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捌 2※
「透」
暁の呼びかけに、
「うん…」
透がうっすらと目を開けたら、類い希な美貌が目の前にあった。
「ごめん」
暁に謝られたとたんに、片足を抱えられた。
「えっ?」
肛門に暁の陰茎が押し入ってきた。
昨日の夜まで成川と交わっていた肛門は、圧迫感と息苦しさはあったが、スムーズに中を犯していく。
失神してしまうほどの強烈な快感のあとで、下半身が痺れているみたいで、重くてだるい。
暁の腰の動きに合わせて、無意識に腰が動いてしまっていた。
透は体の奥底で弟の熱い楔を喰い込ませて、喉の奥から声がしぼり出されるのだ。
一度味わってしまった愉楽は簡単には消せない。
暁が透の体内で果てたあと、自分の陰茎を引き抜いた。
膝に透を座らし、後ろから抱きよせ、
「あっ…アアッン!」
蜜壺に再度、昂 りを差し入れた。
ゆっくりと腰を揺さぶってきた。
緩慢な動きに焦れたのは、透の方だった。
前の刺激が欲しくなっても、さわってもらえなくなって、体がつらくなったのだ。
「あ、きらぁ……」
「ねだってみろよ」
「や…ぁ……」
「いかして欲しいんだったら、言えよ」
耳元で、低くて甘い声で呪文のようにささやかれだ。
欲にまみれた透に、逆らえることなんか出来なくて。
「……さわって」
「どこを」
「オレの…」
「オレのなに?」
透の背中に感じる暁の熱と鼓動に、追いたてられるように、
「……オレのちんこ」
「どんなふうにされたい? 自分でさわってみせてよ」
暁の甘い声にうながされて、
透は声を出ないように唇を食いしばって、自分の陰茎をさわった。
どろどろにあふれたカウパー液が、透の手を汚していく。
暁が透の手を陰茎から離させ、ゆったりと動作で扱いた。
もどかしいほどの曖昧な触り方だ。
透は焦れるように腰が動いてしまうので、奥歯を噛みしめて緩慢な刺激に耐えた。
「あ…うんんっ」
「声を殺すな」
と、命令してくる暁だ。
「…うるさい」
「かわいげねぇ」
「もとから…なぃよ」
「確かに」
と、暁が喉奥で笑った。
悔しくて肩越しに振り返って、暁を見た。
憂いをあらわにした貌にでくわした。
暁がバツが悪そうに息をのむ。
透は初めて見る暁の切なそうな顔に、
魅入ってしまった。
「暁……」
透は自分の両手で顔を覆って言葉を紡いだ。
「おまえは、なんで、オレを抱くんだ?」
今、こんな状態でたずねる言葉じゃないかもそれないが、いずれは問いただしかったことだ。
暁は透の陰茎から手を離した。
透の両手首をつかんで、透の体ををシーツに倒した。
真上から透を押さえ込んで、
「じゃあ、透はどんなつもりで、おれに抱かれてんだよ?」
質問に質問で切り返された。
透は答えられなくて、
目をぎゅっとつぶった。
「……オレら兄弟なのに、こんなのおかしいよ」
と、透だ。
閉じた目から涙があふれてきた。
暁がそっと唇を落としてきた。
オレの左の眦 へ。
もうずいぶん前に作った傷のあと。
そこに口付けられたのは初めてだった。
(それが暁の答えなのか?)
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