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日置くんはスキだらけ16[閑話]日置くんはイケメンぶりを発揮する

大崎さんには困ったもんだ。 わかりきったようなことまで色々質問してくるせいで、備品チェックが終業時間ギリギリになってしまったというのに、それでもおかまいなしに俺の横でずっとどうでもいい話をしている。 霧島がバイトに来る途中に、大崎さんとオレとデートするだなんて、わけのわからないことを言っていたのも、彼女がこんな調子だからだろう。 まあ、オレはラブちゃんにさえ誤解されなければ、誰に何を言われようと気にしないけどな。 「えー、絶対ですって。日置さんにつき合ってとか言われて、嫌って言う人なんかいないですって」 「そうかな……」 彼女の言う事は全く中身が無い。 嫌がらずにつき合ってくれたとして、そこに心がなければ虚しいだけだ。 もちろん、心まで手に入れられるのが一番だけど、それが無理ならば、恋人未満で身体だけの関係のほうが、まだ傷は浅い気がする。 ……まあ、まだ『身体だけの関係』なんて段階ですらないけど。 「日置さんに好きって言われて、嫌がる人なんて絶対いませんから」 その言葉にハッとした。 そうだ……ラブちゃんも、俺に好きと言われるのを嫌がってはいない。 ただ……異様に俺の気持ちの扱いが軽いだけだ。 「嫌がらなかったとしても、好きになってくれるとは限らないだろ?」 嫌われてはいない。むしろ好意的だ。 ただ……とにかく軽いんだよ……俺の扱いが。 好きだって言っても、いつもそのままするっと流されてしまう。 「そんな、ちゃんと好きって伝えて、つき合ってって言えば絶対OKです!」 その言葉にまた、ハッとした。 ラブちゃんに好きだと言ってはいるけど、つき合って欲しいと言ったことはない。 『好き』と『つき合って』というこのコンボをぶつければ、さすがのラブちゃんも、もう少し本気で考えてくれるんじゃないだろうか。 「……じゃ、つき合って……って言ってみようかな」 「ハイっ!」 何も知らない大崎さんも俺の恋を応援してくれている。 そうだ、これからラブちゃんと一緒に帰って、改めて俺の気持ちを伝えよう。 ……サラッと振られても、約束のイチャイチャはしてくれそうだし。 イチャイチャしたら、流されやすいラブちゃんは振った事すらサラッと忘れて、だんだん恋人気分になってきたりするかもしれないし……。 俺は決意を胸に、チェックリストを持って店内に戻った。 ……そしてスタッフルームに戻るとなんだか空気がおかしかった。 大崎さんが霧島にキレてる? 俺が大崎さんをデートに誘ったって……たしか今日バイトに来る時にそんなふざけたこと霧島が言ってたな。 「ごめん大崎さん。コイツなにか勘違いしたらしくって。俺が大崎さんをデートに誘ったとかそんな変なこと言ったんだろ?」 「え……勘違いって……でも、これ……」 大崎さんが取り出したのは、見覚えのある白い封筒。 え……。 これ…………。 俺はさりげなく大崎さんからその手紙を取り上げて、多少不遜にすら見えるデカイ態度で俺のミスだと謝罪した。 経験上、こういう場合はあまり下手に出ちゃいけない。 大崎さんみたいなタイプは、キミの顔を立てるために俺があやまってあげているんだよという態度丸出しでいったほうが、自分の体面を保とうと大人の対応をしてくれる。 「大崎さんが可愛いから、俺がデートに誘ったっていうのを皆が鵜呑みにしてしまうのも当然かもな」 適当な褒め言葉と、偉そうな態度。 とりあえずそれをいくつか繰り出して、なんとかその場を納めた。 大崎さんだって本当の意味で納得したワケじゃないだろうけど、周りに当たり散らすようなことはないだろう。 はぁ……霧島は余計なことばっかするな。 まあ、ラブちゃんにだけは勘違いされないようにしないと。 ……って、あれ?ラブちゃん。 一緒に帰りたかったのに、ラブちゃんがいない。 え……ラブちゃん、ゴタゴタしはじめてそそくさと帰ってしまっただって?? そんな……俺の…………告白。 きちんと『つき合ってくれ』と申し込み、サラッとっ振られても友達以上恋人未満から始めてもらおうと心を決めたのに。 ラブちゃーーん!

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