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日置くんはご褒美チュウ2
日置がバイト終わりに迎え来たのはいいんだけど、なんかすげぇ緊張感でソワソワしてる。
たしか、大学の小教室で別れた時は、ニヘニヘだったよな……。
って、ま、そっか。
オレが部屋に行くって意味を考えれば、緊張もするか。
『本当に、良いの?本気になるよ?』
『いいよ。日置の気持ち。全部受け止めてやるから』
夜の公園ではきっちり互いの気持ちも確認したし……。
その後何故か逃げられたけど、大学ではイチャついたし、これは実質つき合ってるって解釈していいんだよな?
バイト終わりにお迎えとか……つき合いたてカップル以外の何ものでもないし。
……とは思うんだけど、なーんかコイツのこの余裕の無さが……オレまで不安になってくるんだけど。
あ、今日、泊まってくつもりだけど、それ言ってないや。
でもいつも友だち泊めてるみたいだし、問題ないか。
……女もしょっちゅう泊めてるみたいだしな……。
いや、それは考えるな。
それに……もうこれからは女厳禁!だぞ。
◇
家に着いて結構経つのに、日置はまだすげぇ緊張してて、こっちまで緊張してきて困る。
ここに来る途中も『ビールある?』って聞いただけで、ガックリ肩落としてた。
発泡酒があればそれでよかったんだけど、『そっか、ラブちゃんはビールが一番好きだって知ってたのに。準備不足だ……』なんて、小さいことに落ち込む日置がちょっと可愛かった。
わざわざ遠回りして、スーパー寄ってビール買って。
こういうのも楽しい。
「どれが一番好き?次は絶対に買っとくから」
とか、いちいち必死すぎる日置が面白かった。
なんか、どんどん日置にハマってく気がする。
デキるイケメン様だって思ってた頃には全然わからなかった、必死過ぎて変なトコとか、一生懸命なんだけど、どっかトボけたトコが可愛く思える。
ビールを開けて『ツマミだけじゃ足りなかったら何か作るけど?』って聞くから、麻婆丼が食いたいって言ったら本気で困ってた。
食べたいのは本当だけど、出てくるとは思ってないって。
日置の緊張感が伝染ってしまうのは困りもんだけど、オレはご機嫌。
オタオタな日置が面白すぎる。
ビール飲んでちょっとくつろいでたら、日置がソワソワし始めた。
「ラブちゃん、お風呂……入る!?」
ええ……?マジか?
少しのイチャイチャもなくいきなり風呂って……。
ちょっと声が裏返ってるし……。
まあ、こっちもそのつもりだからいいけど、コイツいつもこんな感じなのか。
女の子相手にこんな調子だったら『この男マジでヤるだけしか興味ないんだ……』って思われるぞ。
日置を見ると目は泳ぎ、指をせわしなくモジモジと絡ませてる。
……ま、今日は本当にその事で頭いっぱいっぽいから『クズなヤるだけ男』な態度も許してやるよ。
さっと風呂を済ますと、脱衣所にある洗濯機の上に置かれた、淡く可愛らしいグリーンとブルーのパイル地の服が目に飛び込んできた。
え……。
これ、風呂に入ってる時に『着替えの部屋着置いとくから』って言ってたやつ?
そう……だよな。
これしかない。
パーカーは一応入るけど、なんか可愛すぎる色だし、妙に細身過ぎる……って、やっぱりどう考えてもコレ、女物じゃないか!
く……っ。
バカにしやがって。
お泊りする女みんなに貸し出してる的な?
感じ悪いわ!
なんだよこのショートパンツ。
男でこんなミニ丈の穿いてるの陸上選手くらいだろ。
一応穿いてみたけど、女物は変なトコがダブついたりして、股の位置も合わないし気持ち悪い。
しかも裾からパンツが少しはみ出る。
ノーパンでこれだけ穿けってことか?
……てか、こんな格好。
まあ、わかってて穿いたんだ。
全然ダメだよ!
