
酔っぱらって迷惑かけて、その上ペロペロされてハァハァ言って。
スマートに家にも誘えない。
どうにも好きになってもらえる要素が見当たらないじゃないか。
もし俺が女の子だったら、なんだかんだラブちゃんにエロいことさせて『責任とってよ』なんてことも言えるけど、三百六十度どこからどう見ても俺は男だ……。
男同士……だし……。
……ラブちゃんの……気持ちまで求めてしまうのは……。
贅沢……なのかな。
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