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陸 1
透はΩ発情期相手公休日を終えて、1週間ぶりに登校した。
自分の席に座って、机に両ひじをついて両頬に手のひらをあて、頭をささえていた。
昨日の昼まで、千明とヤり部屋で過ごしたのだ。
暁はキャンセル出来ない仕事がいくつかあり、学校は公休日だったが、ホテルから仕事に通っていた。
久しぶりに、二人で千明を共有していた1週間だった。
昨年までは3人で千明の発情期を過ごしていたが、暁の高校受験が近づいた頃、
透が千明に、
『オレだけではダメなのか?』
問うと、
嫌な感じの間のあと、
『透だけでいい』
と、千明が答えてくれたのだった。
実際には、千明の発情期の周期が2ヶ月に1度だから、1月と3月の2回だけ、暁抜きの発情期期間だった。
(結局、千明にとっては、オレと暁はニコイチ扱いなんだぁ)
いや、違うのかもしれない。
(オレじゃあ、満足出来ないんじゃないか?
だから、暁を呼んだ?
発情期じゃなくてもヤってるし。
気付かなかったオレがマヌケなんだけど。
ていうか、オレが二人のジャマしてんの?)
その思想から、
暁が透を抱く理由に行き着く。
(オレが千明を抱くのが、気に入らない。
それは、暁が千明を独占したいため。
だから、か……。
脱童貞相手だしなぁ。
……それはオレも同じだけどな)
「高山、大丈夫か?」
成川に朝イチに声をかけられたのが、この一声だった。
「おはよう。どこも悪くないけど?」
「悪くない顔色じゃないぞ」
「マジで?」
「保健室行くか?」
と、成川が透の横にかがんで、顔を覗き込んできた。
「体調じゃなくてメンタルが弱ってるのかも」
との答えに、
「弱ることがあったんだ」
と、成川の口角があがった。
「深水に搾り取られてへこんでるのか」
吹聴しなくても、幼馴染みのαとΩの二人が揃って病欠で休めば、発情期休暇だとバレてしまっていた。
表向きに『かぜで休み』になっているが、きちんと公休扱いだ。
「……ほんと、成川に下ネタは似合わないよな」
と、透だ。
「深水も来たのか?」
「調整あるから、もうちょい休むんじゃないかな?」
「Ωは色々と大変だな」
「そういう成川にはΩの許嫁 がいるもんな」
「……古すぎ。せめて婚約者と言ってくれ」
「だって、成川母 が『将吾にはかわらいいΩのお嬢さんという許嫁がいるんですのよ』と嬉しそうに言ってたし。成川の病欠はその許嫁の発情期休暇だもんな」
「そんだけしゃべれれば、体調はじゅうぶんだな」
と、成川は立ち上がった。
そして、透の襟足からのぞく真新しい噛みあとに、目が止まった。
「なに、これ?」
すっと、成川に後ろ首をさわられ、
透は体がびくっとふるえた。
「……発情中は凶暴なの」
と、透だ。
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