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日置くんはカマって欲しい?6
今度は床でゴロゴロ。
以前に撮影した時よりも欲望に忠実になってるのかリクエストが多い。
ただ足を伸ばして座ってるだけのポーズをいろんな角度から撮られたけど、何が楽しいのかよくわからない。
「日置、本当に女装好きだよなぁ。オレじゃなくて女の子撮った方がいいんじゃね?」
「………え?女装好き………?」
「なんだ、その意味わかんね〜って顔は」
「このロケーションでラブちゃんに着て欲しい服を選んだだけだから、別に女装をさせようと思ったわけじゃないよ」
「……お前のセンスよくわかんねぇ。だったら男のキャラでも良くないか?」
「ログハウスに半ズボン……?ごめん、ちょっと該当キャラが思い浮かばない」
「なんで半ズボン限定なんだよ」
「人前ならまだしも俺と二人っきりなのに、股下二十センチ以上あるボトムスを着用するなんて……」
……なんだその悲しげな顔は。
「じゃ半ズボンでもスカートでも良かったワケだ?」
別に女装にこだわりがあるわけじゃないのか。
「……それは……やっぱりスカートが……いいです」
「はぁっ!? やっぱオレは女代わりか!」
「ち、違う!スカートだとラブちゃんがお股を気にして可愛らしく恥じらう姿が見れるし、撮影中に他の人が見れないところまでチラ見えするというご褒美が………」
「お股って言うな。それにチラ見えってなんだよ」
今日はスカートの中は自前の下着。フリフリなパンツなんか穿いてない。
まさかハミチンしてるんじゃ……。
不安になって思わずスカートの中を覗き込んだ。
……大丈夫だ。
「あ、こら、何撮ってんだ!」
「自分でスカートをめくって覗くラブちゃん……愛らしい………」
ああ、もう。うっとりとするなよ。
「ラブちゃん、もしかして脚を剃ってケアしてる?」
「はっ?まさか。元から薄かったし、夏場はずっとハーフパンツ履いてるだろ?裾ですれてさらに薄くなるんだよ。んで、今年は少し前にコスプレのために剃ったからなかなか伸びねーの」
むしろ、こんなミニスカートを穿かせるなら、前もって教えていてくれればこんな薄ら伸びかけじゃなく、もうちょっとキレイにしたのに……って何やる気出してんだオレ。
……いや、やっぱすね毛のはっきり写ったミニスカ写真は結構ショックかも。
「日置、大丈夫?けっこうしっかりすね毛写っちゃってる?一回剃った方がいい?」
「………っっっ!!大丈夫すごく綺麗だよ……。だけど…あとで……そ、そ、剃って……もらえる?」
「え……綺麗なら、剃らなくていいんじゃないか?」
日置が片手で口元を押さえて、眉をしかめてる。それはどういう表情なんだ。
「これ撮り終わってから剃ったりとか……ダメ?」
「はぁ?撮り終わってから剃るってなんでだよ。意味わかんね」
「それは……その……。ラブちゃんがお風呂で足のお手入れをしてるところを……見たいから。泡まみれの足にカミソリ当ててるところとか……。はぁぁ……見たい……。剃る前と後の足のさわり比べとか……。はぁぁ………………!」
………オレ、なんでこんな理解不能なヤツとつき合ってんだろ。
「はっ……ごめん、俺……。ちょっと先走りすぎた」
オレのあきれ果てた表情を見て、日置が正気に返った。
自分の浮かれっぷりを恥じるように顔をしかめた後、真面目な表情でオレに向き直る。
そして口を開いた日置の言葉は誠実な響きを持っていた。
