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21/ラブちゃんは草食系5
まさか、一回ヤるだけでここまで心の準備がいるなんて……。
受け入れる側だからやっぱ結構身体に負担があったりするのかもなぁ。
けど、こうやって誘ってくるってことは、抵抗はあってもオレとすること自体はイヤではない……っていうか、したいと思ってくれてるってことだよな?
日置はまだ一人で考え事をしている。
なぁ、二日もかけてエッチする覚悟を決めたんだったら、自分の世界に入り込まずにオレを見ろよ。
どうやったらオレがその気になるのかって考えてる、この時間が無駄すぎるぞ。
サッと日置の両手を掴んだ。
そして本日二度目のぶりっ子を見せる。今度はしょんぼり顔だ。
「日置ぃ、オレとイチャイチャするんじゃなかったのか?」
「………!!!!」
おー。目ん玉ひんむいて。
ぶりっ子は演技だってわかってるくせに、そこまで驚かなくてもいいだろ。
「ボディーソープのいい香りがする」
クンクンと嗅いだらパッと日置の身体が逃げた。
「あ、これはその……友達の女の子に教えてもらったやつで……」
ああ……出たよムードクラッシャー日置。
なんで他の女の話を始めるんだ。
けど、今日はお前から誘ったんだからな?
……逃してやらない。
「オレ、汗臭い?オレもシャワー浴びた方がいい?」
日置の首を抱いて、ぐっと体をふれさせた。
「いやっ、いやっ入らないで。臭くなってない。むしろこのくらいがいい」
「でも、オレにもっと汗かくこと……させたいんだろ?」
「っっ……」
「……あれ返事がないな?しなくていいの?」
「いや、し、し……して……ください」
『してください』はないだろう。
ちょっと笑いそうになってしまった。
けど、恥ずかしそうなのに必死な日置が可愛くて、やる気はグングン膨らんでいく。
「あ、どこまでいいの?」
「え……?」
無粋だけど、確認しといた方がいいよな。
直前で最後までは無理とか言われたらキツイ。
「いや、どこまでのつもりなのかなって……」
「そ……そ……そ……それは」
日置がみるみる真っ赤になっていく。
「それは……その……ね……」
「ね?」
「ね、根元まで……」
………根元?
あ、両手で顔を隠した。
……?
ああっ、そう言う意味か!
長い首まで真っ赤になってきた。
「……りょ、了解」
笑うな、オレ。
笑ったらまた日置に逃げられるかもしれない。
とにかく、がっつりコースをご希望ってことだよな。
日置の目を覗くと、期待と不安が宿っていた。
ああ、もう。がっつりコース希望のクセにどうしてそんな目をするんだよ。
肩を抱き、反対の手で頬を優しくなでながらチュッと軽くキスをした。
照れてトロけるかと思ったのに、日置の目はさらに切なげに潤んでいく。
日置、これからイチャイチャするんだろ?
不安げではあるけれど、ぎゅっと抱きしめれば同じように抱き返してくれ、その腕の強さが切実にオレを求めてるようで……。
日置の不安な気持ちを取り除きたくて、楽しげな表情を作った。
柔らかな唇にチュッと吸い付き、そのプルリとした感触を楽しむ。
ちゅ……ちゅ……。
キスで日置の心をほぐすつもりだったのに、オレの心が甘くとろけてしまった。
ちょっと唇を離して日置の目を見つめると、勝手に顔が笑っていく。
「はぁ……俺、ラブちゃんの笑顔が本当に大好きだ」
「へへっ。嬉しい」
大きなぬいぐるみに抱きつく子供のように、日置をぎゅっと抱きしめ頬ずりする。
不安の気配はちょっと薄まった気がするけど、もっともっと甘い気分になってもらわないと。
「日置、オレのこと好き?」
改めて聞いてみた。
「うん。好きだよ」
好きって言葉で日置の胸を甘い気持ちをいっぱいにして、不安を押し流させるんだ。
オレも好きだよ。
日置の返事にかぶせてそう言うつもりだったのに。
……あれー?
