10 / 28
伍 1
千明の発情期の周期は2ヶ月に1度で8日間が通常だ。
安定したのは1年半前からであった。初発情期が15才の3年前なので、平均的な体質といえた。
通常Ωの発情期は第二次成長期を迎える12才から、思春期真っ只中の17才の間に訪れる。
1ヶ月から1年の周期があり、期間も1日から4週間と個人差があった。
稀に20才を過ぎても発情期がこない人もいれば、『第三の性』性別検査の前に発情期を迎える人もいた。
個体差が著しいのが近年のΩ研究によって実証されていた。
フェロモンを抑える為の抑制剤を常用し、発情期を難なく過ごし、体の変調に違和感を覚える程度で通常の生活を送ることができるΩもいる。
だが、たいていのΩは発情期には性交して体の変調を調整していた。
その性交相手が、特定の人かそうではないかの違いだった。
国の優遇処置のひとつに、発情期のΩが周囲に気を使うことなく発情期を迎えられる部屋が用意されていた。
Ωの位置や身体機能の変化を首のチョーカーが把握しており、希望者には発情期前に空き部屋の情報が伝えられていた。
一流ホテルのスイートルームが、Ωの発情期にはヤり部屋に変わるのだ。
千明は発情期の1日前に、人口庁の職員に伴われ、いつも利用してるホテルにきていた。
常用している抑制剤の服用を止め、避妊薬を服用した。
子供は欲しい。
でも、相手を縛る道具にはしたくない。
高校生の自分達には、子供を育てていくという親になる責任はまだ重過ぎた。
お互いに経済力がないが、国が不自由ない生活を保証してくれる。
それがΩが妊娠し出産するということだった。
子供が増えるほど、優遇されていく。
子供が育てられないΩには、国の機関で子供を育ててくれるのだ。
産み捨てでも、親であるΩには保証が継続していく。
Ωに対する手厚い国の優遇処置を非難するβ達がいるが、出生率の割合をみれば文句のいえない状態だった。
ともだちにシェアしよう!