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日置くんはイケている17
桜ちゃんの専門学校の学祭が終わった二日後、日置の家に遊びに行った。
なんだかんだで、日置の家で完全に二人きりになるのは十日ぶりだ。
まだ玄関で靴を脱いだばかりなのに、日置はすぐさま抱きついてきた。
「ラブちゃん……」
日置の声は切実で、オレにギュッと抱きつく身体が熱い。
すぐ抱きついて来るだけならそこまで珍しくはないけど、日置から強烈なヤりたいオーラがモワンモワンと立ち上ってる。
頰ずりは止まらないし、半勃ちのモノもクニクニ押し付けられる。
えーっと……。
これまでだって二〜三週間エッチなしなんて当たり前だったのに、なんでこんなにサカってるんだ?
まあ、ちょっと嬉しいけど?
「日置、どうした?」
「サクがいたから、ラブちゃんと二人きりになれなかったし…もう……はぁ。やっとだ」
今、日置の頭ん中はエロいことしかないようだ。
抱きしめる日置の手も官能を高めるようにゆっくりとオレの腰をなぞってくる。
「ラブちゃん……ひどいよ。ラブちゃん以外にさわらせるの禁止とか言うから、俺すごく我慢してた」
「………んんっっ?」
日置の言葉が微妙に引っかかる。
国分くんたちと飲んだ次の日、大学で会った日置に『オレ以外にさわらせるの禁止だぞ』って釘を刺した。
妙に力強く『わかったよ!』って頷いていたけど、今の日置の言葉は『オレ以外にさわらせるの禁止』って言ってなければ我慢せずヤりまくりのつもりだったように聞こえるんだけど。
「ラブちゃんごめん。俺もう限界」
うっすら涙目で緩やかに腰を擦り付けてくる。
その様子は可愛いけど、日置の限界を見極めてる場合じゃない。
「日置、正直に答えろ。ちゃんと答えれば怒りはするけど許す。オレと付き合い始めて何回くらい浮気した?」
「………は?浮気って何と?いや、違う、してない。するわけない。なんでそんな……」
考えもしないことを言われたって顔で驚いてるけど、このくらいで素直に納得してやるわけにはいかない。ってか、浮気で『何と』って反応はおかしくないか?
「オレが『さわらせるの禁止』って言ってたった数日でこんなにサカってるってことは、同じくらいエッチの間隔があいた時は他の子とヤっておさめてたってことだろ」
「え……ちが…。久しぶりに間近で嗅ぐラブちゃんの匂いにかなりヤられちゃってるから……」
匂いのことを言われるとイラっとする。
最近、日置の部屋では靴下脱げとか言われてて……まだ脱いでないし……匂う?
いや、今言われてるのは嫌な匂いのことじゃないはず。
足の臭さで欲情しておっ勃てるとか、さすがにそこまでド変態じゃないよな。
「匂いくらいでここまでならないだろ」
日置がその気になるのは歓迎なのに、なんかイラっとする。
「それは……サクが泊まってたから、ラブちゃんに言われる前から全然してなくって……でもラブちゃんが禁止って言うから、さらに二日、合わせて十日も我慢したんだから当然だろ?頑張ったご褒美に……ラブちゃんが……その……してくれるってことだよね?」
「答えになってない。一回ヤるくらいなら浮気に入らないと思ってるのか?」
「いや、本当に、だからちゃんと我慢したし、そもそも俺は道具的なものは使ったことないよ」
「……道具?お前、何の話してる?」
「だ、だから、大人のおもちゃ類のこと…だよね?さわるのを禁止されたからって道具使って『自分じゃさわってません』なんて言い訳したりしないよ」
ん……?
たしかに『オレ以外にさわらせるの禁止だぞ』って言ったけど………。
「日置、自分でもさわってないのか?」
「そりゃトイレとか風呂で洗う時にふれてはいるけど、ラブちゃんとの約束はちゃんと守ってるから。だから……」
日置の鼻息が荒い。
「日置、オレと付き合い始めてお前のココにさわったのって、オレとお前以外誰かいる?」
遠回しに聞きながらソコに優しくそっとふれると、日置が腰をククッと押し付けてきた。
「ええ?身近な友達でもそんな悪ふざけは滅多にないよ……ええっと…ええっと。うー。こんな時にそんなこと思い出す余裕ないって。ああ、もうお願い。焦らさないでください。もう、もうわけわかんなくなって、期待だけでイっちゃいそうだから」
落ち着かない様子でオレの腰を撫で、ハァハァ言いながら潤んだ目で乞うように見つめてくる。
これは……本当に浮気なんか全く頭にないっぽい?
「ンァ…あぁ……」
ちょっとモノを撫で上げただけで細い声を震わせてククッと腰が逃げる。
「なんで逃げるんだ。さわっって欲しかったんじゃないの?」
「ぁ…ふっ…さわって欲しいです…ンンっ……でも本当すぐイキそうだから……」
「いいよイケよ」
「ぁう……その…まだ玄関だし……その…ベッドに」
そうだ、まだ玄関……だしな。
そのまま日置をグイっと玄関ドアに押し付け、ガチガチになってるモノにオレの腰骨を擦り付けた。
「ンァあ…ふぅ……!」
「あんま大きな声出すと、ドア越しに表まで聞こえちゃうぞ?」
なんて……日置の蚊の鳴くような喘ぎ声が表まで聞こえるわけない。
けど日置は焦って口を手で覆った。
グイグイと円を描くように腰を擦り付けると日置が潤む目を細めてプルプルと震え始める。
「ラブちゃ……イクからっ……イク…もうっっ本当に出そう……!」
声をひそめて必死に囁き、自分のモノをギュッと握りしめた。
「日置、浮気したことあるかちゃんと答えないと、この状態で玄関から放り出すぞ」
「えっっっなんでそんな!ない!ない!あるわけない!」
「本当に?」
「本当!ぁあう…本当だって。ラブちゃんに会えなくて寂しかったとしても、浮気なんかしない!俺にはラブちゃんの写真があるんだ。一日中でも見てられる……んぁ…ちょ…あんまりクイクイしないでっ…出るからっ……」
日置がオレの腕から逃げようと身体をよじった。
逃がさないように身体全体を押し付けて、首筋にキス。そして日置の手の上からソコに腰を擦り付けつつ、敏感な腰骨あたりをゾロリと撫でた。
「ふ…ぁ…はっっく……」
小さな声を漏らしながらビクンビクンと震えては身を固める。
これは……イったな。
情けない顔でオレを見つめてる。
どうにか誤魔化せないかと考えてるのが丸わかりで可愛い。
「玄関でイっちゃうなんて、日置は本当スケベだな……」
「い、いやだって……」
オレのわざとらしい言葉にしっかり焦る。
「これでおしまい?それとも続き……したい?」
「し…したい。してください!」
「で、結局浮気した?」
「し…して……いや!だからしてません!したいとも思いません!なんでそんな事言うの?どうやったら信じてくれる?」
潤んだ目でオレを見つめる。
この表情からして本当に浮気なんてしてないんだろう。
けど……『どうやったら信じてくれる?』って尋ねられたしなぁ。
「じゃ、浮気してないって言うなら、ムラムラして困った時はどうしてるか教えてよ」
「そ……それは」
嫌そうだ。
まぁそりゃそうだよな。
男ならやる事は一つで、その状況に個人差がある程度だ。
情けない顔のまま日置が寝室に向かって、本棚からフォトブックとクリアファイルを取り出す。
そしてクローゼットの扉を開けた。
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