「まだ付き合いたてなのに、普段他人には見せられないような姿を見せて欲しいだなんて、図々し過ぎたね。でも必ず俺、ラブちゃんが足の除毛を見せてもいいって思えるような存在になるから」
いくら気持ち込められても、全く胸に響かないんだけど……。
「そっか、それはうれしいな。がんばれ」
雑に返事をした。
日置の目指すところはわからないけど、とりあえず前向きな気持ちだけは応援しておく。
本当は別に大して生えないすね毛を剃ってるとこなんか誰に見られたって気にならない。
けど日置に見られるのはイヤだ。
理解不能な喜ばれかたしそうだし。
けど、そんな事を言えば話がややこしくなるだけだよな。
ポーズ指示を出す日置の距離が近くなって、ちょいちょいさわってくるようになった。
口で言えばわかるし……。
心の中で毒づく。
でも、日置のうっとりとした表情がちょっとセクシーに見えて、オレも日置の視線が気持ちよくなってきてしまった。
オレだけを見つめて、オレに夢中な日置。
……可愛い。
そっと膝をあげれば日置の視線がつられて動き、足の指をキュッと丸めただけで嬉しそうに目を細める。
ゆっくりと自分の太ももを手のひらでなぞると、日置がゆっくりと甘い息を吐いた。
はちみつのようにトロリとした空気が室内を満たす。
「顔を窓に向けてみて」
その指示とは全く関係なく、オレの膝を日置の手がなでた。
写真を撮るために少し離れて、またすぐ手のふれる距離まで戻ってくる。
オレの太ももにふれたがる日置は楽しそうで、その指がオレの肌をくすぐり、だんだん敏感にさせていってることなんかまるっきり気付いてないみたいだ。
……コイツのこういうとこ、ズルいよな。
オレをその気にさせて、オレから誘わせようとしてるに違いない。
でも、その手には乗らない。
……って思ったんだけど。
布団の山に寝てシーツに顔を半分埋めたままカメラを持つ日置を見上げる。
かなり近い距離だ。
無邪気に笑ってみせると、日置は数枚撮ってカメラから手を離し、むき出しになってるオレの内モモに手を置いた。
手のひらからじんわりと日置の熱が染み込んでくる。
また日置がカメラを構えた。
「……ラブちゃん……かわいい」
その声から、そして日置の表情から、オレが今すげえヤラしい顔になっちゃってるんだろう……ってのがわかった。
乱れたスカートが急に恥ずかしいもののように思えてくる。
シーツに転がったまま、膝を曲げた足の間にスカートの裾をつかんだ手をはさみこんだ。
好き好んで女装コスプレをしているわけじゃない。
なのに『オレはこんな格好までして日置の気を引きたがってるのか』と身悶えしそうだ。
「日置、もーおしまい」
「え……あともう少しだけ。お願い」
もうヤダって思ってるのに、日置に情けない顔で頼まれると、どうして断りきれなくなっちゃうんだろ。
また言われるまま膝を立てて座った。
スカートを押さえてる途中なのに、そんな変なシーンまで日置が撮ってしまう。
「こらっ、まだ撮るなよ」
「ゴメン。でもすごく可愛いから」
「うー。やっぱりもうやだ。おしまいっ!」
ふて腐れてゴロンと転がれば、またその姿を撮られる。
「もー、日置のバカ。撮るな」
「ごめん、でもけだるい感じがすごくいいから……」
「……どんな感じに写ってんの?」
日置の見せてくれた写真は、やっぱりオレの想像とは全く違った。
板張りに乱れ髪で転がる顔のアップだ。手前には足がぼやけて大きく映り込み、チークで赤く色づいた頬やうつろな瞳が酔ったようで、けだるげな色気を放っていた。
ええ?オレこんな顔してないって。
チークが効いてるからか?
