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日置くんはスキだらけ19[終話1]日置くんは独占されたい

俺は運良く歩道で電話をしているラブちゃんを見つけ、大崎さんに関するゴタゴタについて説明をした。 もしかしたら、ラブちゃんが大崎さんを好きかもしれない疑惑がうっすら浮上したけど、それはあっさり否定。 安心した……。 もしああいった、良く言ってマイペース、悪くいえば自分中心の考え方をする自由なタイプが好みなんだったら、どうやったって俺に目が向くわけはない。 しかも……ラブちゃんは、俺が大崎さんをデートに誘ったって聞いて、ちょっと嫌だったらしい。 これはヤキモチをやいてくれていると解釈していいんだろうか。 そしてラブちゃんは『他の子とデート禁止』だとか『オレ以外好きになるの、禁止』だとか、可愛過ぎる独占欲を俺に向け始めた。 そんなこと言われなくても、他の子とデートなんかしないし、好きにもならない。 俺はラブちゃん以外見えてない。 けど、そんな風に言われたら、俺だってラブちゃんを独占したくなる。 「じゃ、日置、気持ち押さえなくていいから、オレだけ好きでいろよ」 そう言ってラブちゃんが俺にキスをした。 ちゅ、ちゅ……くすぐるようなキスが俺の唇に降ってくる。 「ラブちゃん……いいの?俺、本気になっても」 そう聞く俺へのラブちゃんの答えは……。 「なんだよ。今までオレのこと、本気でもないのに、好きだって言ってからかってたのか?」 イタズラな微笑みはキュートだけど、やっぱりなんだか軽い。 いくら気持ちをぶつけても軽く流されるから、イマイチ本気で踏み込めない。 「本気……だった……けど、本気で好きになっちゃいけないって……どっか思ってた。本当に、良いの?本気になるよ?」 「いいよ。日置の気持ち。全部受け止めてやるから」 俺の本気を本当にわかってくれてる? 「うれしいけど……全部ってことは、だから……俺のこと好きになって欲しいって気持ちも……受け止めてくれるの?」 俺はちゃんと俺のことを好きになって、正式に恋人としてつき合って欲しいって思ってるんだよ、ラブちゃん。 「ああ。オレも日置のことだけ好きになってやる。だからもっと惚れさせてよ」 ラブちゃんがニッと笑って、俺の頬にキスをした。 「そんな……」 キスは優しかったけど、ラブちゃんの言葉にガコンと頭を殴られた気分だ。 「え……どした……」 俺は思わずその場から逃げ出してしまっていた。 公園の入口で、ラブちゃんを振り返ると、驚いた顔で俺を見ていた。 『さっぱり、何がなんだか』って表情だ。 首をちょっとかしげただけで、俺をドキドキさせてしまうラブちゃんには、わかるはずない。 俺がどれだけ……。 どれだけ……。 「惚れさせるとか……それができないから、悩んでるんだろ!」 「……はっ?」 ちょっとでも俺のことを好きになって欲しくて、どうすればいいか考えても思いつかず、とりあえず行動しても全部空回り。 これでも惚れさせようと頑張ったんだ。 なのに『惚れさせてみろ』って言われるってことは、やっぱり、まったく成果が上がってないってことだろう。 無自覚なラブちゃんの、最大級のダメ出しだ。 ああ、情けない。 俺はみっともなくラブちゃんの前を逃げ出し、トボトボと家に戻った。 ◇ ベッドの上に正座をして、壁に貼ったラブちゃんの写真を見上げる。 いろいろ考えようとするけど、頭を占めるのは可愛く『もっと惚れさせてよ』と言ってくるラブちゃんの顔ばかり。 「だから、どうやったら好きになってくれるんだよ」 俺が今までラブちゃんを喜ばせたことと言えば…………。 …………。 『ん……サツマ、もうオレ、イクっ……。イキたい』 バスツアーで、ラブちゃんのをチュッチュさせてもらったとき。 あれくらいしか無い気がする。 今思い返せば本当に大胆な事をした。 『の……みたい。ラブちゃんの』 って……ああ……俺、すごく思い切ったことを言ったもんだ。 もう会えないかもって思ってたからな。 今だったら、絶対言えない。 ……いや、でもラブちゃんにお願いされたら……恥ずかしい事も頑張って言ってしまう……かな。 『本当?うれしい。……ああ本当、すごい嬉しい』 『必死にオレのをくわえてるサツマの顔、すごく可愛いくって大好き』 この時だけだ。ラブちゃんにこんなに誉めてもらえたのは。 ということは……。 いや……いや……いや……。 そりゃ、させてもらえるのだったら、何度だってしたい。 けど、日常に戻ってしまった今、いつ、どういう状況で言えばいいんだ『ラブちゃんの咥えさせてください』って。 それに、それじゃ、単なる性処理の道具だ。 ……でも、道具→愛用→愛着→愛情……という道もあるのかもしれない。 ああ、告白も中途半端だったな。 今までただ好きだって言うばっかりだったけど、初めて好きになって欲しいって伝えられた。 けど、その答えが『惚れさせてみろ』だし。 つき合って欲しいとは言えなかった。 結局どうすれば……やっぱり性処理の道具からのステップアップを目指すしか無いのか。 ああ……堂々巡りだ。 俺は同じようなことをグルグル考えたあげく『ラブちゃんのためのハイソックス』を握って寝た。

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