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伍 5※
バニラエッセンスの香りに似ているが、それよりも甘ったる匂いに頭がくらくらして、透は酔いかけた。
判断力が著しく衰えているのは、自覚する。
だが、それ以上に甘美な思考にさらされていくのが、心地よかった。
本能のまま、目の前のかわいらしく美しいΩを組敷くことしか考えられなくなる。
透は自分のために用意された極上の体に、むしゃぶりついていく。
黒いチョーカーの上から、細い喉元に歯をたてると、ひときわ甘い声がもれる。
透は嗅覚以外にも聴覚からも刺激されていくのだ。
平らの胸にさわってもいないのに、ピンと主張するピンク色の乳首。
舌でねぶると、千明がねだるように胸を突きだしてくる。
もう片方を指でつまんでこねると、
「あっ…んんんっ」
こらえきれなくなったのか、甘い声がひっきりなしに洩れてきた。
千明の自分より小ぶりな陰茎にふれると、すでに我慢汁でグショグショになっていた。
千明の好きな尿道口をこじ開けると、
「やぁ…さわんにゃ…」
「……かわいい」
指先を乱暴に少し押し込むと、
「…らめぇ……うんんんっ」
千明は体をこわばらせたあと、吐精した。
荒い呼吸を整えている千明の陰茎から、透は指を抜いた。
せき止められていた精液が、力なくダラダラと垂れていく。
千明の弛緩した体を裏返して、うつ伏せにし、淫液があふれている蕾に、透は指をいれた。
抵抗なく長い指をのみ込んだ。
一本、二本、三本と指を増やしていく。
ひっきりなしに喘ぐ千明の背中に覆い被さって、
「中がやわらかい。暁と寝たの?」
と、千明の頬にキスをした。
千明の体がビクッと固まった。
「ねぇ、答えて」
千明が力なく何度も首を横にふった。
透は千明の胎内に指をいれたまま、上体をおこした。
「暁の匂いがべったり付いてる。威嚇されてるみたいだよ?」
「……ごめんなさ…」
怯えたような小さな声の千明だ。
「それってなんの謝罪? オレを呼んで、ごめんなさい? それとも発情期前に暁とセックスして、ごめんなさい?」
「……呼び出されて」
「呼び出されたら、股開くんだ?」
「違っ…」
「違わない。オレより暁の方を呼んだら?」
「……」
「呼んだの?」
答えないことが、肯定していた。
千明の胎内から指を引き抜いた。
自分から離れていこうとする透の手をつかんだ。
「暁がくるんだったら、オレはいらないだろ?」
「やだ……いかないで」
「それは暁に言ってやって」
「透っ……透がいいの。透に抱かれたい」
千明が透に抱きついてきた。
「そんなに必死になって引き止めちゃって。すごく傷付くんですけど」
と、暁が立っていた。
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