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第3話 恋愛というテーブルに乗ることはない
190センチ近い身長で、程よくついている筋肉に、綺麗な身体のラインが、スーツ越しでも見て取れる。
ダークブラウンの少し長めの髪を、後ろに流し、清潔感ある身嗜み。
垂れた目許が、柔和な印象を与える。
「うん。いいね。ダマにもなってないし。これなら、自信もって、営業かけれるわ」
たぶん、衝立の向こうで網野は、いつものキラースマイルをかましているのだろう。
自社の商品の勉強も怠らない。
小さな変化も見逃さず、周りのちょっとした変化にも気づく網野。
この前など、揃える程度に切ったという開発部のお局様の髪型の変化にすら気づいたくらいだ。
成績優秀、容姿端麗、気配り上手とくれば、モテないわけがない。
彼のスマイルに、心を撃ち抜かれなかった女を俺は見たことがない。
パーソナルスペースって何ですか? と言わんばかりに、誰にでもフレンドリーな性格もモテる要因のひとつだろう。
……ハードル高すぎ。
そう。
俺の片想いの相手は、衝立の向こうで、爽やかな笑顔で女の子のハートを無意識に射抜いている網野なのだ。
俺が女なら、化粧も出来るのに。
ほんの少しの変化にも、網野なら気付いてくれるんだろうな。
着飾れない男の俺は、網野の目に留まることは、ないのだろう。
前提として、俺も男だし、あいつも男。
恋愛というテーブルの上で、俺たちが重なることなんて有り得ない。
好きになったって。
どんなに恋しいと思ったって。
俺の気持ちが報われることなんて、有り得ない。
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