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22/ラブちゃんは草食系6
なぜか腰をもぞもぞさせ、オレの手から逃げようとする日置の耳元に口を寄せる。
「自分から腰振って、積極的だな」
「あ、ちが……」
そして日置が大好きなわざとらしいしょんぼり顔をして見せた。
「オレにさわられるの……イヤ?」
「いっっっ、嫌じゃない。嬉しい……です」
「そっか……だったらオレも嬉しい」
「……!!!」
日置のヤル気はまたギュウンと上昇だ。
キスをしながら、前後同時に優しく指を動かす。
生卵の黄身でも扱うみたいに、もどかしいほど丁寧に。
恥ずかしそうにぎゅっと目を瞑った日置の息は浅い。
オレの指が日置の張りつめたモノとナカの快感を生むシコリをなであげるたび、チュ……チュ……とキスが返ってくる。
溺れた人が空気を欲するような、どこか必死ささえ感じるキスだ。
快感に戸惑ってオレにすがる日置が可愛いすぎて、やる気がグンと膨らんでいく。
困った。日置の震える長いまつげを見ていると優しくしなきゃと思うのに、濡れた目尻にズクンと劣情を煽られて荒々しく暴きたくなってしまう。
日置を仰向けにしてのしかかり、自分のモノと日置のモノをすり合わせた。
二人が擦り合わされるクチュリクチュリという音と、日置の後ろをほぐすためのたっぷりのローションのチュプチュプという小さな音が混ざり、狭い寝室に濃密な空気が満ちる。
「ふ……ふは……」
唇の隙間から漏れる日置の息が熱い。
そしてその手がねっとりとオレの太ももの後ろをなで上げてくる。
「日置、気持ちいい?」
問いかけにコクコクと頷く。けどオレはキュッと優しく日置の舌を噛んで不満を示した。
「あ……き、気持ちいいです」
そうそう。ちゃんと言葉を返さないとな。
「どこが気持ちいい?」
「えっ……ど、どこって。か………下半身」
「ざっくりしすぎだろ」
「ええ……ち……恥部?」
「……恥部?」
「え、ええっと……陰部」
「え……」
「じゃあ……秘所?」
「………」
……はっ。なんで国語の授業みたいになってるんだ。
くそっ。またムードクラッシャー日置にやられるところだった。
オレが少し不機嫌になったのを察したのか、日置の目がきょときょとと慌ただしく動き出した。
あ、やばい。ここまできて日置に及び腰になられちゃ困る。
「そ、そっかぁ。じゃ、日置の後ろがクチュクチュ言ってるのは秘所秘所(ひしょひしょ)話なんだな」
オレのくだらなさすぎるダジャレに日置がフリーズした。
あ、ドン引きされた?
オレの手を挟みこんだまま足をぎゅっと閉じて、再び引き寄せた枕に顔を埋めてしまった。
「ちょ……手を挟まれたら動きづらいよ」
「その、で……できるだけ、その……音、立てないように」
枕に顔を突っ込んだままもごもご言う。
似合わぬ恥じらい方が可愛い……。
「んー。音がするくらいローション使った方が日置が楽じゃない?」
「え……俺のため?」
枕の端から覗いた日置の目がキラキラと輝いている。
おお?なんで感激しているんだ?
