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日置くんはカマって欲しい?14/日置くんは虫刺されにすら萌える
ちゅ……ちゅ……。
「ふっ……ふぁ……」
「……やっぱ痛い?」
いつもよりさらに優しいキスは、俺のことを気遣ってくれたからか。
「いや、痛くないよ」
にこりと笑って余裕ぶってみたけど……。
ん……はぁ……。
痛みを癒してくれようとしてるんだろうか。
今度はソフトクリームでも舐め取るように優しく唇をなぞってくる。
ラブちゃんに言った通りもう痛くはない。
けど、腫れた唇は敏感で……優しくなぞられると……。
うっ……ふぅうっ……。
ちょっとふれただけで、ぽぅっと熱くなってゾクゾクと鳥肌が立つ。
キスしてるだけなのに、頭が飛びそうなほど気持ちがいい。
はふっっ……鼻息が荒くなりそうになるのを抑えるのが大変だ。
ラブちゃんが下唇をヤワヤワと噛んでチュッと吸った。
「……ふふっ。やっぱ腫れてるな。すげぇエロい唇になってる」
自分じゃ見た目はわからない。
けど、確かにちょっとふれられただけで過敏に反応してしまうエロい唇になってしまっている。
「ふ…ふぅ……ぅ」
「やっぱり痛い?」
息が荒くならないよう必死で我慢していたら、またラブちゃんに気遣われてしまった。
ああ……キスをやめないで……。
「痛いんじゃなくて、気持ちよすぎて。大丈夫だから……もっと」
ふふっと笑ったラブちゃんが俺の髪をかき混ぜるようになでた。
その手も気持ちがいい。
ちゅ……ちゅ……と焦らすようにふれるだけのキスを繰り返される。
「ラブちゃん……もっと……。んっ……んぁ……はぁっ…はぁ……」
ねだればすぐに舌を差し込まれ、口内を愛撫するように舌先でくすぐられる。
腫れて充血した唇は快感にビクビクと震え、唾液が溢れた。
「ん…… んぁ……んっんん」
ラブちゃんがなでるようなキスをしながら、俺の太ももに甘えるように足を乗せてきた。
あ……やばい。
興奮しすぎないよう我慢してるのにこんなことされたら……。
「日置……さっきしたばっかりなのにコッチも元気になってる」
しっかりと元気になってしまった俺のモノにラブちゃんの足が当たっている。
「う……いや……その………ソッチは気付かなかったことにして」
「ふはっ。わかった」
あ…また……太ももでクイッと……。あうっ我慢だ。
は……はぁ……口の中が敏感になりすぎてて……気持ちよくて幸せだけど、こんなところで我を忘れてサカってしまってはいけない。
いや、こんなにハァハァ言いながらキスしてる時点でもうアウト……。
でも誰かに見られたところで暗くて顔なんかわからないだろうし、普通のバカップルだと思われるだけだろう。
はっ!……そうか。
俺は今、ラブちゃんと普通のバカップルなことをしているのか。
……ちょっと感動してしまった。
「日置、腕が痛い」
「ごめん。暴走しすぎないようブレーキかけてたせいで腕に力が……」
「ああ、ここじゃ誰か来るかもしれないし暴走されるのは困る」
……『ここじゃ』?
ということは……。
「森の中に移動して、人の来なさそうなところで続きをする?」
「っっはぁっっっ!!!??? お前一人で森ん中でチンコ晒して蚊にでも刺されてろ」
「えっ……いや、違う。『ここじゃ』って言ったからそういう意味かなと思っただけで、俺が森でアレコレ致したいわけではないですっっ!」
確かにソコには虫除けスプレーをしていないので、耳なし芳一状態で虫に狙われてしまいそうだ。
でも、ラブちゃんがお尻を刺されて、俺が優しくポリポリ掻いてあげるなんて楽しいかもしれない。
あっ……ああ……ラブちゃんが怒って歩いて行ってしまった。
慌てて後を追いかけると、ラブちゃんは遊歩道の入り口でピタっと止まった。
俺を待ってくれてる?
