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24/ラブちゃんは草食系8

『オレのドコが好き?』という質問に、太ももをさすりさすり、日置が返した答えは……。 「ふ、ふぁ……。そ、その……愛らしい膝裏が……」 「……ヒザ……うら?」 「女性のようにしなやかなのに、男性らしいメリハリがあって、なだらかにくぼんでは膨らむ……はぁ……奇跡だ……」 遠い目でうっとりしている。 そういえばキャンプの時に足コキしたら『いつかおヒザの裏で』なんて意味不明なこと言ってたっけ。 膝裏でさするとか、全然気持ち良くなさそうなんだけど。 「……はっ、ちが!その、膝裏だけが好きなんじゃなくて、全部……」 「あー。足全部な?」 「そうじゃなくて、ラブちゃんの全部が好きだ」 「はっ。嘘つけ。『全部』ってのは取り立てて好きなところを見つけられない時に言う言葉だろ」 「違う!可愛い笑顔も、いたずらな表情も、それからちょっとツンデレなとこも……」 「ツンデレじゃねぇし」 「……わ、わざとツンデレぶってくれるとことか。それに……俺の『好き』って気持ちを受け入れてくれた。そういう柔軟性って言うか、懐の深さとか。今、こうやってふれ合ってるこの体温すら愛おしくて……好きだ」 平気な顔を取り繕ってるけど、日置の『好き』にすごくドキドキしてしまっていた。 好きって言われるたびに好きになる。 オレも単純だな。 なのにオレはその『好き』の一言すら上手く返せない。 「ま……体目当てじゃない部分も少しはあるって事か?」 浮かれているのを隠すように、わざとらしく意地悪な表情を作った。 「え……体目当てとか、そんな!!!そりゃ確かに最初は膝裏しか見えてなかったけど……」 「……はぁっ?」 「いや、違う、最初ってその、本当に最初!階段で目の前をスカートのラブちゃんが登ってて、膝裏とふくらはぎが印象的で……。だから本当に最初五分程度、そのくらい最初!」 「あー、わかったわかった」 「本当に体目当てじゃないから。確かに足で首を絞められたりするたび、どんどん好きになって行くけど、でもそれも好きなラブちゃんにされるから嬉しいのであって、そして嬉しいって思うからまた好きになるんだ!」 「つまり、日置は首を絞められるのが好きなのか?」 「まさか!むしろ苦手だ。そうじゃなくて……!」 「冗談だよ。わかってる」 疑わしいところはあるけど、本気で体だけが目当てだって思ってるわけじゃない。 「体もオレの一部として好きでいてくれてるって事だろ?」 「そ、そう!そうなんだ。もしラブちゃんと同じ足をした人がいたとしても、その人を好きになるかどうかわからないから……」 「……は?……………『わからない』?」 「す、好きになりません!ラブちゃんだから恋したんだ。それは絶対」 必死に言い募られて、思わずニヘっとだらしない笑みを浮かべてしまった。 日置にとっちゃ迷惑な話だろうどけど、こうやって揚げ足とって、からかって、日置が必死になるたび気持ちがオレに向いているのが伝わってきて嬉しくなる。 こういう確認の仕方はダメだってわかってるけど、テンパってる日置が面白くて、可愛くて、好きなんだからしょうがない。 「その、ラブちゃんは?俺のどこが……いや、どこか……いや、なんでもないです」 「え?日置そういうの気にするんだ?」 モテまくり、好かれて当然な日置だから、相手が自分のどこを好きなのかなんて気にもとめないのかと思ってた。 でも、日置のどこがいいかとか……。変なとこばっか好きだから正直に答えたら絶対がっかりするよな。 「えーっと、そう、一緒だよ。日置がオレに対していいなって思ってくれてるとこと一緒」 THEごまかし回答だ。 「え、ラブちゃんも俺の下半身が好きってこと?」 「はっ?お前、最低だな。やっぱ体目当てじゃねぇか」 「いや!違う、違うから!」 慌てる日置の手を掴んでシーツに押し付ける。 「違うって言いながらさっきから足をさわりすぎ。身体だけでいいなら、お前のこともそういう扱いしちゃうぞ?」 「え……俺、性処理道具に降格!?」 「は?性処理……?なんて顔してんだよ。ふはっっ冗談だって」 ぎゅーっと抱きしめて、なぐさめるように頬にキスを一つ落とした。 「俺、本当にラブちゃんの身体目当てとかじゃ無いから」 「うん、わかってる、わかってる」 けど、オレに押さえつけられたまま、困ったように顔を歪めてる日置はそれなりにそそる。 「なぁ日置、やっぱ今だけ身体目当てになっていい?」 「え?……あ……」 ダラダラ話をしていたけど、まだオレたちの身体は繋がったままだ。 日置もオレが少し力を取り戻したのを感じたんだろう。 「その、どうぞ……。今に限らずいつでも……身体目当てになってくれて。あ、いや、やっぱり『好き』って……嘘でもいいから俺のこと好きだって言って………くれませんか?」 「え、なんだそれ。まあいいけど」 「本当に!?」 「うん。日置、好きだぞ。嘘だけど」 「え……あ、ああああ。嘘で良いって言ったからか……俺のバカ!」 がっくりと落ち込む日置が面白い。 そしてストレートに『好き』って言葉を求められたことに少し驚いた。 ……やっぱ、ちゃんと好きって言えばよかったかな。 さっきも言えなかったし、これまでだって『ダメなとこが大好きだ』とか『少しは好きだよ』とかそんな言い方ばかりで、純粋に『好き』って言ったことがほとんど無い。 日置がオレの『好き』で喜んでるくれるなら……今度こそちゃんと言いたい。 「日置、好……すぐ動いていい?」 「あ、うん」 あ、あれ? 今度こそ言うって決めたはずなのに。うう……。 とりあえず、ゆっくりと腰を動かし始めた。 すぐにジュンとした快感が生まれ、同時に愛しさがこみ上げる。 「日置、好き……に動いていい?」 「もちろん。ラブちゃんの好きにしてくれていいから」 好き……までは言えたんだけどな。 ああ、なんでだろう。しっかり気持ちは盛り上がってるのに、すげぇ恥ずかしいよ。 「日置、好き……にさわっていいぞ……足」 「え、えええっ!?」 あ、喜んでる。 『好き』って言えてないけど、喜んでるなら、ま、いいか。 はぁ……。 なんか、意識するとダメだな。 感情が胸につかえて言葉に出来ない。 でも無理して言おうとするからダメなだけで、意識してない時ならサラッと言えるだろ。 日置、ちゃんと言えなくてごめんな。 日置からは『好き、好き』言われすぎて、嬉しくはあるけどなんかちょっと中身が薄いっていうか嘘くさく感じてしまってるし。 いや、嘘くさいとは思ってるけど、嘘だって思ってるわけじゃないぞ。 こうやって繋がれば、日置の想いが肌から伝わってくる。 もっとふれあって、お互いを感じて、気持ちも溶け合って一つになれたら。 一度達した体が再び熱を取り戻すのにそう時間はかからない。 日置はオレのモモの後ろ側をなでな回して嬉しそうにニヘニヘしながら、快感に小さく声を漏らしてピクンピクンと体を跳ねさせている。 色っぽいんだか、間抜けなんだか。 ……こんなわけわかんないトコを好きって思うオレもかなり変だよなぁ。

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