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第19話 不思議な友好関係

 俺は、網野にしがみついたままに、音の方向へ顔だけを向けた。  寄ってきたのは、ユリさんだった。  俺に気づいて寄ってきたのかと思ったが、ユリさんの視線は、網野を捉えている。 「やっと、射止めたの? 長かったじゃない。いやーん、私まで嬉しい」  パンッと音が鳴るほど、軽快に網野の肩が叩かれた。  ん? 知り合いなのか?  でも、ユリさんと網野は、俺以上に歳が離れてるし、どこに接点あるんだ?  事態の飲み込めない俺の上で、網野は盛大に頭を横に振るっていた。 「ユリさんっ、シッ、シーッ」  唇の前で、人差し指を立てた網野は、ユリさんを黙らせようと足掻いている。  当のユリさんは、テンション爆上がり状態で、俺を見やり、満面の笑みだ。 「色々聞きたいし、お祝いしてあげるっ。奢りで飲ませてあげるから、店行こう、店っ」  音符マークでもつきそうなほど、ルンルンのユリさんの声。  ユリさんは、俺と網野の手を掴み、そのままバーへと雪崩れ込んだ。  バーに誘われ、奥のボックス席に先に座るように指示される。  呆気に取られたままに、ボックス席へと足を進める。  網野を振り返れば、しょんぼりと肩を落とし俯いままに、とぼとぼと俺の後をついてくる。 「はい。タバコ買ってきたよー。これで良いんだよね?」  ポケットからタバコとレシート、お釣りを出したユリさんは、、カウンターに座っている俺と同じ歳くらいの男に差し出した。  ユリさんがカウンターの男と話している間に、言われたがままに、ソファーへと腰を下ろした。  隣には、項垂れたままの網野が座る。  ユリさんという嵐が離れ、ふと冷静になる。  お祝いってなんだよ?  …ってか、網野をこんなとこに連れ込んだら、ダメだろ。  いや、普通のヤツなら、わかんないもんなのか?  普通のバーに見えんのか?  …見えるよな?  従業員は、女装家だのニューハーフだのだけど、……普通だよな?

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