横に並んだ俺の腕をラブちゃんがスッと掴んだ。
「イチャイチャの続きはコテージですればいいだろ。けど、さすがに疲れてるしエッチなことはしないぞ」
少し早口なのは照れ隠しだろうか。
ラブちゃんが首をすくめて俺の背中を軽く押した。
俺の『森の中に移動して』という言葉にヘソを曲げたのは、外でなんて嫌だということ加えて、夜の森が怖かったからというのもあるのかもしれない。
そして今こうやって俺の背中をグイグイと押すのもきっと同じ理由だ。
でも、行きよりも甘えるようにしがみついてくれていると感じるのは気のせいじゃないだろう。
普段飄々 としているラブちゃんのこんな反応は貴重すぎだ。
腕をぎゅっと掴む手の強さと温もりが愛しくて、愛しくて、愛しくて。
このまま森を抜けることなく、ずっと二人で歩いていられたらいいのに。
けれど俺を押すラブちゃんは早足で、驚くほどあっさりと森の出口にたどり着いてしまった。
ホッと安堵の息をつくラブちゃんと、落胆のため息をつく俺。
ラブちゃんが素直に甘えてくれるのは、もうここまでなのか。
寂しく思っていたけれど、ラブちゃんはにへっと笑うと今度は俺の腕を引いてコテージへと歩き始めた。
森を抜けても腕を掴むラブちゃんの温もりは無くならない。
小さく胸が震え、鼻の奥がツンとなった。
「歩くの遅せぇよ。早くコテージに戻ろ」
さらにグイグイとラブちゃんが腕を引く。
「そんなにキスの続きをしたいの?」
浮かれた俺の言葉に、ラブちゃんがふてくされたようにちょっと唇を尖らせた。
「……そうだよ。まだキスし足らねー」
「えっ……」
「さっきも言ったけど、イチャイチャだけだからな?エッチなことはしないぞ?」
驚いて立ち止まりかけた俺の腕をラブちゃんがグイッと引いた。
神様……。
この、うっすらツンデレを混ぜ込みつつ、信じられないくらい素直すぎるラブちゃんは幻ですか?
またいつもの夢オチなんじゃ……。
夢だとしたらどのあたりから?
「まさか、キャンプに出発するところから、全部夢 !?」
だったら、ラブちゃんがあんなにもサービス満点で色々 してくれた理由もわかる。
「なんでだよ。夢だとしたら長すぎだろ」
バシンと背中をたたかれた。
そうだ、夢だとしたらあのカレーの激痛はありえない。
「あ、いや、夢みたいに幸せだな……ってこと」
微妙なごまかしだったけど、ラブちゃんはそれに嬉しそうに笑った。
「日置とキャンプに来れてよかった。夢でも幻でもないんだからな?オレとのことも含めてサラっと無かったことにしたら許さねぇぞ?」
「そんな……無かったことになんてするわけないよ!」
冗談交じりにチクッと嫌味を言われたけど、つまりはラブちゃんも俺との関係を大切にしたいと思ってくれてるってことだろう?
ああ、顔がデレデレと緩むのを止められない。
コテージに入った途端、ラブちゃんが俺にぎゅっと抱きついてきた。
ふぁああ、理性がふっとびそうだ。
最後までしない。
エッチはしない。
イチャイチャだけだ。
……でも好きなだけイチャイチャチュッチュし放題……?
ふと、キッチンカウンターに並んだビールの空き缶が目に入った。
あんなに森を怖がったり、俺に素直に甘えてきたり。
酔うほどではないけど、ラブちゃんもアルコールで理性が緩んでるのかもしれない。
だったら俺も、今からは理性と恥を捨てて甘えまくっていいよな。
「ラブちゃん好き。大好き」
「うん」
ラブちゃんを真似た優しいキスをする。
「ラブちゃん、可愛い」
「気のせいだ」
キスをしたままやんわり頬をつねられてしまった。
その手をそっと包む。
「そんなことない。可愛い。大好き」
「可愛く無かったら好きじゃない?」
「好きだから可愛いって感じるんだ。ラブちゃんが可愛くないなんてありえない」
「日置はアホだな」
「……ごめん。でもラブちゃんは可愛い」
またチュチュ‥…とキスをするとラブちゃんにぎゅっと抱きしめられた。
「ほんとアホだ。……でもずっとアホのままでいろ」
「ん……んぁ……うん。ずっと……ずっと好きでいる」
敏感な口内をつるりと舐め上げられ、あっさりと主導権を奪われる。
……はああ、やっぱりラブちゃんのキスは気持ちがいい。
「ん……ふぁ……うううん…………」
このままラブちゃんに翻弄されて、理性飛ばして……。
きっとそれでいい。
俺にキスするラブちゃんの顔も、夢でも見ているみたいにトロリととろけているんだから。
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