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第13話 強力な協力者
鞍崎さんとの出会いから、3ヶ月ほどが経っていた。
その日も俺は、バーで飲んでいた。
鞍崎さんは、まだ現れてない。
扉が開く度に、期待が溢れる視線を向け、違う人間が入ってくる度に、しょんぼりと肩を落とす。
鞍崎さんが来たところで、話せるわけでも触れられるわけでもない。
それでも、一目でもいいから、会いたかった。
「大希のコト、本気なの?」
バーに通いつめ、他の男には目もくれずに、鞍崎さんを待ち、その姿を眺め続ける俺に、ユリさんが問うた。
「仲良くなりたいです。でも、シャッター下ろされちゃったから、無理ですよね」
しょんぼりと肩を落とし、情けなく笑む俺。
「顔や容姿は好みのタイプだけど、チャラいヤツは、嫌なんだよ。えっち出来れば、男でも女でもどっちでも良さそうって感じで、貞操観念、皆無っぽいだろ。…遊んで捨てられるの目に見えてんじゃん。もしくは、都合よく使われてポイってされそうじゃん。…そんなヤツと関わりたくねぇ」
一息に喋ったユリさんは、ほんの少しだけの右の頬を膨らませ、そっぽを向いた。
他所を向いていたユリさんの視線が、するりと戻る。
「って言ってたよ」
くいっと口の端を上げたユリさんは、ドヤ顔の微笑みを湛えた。
「聞いてくれたんすか?」
瞳をキラキラさせ、食らいつくように声を放った。
「んー。こんな真剣で必死な育ちゃん、始めて見たから。育ちゃんが本気なら、力になってあげようかなって?」
優しい笑みを浮かべたユリさんは、こてんと首を傾げて見せた。
それから、鞍崎さんのフルネームや年齢、働いている会社、所属の部署、…色々な情報を教えてくれた。
ドラマ鑑賞が好きだとか、音楽はポップなものを好むとか、細かい趣味嗜好まで。
「あとはね、余裕のある人が好きみたいよ。一生懸命なのは嫌いじゃないけど、いつも必死だと、見てるこっちまで苦しくなってくるって言ってたわ」
一途で、チャラくない余裕のある大人な男。
正しく、俺とは正反対……。
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