「え!? ラブちゃん、なんで!」
「そりゃ、こっちのセリフだよ」
一応譲歩してパーカーは着たけど、下は元々着てたハーフパンツだ。
あんな変な格好できるか。
「靴下は?」
「はぁ?靴下とか、あった?」
「あの紺の」
「え……いや、気づかなかったけど、気づいても風呂上がりにハイソックスは履かないだろ。それに、部屋着に紺のハイソックスって組み合わせもおかしいし」
「あ……そっか、確かに、もっとふんわりした感じの膝上ニーハイの方があのショートパンツには合うね」
「は?ショートパンツもニーハイもはかないぞ?って、お前、どっかの女の子を想定して話してないか?」
「まさか!ラブちゃん以外でイメージするわけないだろ」
「いや、普通オレでイメージしてショートパンツとニーハイって発想にはならないだろ」
オレの言葉に日置がウッと怯んだ。
「それは、俺もちょっと想像力が足りなかったなって反省してる。紺のソックスでもふんわりニーハイでもなくって、絶対につま先の開いたタイプのパイルのロングソックスがいいよね。次までには必ず買っとくから、ごめんね」
……何を反省して、何を謝ってるのかよくわからない。
ま、どうでもいい。
もう余計なことなんか、考えられないようにしてやるよ。
「日置はすでにシャワー浴びてるんだ?」
首筋に手を回して顔を寄せ、シャンプーの香り立つ髪を嗅いだ。
日置が分かり易すぎるくらいビクンと肩を揺らす。
期待しまくってたんだから、シャワーくらい浴びてて当然だよな。
「…………」
また緊張し始めてしまったらしく、無言でオレのコトをチラチラ見てる。
ああもう。
似合わない乙女で可愛すぎる反応がむず痒くって笑っちゃいそう。
髪にチュッっと軽くキスをした。
すると日置がギュッと抱きついてきて……。
お……おわっっ。
デカいから、重たいっ!
え……、いや、重いっ!重いっっ!
そのままかなり強引にローソファに引き倒されてしまった。
うはーー!ビックリしたっ。
投げ技でもかけられるのかと思った。
あ、日置の目がヤバイ。
この目、あのバスツアーの時と同じ……。
「ラブちゃん、ラブちゃん……」
強引に押し倒しておきながら、ギュッと抱きついてブツブツ名前を呼ぶだけ。
衝動的で無計画。日置らしくない。
けど、そこが可愛い……とか、思っちゃうのはしょうがないよな?
頭をなでると日置がそろそろと顔を寄せてきて……キス……。
しないのかよ。
でも、すごくキスしたいって顔に書いてる。
「日置、キスしたいの?」
「あ、う……いや」
「なんだ、したくないのか」
「えっっ、いやっ、いやっ……!」
「どっちだよ?して欲しいの?それとも、いらない?」
「し、したいっ。いや、その、キスしてください」
必死過ぎる日置に吹き出しそうになったけど、どうにかニンマリ笑う程度でこらえた。
頭に手をやって、そっと引き寄せ、唇を合わせる。
日置は緊張ですごくぎこちない。
舌で優しく唇をなぞって、日置の緊張をとこうとするけど……大丈夫か?なんか息が荒い。
オレは唇を離すと、グイッと腕を引いて体を上下入れ替え日置にまたがった。
「緊張しすぎ」
「ごめん」
「いや謝らなくていいけど、なんでそんな緊張してんの」
「あ、それは……。その、ラブちゃんに言わなきゃいけない事があって……」
緊張し過ぎて目が潤みまくってる。
そこまで言わなきゃいけないことって……なんだ。
またこっちまで緊張してくるじゃないか。
けど日置の頬をなでて、できるだけ余裕ぶってみせる。
「なんだ?いいよ、言ってみろよ」
「あ、あのっ、バスツアーの時に、ご褒美っ!それと、バイトの夕涼みイベの時に、また次って約束したから!」
「……うん?それが?」
「別でっ!出来れば今日はバスツアーの時に言ってた『ご褒美』で、バイトのときの『続き』はまた別の日でお願いします!」
え……?なんでわざわざ分けなきゃいけないんだ?
……まぁ、別にいいけど。
「日置、ちゃんとバスツアーの約束憶えてたんだ?」
「それはっ!!! もちろん!」
「じゃ、なんで今まで言わなかったんだよ」
とっとと言ってくれれば、余計な気を揉まずに済んだのに。
駆け引きのつもりだったのか?
「それは……どう言えばいいかわからなくて」
困り顔でじっと見つめてくる。
う……。
オレは日置の情けない顔見ると、条件反射でドキドキするようになってしまったらしい。
「どう言えばいいかって……そのまま言えばいいだけだろ?」
「そのままって……だってツアーの次の日、顔合わせてすぐにスタッフルームで『ラブちゃん、約束のフェラお願いします』とは言えないだろう。大崎さんも居たし」
「え……なんで、そのタイミングなんだよ」
「結局そこを逃したから、その後俺の怪我のせいでしばらく会えなくなっちゃっただろ?そしたら、もう言い出せなくなって。俺、ラブちゃんを見るたびに心の中で『フェラしてください。フェラしてください』って、ずっと思ってた……」
日置……。
馬鹿なのか?
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