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伍 2
日本国政府は、Ωが番を持つことを推奨していない。
世界人権保護法があるので、Ω個人の意思を尊重し、番を持つことは禁止していない。
突発的な事故による番関係を除き、厳重な管理下のもと調査された結果、合格したものだけに番関係を承認していた。
性的マイノリティが多様化した現在の日本国では、同性婚も認められてずいぶん経つので、男男、女女の夫婦も多くなっているのに、番関係になることだけは後退ぎみだった。
番を解消されたΩの末路を案じてのことと表向きではうたっているが、内情はより多くのαの子供を孕ますためにあった。
Ωの発情期に利用されるホテルはセキュリティが万全で、防音防壁で囲まれフェロモンが洩れることがない最上級の部屋が用意され、安心して性交ができるようになっていた。
事前に性交相手として登録してある透が部屋に訪れる前に、千明はシャワーを浴びた。
ホテルの最高級な白いガウンの下は裸だ。
スマホをチェックしたら、
暁から、
『呼べ』
と一言だけのRINEがきていた。
Ωが呼ばなければ、人口庁の『第三の性課』以外のどんな人間でもこの部屋には入ることは出来ないからだ。
それは番関係のあるαも同様だった。
例え保護される前はどん底の底辺にいた未登録の野良Ωであっても、そのΩが望まなければ、どんな上位の立場のαでさえ、一歩も立ち入れることが出来ないシステムが確立していた。
『来て』
と、暁に返信した。
(透は嫌がると思うけど)
求められると、喜んでしまう。
(Ωって浅ましいな。
両方とも欲しいなんて、いつか罰がくだるのかなぁ)
人口庁の『第三の性課』の職員から渡されたスマホで、登録している暁がやってくることを伝えた。
もうすぐ『第三の性課』の職員に付き添われて透がこの部屋に来る。
暁は仕事場から直行なら、一人でホテルまでやって来るはずだ。
最初から二人が揃うことはあまりない。
正気を保っている時に二人に会わない方が、千明には都合がよかった。
兄弟のはりつめた空気を、感じなくてすむからだ。
どっちも選ばない自分の優柔不断さが、兄弟の仲を悪くしたのだと確信していた。
自分が中に入って、以前の仲のよい兄弟に戻って欲しいのは、驕りだとは思っていなかった。
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