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伍 3
透が来た時には、体の疼 きの波がちょうどきていて、熱をもて余していた。
シャワーを浴びると言った透に、
「あとでいいよ」
そう千明は言って、透の服を脱がした。
透を裸にむいて、手を引いてベッドに横になった。
キングサイズのベッドの上で、二人は重なりあった。
千明がマウントをとって、透に口付けた。
しっとりとした弾力のある唇を時間をかけて堪能してから、千明は顔を離した。
「抑制剤、飲んでる?」
と、千明が問うた。
「一応」
「そんなのいらないのに」
「飲んでないと暴走するから」
「しても、いいよ」
「そんなこと言わないの。どうなってもしらないよ?」
透が千明のガウンを肩から脱がしていく。
透の手が肌に触れるだけで、体が跳 ねた。
千明は自分の体を優しくさわっていく手が、もどかしかった。
この間、学校のトイレで暁に抱かれた時のように、もっと荒々しくてもよいのに、透は丁寧に自分の体にふれていくのだ。
性交に特化したΩの体は少々雑な扱いを受けても、快楽と認識してしまうのだ。
それが、手にいれたいαからの仕打ちならば、体は狂喜乱舞する。
そして、心も満たされていく。
「透……」
「ん?」
「もっと…」
「もっと、なに?」
涼しげな目で見上げられた。
千明のフェロモンに耐性のある透は、まだ正気を保っているのが、わかる。
抑制剤の効きがよいのも、考えものだ。
自分だけが欲しているみたいで、あさましい。
「……さわって」
「さわってる」
と、透の口角があがった。
わざと、だ。
じれて、ぐずぐずになる千明を見たいのだ。
「もう、いい。僕がさわるから」
透の足の間に足をいれて、上に乗っかっていた千明は、透の腹の上に座りなおした。
蕾から密液が溢れでているのか、透の腹を濡らしていく。
ろくに前戯をしなくても、濡れていつでも臨戦態勢にはいれるΩの体。
性交が一番の快楽だと本能が教えてくれるのだ。
気持ちいいことをして、子供を孕む。
発情期は特にそれが顕著にでて、Ωの本質だと細胞に刻まれている気がした。
発情期のΩは、政府から学生も社会人も特別公休日が自動的に取得でき、その時の相手に選ばれたαも同様に特別公休日が与えられている。
ごく、稀に、相手がβの場合もあるが、その場合は妊娠率が急激に下がる為、特別な優遇はされない。
学生は病欠でもなくただの欠席で、社会人は有給休暇を利用するか欠勤扱いになった。
人口庁の指針では、第1子は十代で産むのがベストで、二十代の若いうちに、産み終えるのが基本だという。
晩婚型の傾向がある国民性を軽んじる発言で、未婚者や子供のいない世帯も増加の一途をたどっている現代に、何世代前の見解だと笑いたくなる。
しかし、超高齢化がゆるやかに減速しており、あと20年もすれば100才超えの長寿者がいなくなる予想がされていた。
医療技術は進化し続けているが、欧米化した食生活と添加物だらけの食物のせいと、健康意識の高さがかえって、長生きが出来ない体に日本国民は移行している見解が出されていた。
その分の社会保障費がΩの優遇処置費にまわされていた。
千明の初発情期に居合わせて、透の童貞を奪ったのが千明だった。
お互いに対抗性の抑制剤を服用していても、初めての突発的な発情期には対処出来ず、本能のままに抱き合ったのは、中学3年生の春だった。
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