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御礼SS:朝食はプレーンオムレツで

俺の部屋のベッドで、うつ伏せに寝転び頬杖をついて足をユラユラと遊ばせながらラブちゃんが微笑む。 ラブちゃんのために選んだ部屋着もいい具合に着古されて、すっかり身体に馴染んでる。 夏休みに入って、ラブちゃんは毎日のように泊りに来て、バイト終わりも当然のようにウチへと帰ってくる。 すっかり半同棲状態と言ってもいいかもしれない。 頬杖をつくラブちゃんの、反った背中からお尻へのラインが魅惑的だ。 「オムレツ食いたい。お前の作るオムレツ大好き」 俺を見上げながら、ちょっと首をかしげる。 朝ゴハンは何がいいかと聞いて、よどみなく答えをくれる。こういうとこも大好きだ。 「すぐに作るよ。待ってて」 キッチンに行って、すぐに支度を始める。 卵を弱火にかけて、その間にトマトを取り出し切る。 付け合わせはこれくらいしかないけど、男の一人暮らしだし、そこまでのクオリティは期待していないだろう。 焼き上がりを確認しようとしたら、後ろに気配を感じた。 「まだ?早く食べたい」 ラブちゃんがオレの背中にギュッと抱きついてきた。 「もう出来るから」 そう言いながらニヤニヤが止まらない。 「ダメ。遅い。お腹すいた!先に口に……ちょうだい?」 俺を見上げて、唇をちょっと突き出した。 ……。 これは…。 これはっっっ!!! ああああ。 ……夢……だな。 オムレツが焼けるジュワジュワという音が全くしていない。 ……。 という事は。この甘々なラブちゃんは……俺の妄想…。 いや、夢だ。 本物じゃないのは残念だけど、夢に出てきてくれただけで幸せだ。 そして……夢でロマンティックラブ満喫!! 現実でのラブラブ・ラブタイムの予行演習だ。 「んー、ちゅ」 「日置、美味しい。もう一回チュウして?」 「ラブちゃん……。ちゅ、ちゅ」 ラブちゃんの手が俺の腰をなでる。 ああ、ニヤニヤが止まらない。 「もう、日置の全部を食べちゃいたいけど…それはデザート……かな?」 「あ……」 甘いラブちゃんの言葉が嬉しすぎて、気の利いた返事も出来ない。 「じゃ、朝食の準備済ませるね」 「おう」 ローソファに座ってニコニコと俺を見つめるラブちゃん。 それだけで心が沸き立つ。 「あ……コーヒーにミルク、いれる?」 「うん、入れて。ミルク……たっぷり入れて?飲みたい」 ……あ……まだまだラブラブモードを楽しみたいのに、空気がネットリとしてきてしまった。 ラブちゃんが誘うようにローソファに寝転び、ショートパンツから伸びる魅惑的な生脚を見せつけるようにゆっくりと組んだ。 「ミルク、上手にコーヒーに入れられる?日置、たまにおっちょこちょいだからな。うっかりオレの脚にこぼしたりとか……するなよ?」 俺はキッチンにいたはずなのに、なぜかラブちゃんの足元に座っていた。 「コーヒーって言ったのに、牛乳だけ?」 「あ……?あれ?本当だ。すぐにコーヒー持ってくるから」 ラブちゃんの手にあるグラスを取ろうとすると、ラブちゃんはそのグラスを静かに傾けた。 つっ……と細く美しい線を描いて、牛乳が溢れる。 そしてラブちゃんのふくらはぎに音もなく白い線が伝った。 「あーあ。こぼれちゃった。日置、これ、どうにかしてよ」 甘えるような困り顔を俺に向けてくる。 どうにか?……どう……する? ラブちゃんの手にあるグラスからは、少量づつとはいえ尽きることなく牛乳が流れ続けている。 俺はそっとラブちゃんのかかとを手に乗せ、そのくるぶしからスネへと、ゆっくり舐めあげていった。 「ん……ちゃんと、キレイにしてよ?」 「うん。ちゃんと……」 ぺろりと舐めると、たまにビクビクと脚を震わせ、俺の頭を撫でてくれる。 ああ、もう膝下まで舐め終わってしまった。 「日置、牛乳、空っぽになっちゃたよ。代わりのミルク……ちょうだい?」 「え………う…はぁ…ミルク?」 「うん、白くて美味しい、日置のミルク、飲みたい」 え…そ、それって……。 あ、ああ、そっか。 忘れかけてたけど、これは夢だ。 だから俺の願望が増幅されて……。 つまり何の遠慮も要らないってことだ。 「ラブちゃん…そ、それじゃ……その……」 カチャカチャとベルトを外し、中から取り出そうとしたとたん。 きゅむ……。 ラブちゃんに股間を踏まれてしまった。 「え………?」 「何、オマエ。美味い朝メシ食わせろっつったのに、その前にそんなマズイもん飲ませるつもりなのか?」 「あ、えっ?え?」 「『え?』じゃねぇよ。マジ使えない」 そう言ってさっと立ち上がると、スマホを見始めてしまった。 これは夢だから俺の願望通りなるはず……なのに。 「日置~。オレ、国分くんとカラオケ行くから朝食要らねー。一人で食べて」 「え……そんな!」 ああ、マズイ。これは、マイナスイメージに引きずられて『ダメな方向に想像通り』になってしまうパターン! 「いや、ラブちゃん今日は俺と一日いちゃいちゃ……」 「は?何それ。楽しいの?」 「え………楽しい…と思う」 「お前は楽しいかもしれないけどさ。オレ、国分くんにカラオケで戦隊ヒーローメドレー歌ってもらうから。またな!」 手を上げて、サッと部屋から出て行こうとしてしまう。 「待って、せめてオムレツだけでも一緒に食べよう?」 「は?何それ。国分くんと食べるコンビニおにぎりより美味しいワケ?」 「え……でも、さっき俺のオムレツ美味しいって……」 「オマエ、コンビニ各社の企業努力舐めんなよ?」 「そんな……」 気付くとラブちゃんは部屋着からTシャツとハーフパンツに着替え、止める間もなく俺の部屋から出て行ってしまった。 急いで窓を開け、アパート前の通りを見下ろすと、ラブちゃんが俺を振り向いた。 「日置、夏休みは長いけど、秋になれば会えるから。じゃあな!」 「えっっ!? そんな!このままずっと会えないの!?」 「さっき足舐めたし、それだけでひと夏乗り切れるだろ?」 「そ……そんな……ラブちゃん!待って、ラブちゃーーん!!!」 ………。 …………。 はぁ……。 ……目の端に涙がたまってる。 俺はノロノロとベッドから起き上がった。 夢だとわかってる夢なのに……何でこんな事に。 せっかくエッチな雰囲気にまでなったのに。 好きなだけチュッチュ、ぬぽぬぽ、アハンアハンできたはずなのに。 くっ……俺の、バカ。 ……あっっ! そうか、何で気付かなかったのか。 ぱっと部屋の窓を開けた。 そして、すぅ……っと大きく一息吸うと、心の中で大声で叫んだ。 『ラブちゃ〜〜ん!!!!俺も一緒にカラオケに連れて行ってもらえませんか〜〜〜〜!!!!』 《終》

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