なぜか言葉が喉に詰まってしまった。
初めて言うわけでもないのに、すごく恥ずかしい。
感情が大きな塊になって出口を塞いでしまったみたいだ。
「……そっか。嬉しい」
こんな返事でも日置の気分はかなり上昇したようだ。
よし。次こそは『オレのこと好き?』『大好き』『オレも』というありきたりすぎる定型句を言うぞ。
ゆっくりと手をはわせ、日置の身体を優しく愛撫して気分を高めていく。
日置の温もりが沁みて、胸に溜まった甘く温かなモノがふわり広がった。
「日置、オレのこ……んむっ」
言い終わる前にキスで口を塞がれてしまう。
「ラブちゃん大好き。はぁ……その嬉しそうな顔、最高に可愛い……」
つぶやいて、またキス。
手はオレの膝をゆっくりとなでる。
「ラブちゃん……好き……好き………」
うわごとのように繰り返し、ふれるたびに甘く痺れるような軽いキスを重ねてくる。
以前のように最初から性技のようなねっとりとしたキスじゃない。だんだん気分を盛り上げてくれる。
そんな日置の変化がちょっと嬉しい。
「ラブちゃん……なんでこんなに可愛いんだ」
蜜のように甘い声に、もう不安の気配はない。
それにしても……。
オレは『好き』って言葉を返してないのに、なんでこんなに嬉しそうなんだろう?
いや、今までもずっとそうだった気がする。
『好き』って言われたオレがニヘニヘ浮かれてるのを見るのが好きなのか?
池の鯉に餌やって、バシャバシャ跳ねながら必死に食ってるとこを眺めて喜ぶみたいな感覚なのかもしれない。
『好き』って言葉がオレを喜ばせるための餌だと思うと……。
むぅ……。ちょっと微妙だな。でも釣った魚に餌をやるだけマシ……かな。
日置の手が太ももに移動していく。
柔らかくなぞる指先にゾクゾクする。
オレの身体も少しづつ日置に慣らされていたようだ。
「ラブちゃん……好きだ」
「もっと言って」
うん、喜ばせるための餌でもいいや。実際嬉しいし。
ゆるりと笑って、日置の首から頭にかけて慈しむように手を滑らせる。
そして反対の手をTシャツの裾から差し込み、しっとりとさわり心地のいい素肌を味わった。
「好きだ。好き。好きだよ」
日置の目が熱に浮かされたように潤んでいく。
自分の言葉に煽られたのか、日置の手がもっともっとと欲しがりになる。
体をクッと押せば、意図を察して日置が立ち上がった。
そしてそのまま二人してベッドへ。
意図を察してベッドへ移動なんて、まあまあ普通のことなのに、なぜか二人の関係がすごく進歩したように感じてちょっと感動してしまった。
ベッドに座る日置のTシャツを雑にぐいっと脱がしたら、身を竦め困ったような表情を見せた。
……あ。
こういうとこがいけないのか?
日置が男だからって気にせず結構雑に扱ってたけど、そういう雑さが積もり積もって抵抗感を生んでたりするのかな?
そういえば日置は撮影の時とか異様なまでに丁寧にオレの下着を下ろしてたしな。
慌てて自分でスウェットパンツを脱ごうとしている日置の手をそっと押さえた。
よし。丁寧に、優しく。
ゆっくりとスウェットと下着を同時に下ろしていく。
日置の元気なモノが下着のゴムに弾かれ跳ねた。
うん、今日も日置は勃ちがいいな。
そろそろと下ろしながら日置の顔を見た。
あれ?
両手で顔を隠して固まってる。耳は真っ赤だ。
足から抜き取る時には、落ち着かない様子で足の指をもぞもぞさせていた。
そして、すぐに枕を抱きしめ真っ赤な顔を伏せてしまう。
ええっと、これはどう見ても『さあ入れてくだい』って意味でオレにケツ向けてるわけじゃないよな。
「何恥ずかしがってんの?」
オレも手早く服を脱いで、日置の体に重なった。
「いや、恥ずかしがってなんか……」
湯だったような顔で潤んだ目をオレに向ける。
自分が脱がされる立場になって初めて、あのソロソロと下着をおろされ、その様子をじっくり見られる恥ずかしさがわかったんだろう。
腰から尻、太ももにかけてゆっくりくすぐるように指を滑らせれば、瞼をピクピクと震わせた。
うん、感度良好。
枕元にしっかりローションを用意しているあたり、ヤル気も充分だ。
「ふひゅっっっ」
シーツと体の間に手を差し込み、日置のデカいモノをなでると、驚いたように腰を跳ねさせた。
ローションを絡めた指を尻に這わせると、それにもまた驚いている。
覚悟決めてたクセに、まだビクビクしてる。
自分で『してください』って言ったんだし、できればもうちょっとウエルカムな感じを出してくれないかな。
けど、そんなこと気にしてちゃ先に進めない。
何せ『根元まで』だしな?
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