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第14話 運命は俺に味方した
それでも俺は、金髪を止めた。
服装も、あまり派手になりすぎない程度に抑えているつもりだった。
だけど、チャラいという印象を払拭できるほどの自信はない。
この場所で声を掛けても、初対面の二の舞だろうコトは、容易に想像できた。
鞍崎さんがバーにいる間は、こっそりと眺めるだけ。
ユリさんは、鞍崎さんが帰った後、どんな話をしていたのか教えてくれたり、昔の話をしてくれた。
俺は、どんどんと鞍崎さんに嵌まっていく一方だった。
就職活動の真っ最中。
鞍崎さんの会社の求人情報を見つけた。
……運命だと思った。
落ちたら諦めもつくだろうと、入社試験を受け、無事に内定をもらい、今に至る。
赤い顔も、プルつやの唇も、誰にも見せたくなかった。
俺の使い古しのマスクなんて嫌かと思ったけど、使ってくれた。
あー、やべぇ。マジで、死ぬ……。
ドキドキしすぎで、心臓発作起こしそう。
4つも下の年齢。
只でさえ、鞍崎さんの好みとは、かけ離れている。
鞍崎さんの仕草に一喜一憂して、悶えている姿など見せられない俺は、トイレに駆け込むしかなかった。
トイレの個室でしゃがみ込んだままに、自分の心臓を拳で、ドンドンと叩いた。
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