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伍 6

「まだ抱いてねぇの? 千明がかわいそうじゃん」 と、暁がうっすらと笑った。 「あっ……」 と、千明は声を出したあと、二人から目をそらした。 「帰る」 と、透は千明を引き離した。 「帰るのはいつでも出来んじゃん? ねぇ、お兄ちゃん。千明はおれ達とイイことしたいんだよね~」 と、暁が言いながら服を脱いでいく。 「おまえがいたら、オレはいらない」 と、透が毛足の長い絨毯(じゅうたん)の上にあった服を拾って、歩き出した。 上半身裸になった暁が、透の腕をつかんだ。 透の上から下までゆっくりと見下ろして、 「マジでまだヤってないのかよ……」 透を引き寄せて、 「千明の匂いが薄い」 と、暁に透の耳元でささやかれ、 透は瞬時に暁から飛びのいた。 腕は白い手につかまれたままだ。 「今回はさぁ、千明が3Pを所望してるんだら、αならそれに応えなくっちゃ。それにおれ達は一蓮托生じゃん?」 と、暁だ。 「……黙っててごめんね、透」 と、千明は大きさな目に涙がにじんでいた。 「オレじゃあ物足りない?」 と、透はしずかに問うと、 千明は慌てたように首を横にふった。 「おれが頼んだの。発情期(ヒート)の千明とヤりたいって」 と、暁だ。 「じゃあ、二人でヤったらいいだろう」 と、透が苛立ちを隠さない。 「おれが暴走したら、誰が止めるんだよ? ねぇお兄ちゃん」 と、言った暁に、 「おまえ、飲んでないのかよ?」 と、透が瞠目した。 「せっかくの千明の発情期なのにもったいないじゃん」 と、暁は笑顔だ。 「やっぱあんたは飲んでんだ。『第三の性課(バース課)』の職員になれるんじゃねぇ?」 と、暁がしらけたような目を透にむけた。 人口庁の『第三の性課』は国民には通称のバース課と呼ばれていた。 千明の大きな茶色の瞳から、涙がこぼれながら、 「……大丈夫だよ。避妊薬飲んだから。二人には迷惑かけないから」 と、ベッドに座りこんだまま、しずかに泣くのだ。 「千明は悪くないよ。オレのわがままをきいてくれただけ。お兄ちゃんの大事な千明が泣いているのに、帰っちゃうの?」 暁に肩を抱きよせられ、 「発情期(ラット)になったら止めてくれるよね? とおるくん」 と、小声で言われた。 千明には聞こえないし、盗聴器にも拾われない音量だ。

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