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日置くんはイケている4/日置くんは秋の夜に哭く

晩秋、秋の終わりで冬の始まり。 物悲しい季節だ。 ラブちゃんと一緒にいてもどこか物悲しさがつきまとい、憂鬱が晴れるのは唯一、俺の部屋に二人きりでいる時だけだった。 けれどそれも少し前までの話だ。俺は喜びを見つけた。 バイト中、和風な制服の七分袖をクルクルと巻き上げて元気に働くラブちゃん。 肘から手首までのラインがしなやかで、手の甲の血管の浮き方も控えめで美しい。 指は長く、当然もじゃもじゃとした毛など生えているわけもない。 愛らしい。そして美しい。 国分くんも似た手をしているが、彼は頬がふくよかなのに手がスリムなので少々アンバランスに感じる。 そして何よりラブちゃんの肘の内側。 横に入ったラインは美しく、曲げればしなやかにくぼみ、ぐっと伸ばせば柔らかなくぼみと膨らみを同時に見せる。 なぜ俺は今までこんな魅惑的なパーツに気づかなかったんだろう。 いや、今だからこそ気づいたんだ。 寒さが増し、ラブちゃんがハーフパンツを穿かなくなってしまい、俺の心は悲しみで塗りつぶされた。 そんな今だからこそ、この肘の内側の魅力に気づけた。 ラブちゃんの生足が無粋なロングパンツに隠されてしまうという悲しみを乗り越え、新しい喜びを見つける。それこそが人間の強さというものなのだろう。 しかもだ。 足首と違い、手首へのキスはどこでだってササッと簡単にできる。 それこそ大学で人がいないのを確認して、チュ…なんてことも可能だ。 二人でソファに座ってじゃれている時でさえ、さりげなく足首を持ち上げくるぶしを口に含むなんてことは難しい。 けど、ちょっと手を取って手首にキスくらいなら至って自然だ。 そして手首から少し辿り、ちゅ…ちゅ…と唇を移動させれば、そう苦労せずにあの肘の内側までたどり着けてしまう。 これが膝裏なら、ラブちゃんがハーフパンツか裸の時に限られる。そしてラブちゃんの足を持ち上げるか、俺が跪くか。 『どさくさ紛れ』にチュッチュとできたとしても、『自然な流れ』で……とはならない。 本当は(ぬか)づいてラブちゃんのくるぶしにキスしてみたい。 片膝をついてラブちゃんの膝頭にキスでもいい。 けどどういう流れになったらそんなことができるのか……。 まあ、欲張るのは良くない。 肘の内側へキスができるだけで充分幸せなんだから。さらに肘の内側は膝裏の感触を思い起こさせてくれる。 それに、肘の内側へのキスでこんなに幸せになれるんだから『もしかしたら足フェチなんじゃないか』という疑惑は完全に払拭されたと言っていい。 ショートパンツで長袖の足出しラブちゃんと、ロングパンツでタンクトップの肩出しラブちゃんどっちがいい?と聞かれてしまえば躊躇なくショートパンツを選んでしまうけれど、それはラブちゃんの足が魅惑的すぎるからしょうがないだろう。 ラブちゃんの足と手の指どっちをしゃぶりたい?なんて聞かれれば……やっぱり足の指を選ぶだろうが、そもそも聞かれることはないだろうし。 ……はぁ……ラブちゃん…そんな質問してくれないかな。 秋になってからラブちゃんがロングパンツ常用になってしまったので、部屋の室温を高めに設定し、ラブちゃん用のルームウェア上下を常備しているのに、パーカーは着てくれもショートパンツは見て見ぬフリをされてしまう。 せめて素足でいてほしいと思って、うちに来た時は靴下を脱ぐようにお願いしたら、持参したルームシューズに履き替えるようになってしまった。 夏の間は素足でペタペタ歩いていたのにな……。 しかも、靴を脱いですぐビニール袋に靴下を入れて消臭スプレーをかける。足の匂いなんて全くしないのに。 なぜ急に潔癖症になってしまったのか不思議だ。 とはいえ、がっかりすることばかりじゃない。 とうとう先日念願だった俺の部屋でのツーショット写真を撮ることができた。 俺は元々スマホでパシャパシャやる方じゃない。 だから自然な流れてどうやって頼めばいいのかずっと悩んでいた。 ラブちゃんとのツーショット写真……。 はぁ……何度見ても幸せになれる。 けど十秒以上見続けると、俺が写っているのが邪魔だな……と思ってしまう。 そんな時は同時に撮ったラブちゃんだけの写真を見て癒される。 ルームウェアでリラックスモードのラブちゃん……。 可愛い。 はぁ。 こういうラブちゃんもいいけど、コスプレの時に見せるクールな顔、コスプレなしラブちゃんであの表情も撮りたい。 普段着でもいいし、何か服を用意してもいいかもしれない。 アイドルのようにノースリーブシャツの胸元をはだけて、短めのハーフパンツ。 椅子に座ってふくらはぎをアピールしつつクールにこちらを見つめる。 はぁ……いい。 最高だ。 アイドル風が嫌なら……サッカーやラグビーのユニフォームも短パンだ。ラブちゃんに似合うのはバレーか?いや、自転車のジャージも捨てがたい。 いや…ユニフォームはほぼコスプレだな。 結局のところ、女装&メイクなし、かつハーフパンツか短パンでモデル撮影ができればどんな格好でもいいんだ。 短パンがダメなら、上半身だけでも構わない。 シャワーを浴びながらクールな表情のラブちゃんとか、タオルかぶって牛乳飲みながらちょっと笑うラブちゃんとか、ベッドの上で挑戦的にこちらを睨むラブちゃんとか、写真集の定番ショットを全部取りたい。 いやむしろ写真集を作りたい。 でもこの間はちょっとルームウェアで撮っただけでも嫌がられたし、やっぱりモデルになってもらうには理由が必要かもしれない。 コンテスト……とか? 普段風景や小物ばかり撮ってる俺が人物でコンテスト参加なんか不自然だよな。 いや、ラブちゃんは俺が人物写真のコンテストに興味がないということ自体知らないか。 うん、いける。 これだ! けど、嘘だとバレたら叱られる……。 いや、本当に応募すればいいだけだ。 早速ネットで調べて……。 …あれ……通知に? なんだこれ……。 ……なんなんだこの写真!!! なんで…なんでラブちゃんがこんな格好で。 こんなポヤンと眠そうな表情で……赤い顔して……。 ………ああああ……嘘だ………。

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