アルプスの少女どころかコスプレ写真にすら見えないし……。
「日置はいつもエロいコトしか考えてないから、こんなエロい写真になっちゃうんだ」
「それは……ごめんなさい」
文句をいいながらギュッと日置の腰を抱いたオレに、戸惑いつつもはにかむ。
「この写真どうするの?」
「えっっ……いや、別にイヤらしい目的で撮ってるわけじゃないよ?」
「は……?そんなこと言ってない。けど……イヤらしい目的じゃなくても、どうせイヤらしい目で見るんだろ」
「ネットにアップするかもしれないけど、何か目的があって撮影してるわけじゃない。せっかくラブちゃんと二人きりのキャンプだから、撮れるタイミングがあればと思って……本当にそれだけだから」
これだけ準備して本当にそれだけなのか。日置……なんか……すげぇな。
さらにじーっと目を覗き込むと、日置が目をそらした。
「こんな元キャラのイメージと違う写真なら、コスプレしてる意味ってあるの?」
「それは……色々」
日置の手がそろそろとオレの太ももに伸びてきた。
その手を上から押さえる。
「お前いつも撮影中にこんなセクハラしてんの?」
「え……セクハラって、そんなにさわってた?」
「無意識でセクハラとかタチ悪い。有罪確定だな」
「有罪!? ……いや、いつもはさわったりしないから。他の人の撮影では手が届くほど近くに寄って撮ることなんかないし」
「ほんとかぁ~?」
「ラブちゃん以外にふれるなんて考えられない」
オレの頭に日置が頬をすりすりしてくるけど、カツラだからもどかしい。
「日置、もう撮影終わりでいい?」
「ん……」
全然聞いてない。ぎゅうぎゅう抱きついて、すりすり頬ずりが止まらない。
時々頬にかかる日置の息が熱くオレをくすぐる。
「落とすと危ないからカメラ置けよ」
「ん……」
まだ頬ずり……。
「日置、オレにこんな格好させるとかホントはロリコン?」
「ん……んっっ??いや、ちがうっ」
日置の手からカメラを奪って座卓に置き、ついでにカツラも投げ捨てる。
そして、振り向き様に勢いをつけて布団の山に日置を押し倒した。
日置の腹にまたがって覆いかぶさり、焦った顔を覗き込む。
「セクハラ癖があってロリコンって、日置最低だ」
「本当に違うから」
「そう言いながら、もう手がスカートに入り込んできてる」
「だって……ラブちゃんの太ももの弾力が……」
スカートを少しまくり上げて、太ももをなでる日置の手をさらけだした。
「日置のスケベ」
「ラブちゃんの太ももが俺を誘うんだ」
「やらしい顔」
「……だって、ラブちゃんにのしかかられたら……」
日置の片手がオレの首を抱く。
「モデル頑張ったから、オレにもご褒美くれる?」
「ご褒美……?」
「今度は日置のかわいいトコ見せてよ」
「え……今度は俺がミニスカ?」
「なんでだよ。ぜってー可愛くねーだろ」
……けど、こんな幼児スタイルじゃなく、ナースコスとかならいいかも。
まあ、用意するのがめんどくさいか……。
パーカーを羽織っただけの日置の胸に顔を寄せる。
「ひゃっ……」
ペロっと胸を舐めると日置が驚きの声を上げた。
舌を這わせたままチロリと顔を見ると……んー?なんでそんな真っ赤になってるんだ。
胸から脇腹をなで上げただけで、ひゅうっと息を呑んで身を固くしている。
「なに?どうしてこんなに緊張してんだ?」
「え……『どうして』って、だって……だって……。ホントに?」
「ホントにって……何が?」
「いや……この流れからいってその……」
「うん?」
「その……」
まただ。日置がはっきりしない。
「なんだよ、イヤなのかよ?」
「い、嫌じゃなけど、まだ夕方だし」
「はぁ?なんだそれ。やっぱ嫌なんじゃねぇか」
写真撮りながら盛 りまくってたクセに。
コイツのこういうところがよくわからない。
スッと身体を起こすと、焦った日置がオレのベストを掴んでグイッと引き寄せた。
「いっ、嫌じゃないです。ラブちゃん……チュ、チュウしていい?」
困った。一生懸命な日置が可愛くてキモイ。
結果、ちょっと萎えた。
「んー。日置がグズグズしてるから気が殺 がれた。オレがキスしたくなるよう、その気にさせてよ」
唇まで十五センチ。
軽くふれるキスだけで、オレがあっさりその気になっちまうってことくらい、さすがに日置もわかってるだろう。
ちょっと顔を傾けて日置の唇を誘う。
ゴクリと唾を飲み込んで、目を見開いた日置の間抜けな顔……。
はぁ……。こういう表情、ホント大好きかも。
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