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漆 3
「……なに…言って?」
と、透が怪訝そうに成川を見た。
「αの発情期 誘発剤を盛 った」
「う、そ……」
透は押さえ込まれている腕を動かすが、拘束ははずれない。
「成川っ…はな、して……」
成川の清涼感ある香りに、とろりとした甘さが加わった。
爽やかな清々しい香りのなかに、花のような匂いが混じっているが、不快には感じられない。
むしろ心地よい香りだった。
成川の匂いの変化に、
「……なるかわ?」
「俺も飲んだ」
「バッカじゃないっ! ふたりでラットなんて……。αしか、抑えられない……」
「誰もこない。人払いしてる」
「よくせ、いざい…ちょう…だいっ!」
透は体の変化に、言葉をうまく発せなくなってきた。
「薬で誘発したのを薬で抑えこむのは、体に負担がかかりすぎるから出来ない」
「…じぶん、かって……」
「だからすまないと思ってる。今もこれからもずっと責任とるから」
「よくせい…ざいっ!」
「興奮すると、体がもたなくなるぞ」
「はあ? くすり…もったやつがいうかっ!」
「Ωのフェロモンによるラットじゃないから、持続性はない。薬か抜ければ楽になれる。……諦めて俺に流されてくれ」
成川が上体を倒し、
透の体に覆い被さったのだ。
「なるか…」
鼻先どうしがかさなり、くにくにと動かされた。
じゃれあいのようなしぐさに、透は瞠目した。
近すぎて成川の顔がぶれて、表情がよみとれない。
透の頬に成川の唇がそっとふれ、何度もやさしいキスがほどこされていく。
「やめろっ……」
と、透は力なく首をふった。
「……息、あがってるぞ」
成川がふわりと笑い、
「いい匂いだ」
と、つぶやいて、
透の首もとに顔をうずめた。
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