「んー。二人のため……かな?」
「ふ、二人のため……!!」
本当に小さなことで気分が上がり下がりする。まあそこが面白いとこなんだけど。
日置の腕が伸びてオレの首に絡んだ。
う……ギュギュとしがみついてくるのがすげぇ可愛い。
こんなデカい男に甘えられてるのに、愛しくて、可愛くて、大切に守ってやらなきゃいけない存在のように思えてくるのが不思議だ。
はぁ……。早く一つになりたい。
手早くほぐして入り口に自分のものを添えた。
「……いい?」
日置が腕に力を込めながらコクコクと頷いた。
先端にふれる日置の温もりだけで頭が煮えそうだった。
グッと押し付けると、狭い穴がオレを迎え入れてくれる。
しがみつかれて顔は見えないけど、トクントクンと響く心音から日置の感動が伝わって来た。
多分、うっすら涙目になってるはずだ……なんて考えながら、オレも久しぶりの温もりに胸が高鳴って仕方がない。
ググッと深く押し込むと、腰に日置の片足が絡んだ。
「ふ……ぅ……ふぅ」
日置のこらえるような息が耳をかする。
「きつい?」
「う……ちょっと」
日置の頭をそっと抱き込む。
「じゃ、ゆっくりな?」
「いや、いいから。その……見たい」
「えっ、何を?」
「あう……。その、ラブちゃんが……」
首に頬を擦り付け、もごもご言ってる。
「うん、オレが何?」
「その、そ……その、ラブちゃんが、気持ちよくなってるとこ………み、見たい」
恥ずかしそうにしながらも、誘うようにに足をまとわりつかせてきた。
請われるままに深く分け入る。けど……。
「うぐ……」
「無理するなって。オレは中に入ってるだけでもかなり気持ちいいから」
「うう……その、久しぶりだからこんなだけど、すぐ、すぐ大丈夫になるんで……」
う……。
すがって懇願されるなんて。
猛烈にキュンとしてしまった。
日置の敏感な腰をそろりとなでる。
「見たいなんて言いながら、こんな風にしがみついてちゃ顔が見えないだろ?」
体を引いてチュっとキス。
……ああ、やばい。
数センチの距離でウルウルと見上げてくる目に……やられる。
日置のクセにウルキュンで可愛いとか詐欺だ。
「ん……チュ。んぁふ……チュ…」
見つめていたら、日置が刺激をねだるようにチュチュ……とキスをしてきた。
こんな風に求められて興奮しないわけがない。
負担をかけたくないから少しづつ……と思っているのに、日置の潤んだ目と擦り付けられる足に欲望を煽られ、抑えがきかなくなっていく。
さらに日置の方からグッと腰を押し込まれ、オレの自制心は完全に吹き飛んだ。
「っ……はぁ。日置……なんで今日、こんな可愛いんだよ」
「へ……?可愛い?……っうぁあんっく!」
手っ取り早く良い反応を引き出したくて、中の浅く感じやすい部分を早い動きで攻める。
「ぁ……ぅふぅう……可愛いって……嘘でも褒めてくれたのは嬉しい。けどおかしいな……ラブちゃんにカッコいいって思ってもらうはずだったのに……んっく」
「なんだそれ。カッコいいなんて言われ慣れてるだろ」
「ぁ……んぁあっ!ラブちゃんに直接言われたこと……ない」
腕の中で小さく喘ぐ日置に『俺カッコいいでしょアピール』されてもなぁ。
ピンクに染まった頬を耐えるように歪め、腰をなでれば気持ち良さそうに体をよじって……。どう考えたって『可愛い』って感想以外ないだろ。
「自分のカッコ良さをオレに見せつけてどうしたいわけ」
『カッコいい』なんてしょっちゅう言われてるだろうし、その言葉をオレに求められること自体、他の奴らと一緒にされているみたいで少し嫌だ。
「……その……ちょっとでもラ、ラブちゃんに好きになって欲しいなって……」
「日置のカッコいいとこを見て好きだと思ったことなんかほとんどないよ。それより……」
腰骨をなでると、日置が体をよじって快感に震えた。
「ほら、こんな風に反応返してくれる時の方がよっぽど……」
「え……」
目を丸くした日置が、羞恥に歪む顔を隠すようにぎゅっとしがみついてくる。
「あんましがみつかれると動けないよ」
「あ、ごめん」
すぐに腕の力を緩め、腰に絡めていた足を落ち着きなくオレの身体に擦り付けてくる。
その素直さも可愛い。
オレだって日置がカッコいいってことくらい理解はしてる。
けど、戸惑って間抜け面 になったり、快感にみっともなく歪んだり、すがるように潤んだり、オレだけに晒すカッコ良くない日置の表情を見るたび可愛く思えて、愛おしいって感情を覚えるんだ。
前にちゃんと教えたと思うんだけどな。
オレに好かれたいなら……普段の『変なヤツ』のままでいいんだぞ?日置。
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