21 / 28
漆 2
首をふって、成川から離れようとするけど。
がっちりと頭を固定されていて、逃げられない。
「成川っ……やめ…」
成川に項を執拗に舐められるのだ。
「首、感じるのか?」
「かんじないっ…」
「……そうはみえないな」
「なる…かわぁ、話しぃ…するって、いったのにぃ」
「してるだろ?」
「してなっ…ぃ」
「体に訊いている」
「え…?」
成川が透の首から顔をあげ、
真正面から目を合わしてきた。
「深水と弟の相手と忙しいよな。そして、俺の相手と」
「成川?」
「αのおまえが、Ωを抱いてαに抱かれる。どんな気分なんだ? それも血の繋がった弟に組しかれるのは?」
透が成川の体を押し返し、
立ち上がりかけた透を、
成川がソファーに押し倒した。
「成川っ!」
「きれいな体でもなのに、出し惜しみするなよ」
透は瞠目したあと、
成川の顔を平手打ちした。
成川は顔色ひとつ変えずに、透の両手をつかみ、頭上でひとまとめにして、押さえ込んだ。
「殴るなら躊躇するな」
と、成川は怒りは感じられない静な声音だ。
「放せよっ!」
「…………弟はやめろ」
と、成川の感情を押し殺したような抑揚のない低い声だ。
「暁とはなにもないよ」
と、透がうっすらと笑うと、
成川が眉間に皺をよせた。
「……項を噛んだだけ?」
「それは千明」
「弟は匂い付けだけ?」
「そう、それだけ」
成川の眉間の皺がより深くきざまれた。
「じゃあ、高山の初めてを俺にちょうだい」
透は大きな瞳を見開き、成川を凝視した。
「……成川?」
「俺は高山を、高山透をそういう気持ちで見てきたよ」
成川のつらそうな顔に、
「冗談ばっかり……。許嫁いるのに」
と、透はへらりと笑い返した。
「彼女は家が決めた相手だ。そばにずっといて欲しい相手は自分の意志で決める。それが高山透、おまえだよ」
真摯な目で告白されて、
透は返す言葉がみつからなかった。
「弟が好きなのか?」
「暁は…………千明が好きなんだよ」
「深水はおまえが好きみたいだが」
「千明も暁が好きなんだよ。……オレが二人のじゃましてたの」
「ふられたんだったら、俺にしたらいい。俺は絶対に高山を手放さないから」
透が首を小さく横にふった。
「ごめん、成川。……成川に恋愛感情はないよ。友達のままじゃダメなの?」
成川が辛そうな顔をして、首を横にふった。
「高山、悪い。嫉妬でどうかしてた。だから、責任とるよ」
「え?」
つかまれている手が、急に熱く感じた。
ともだちにシェアしよう!