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第6話

「はぁ…く……」 程よく締め付けてくる松燕の温かな内壁に、おれは思わず声をもらした。 「俺の中は好いか?」 「あ…ああ…けど、ずいぶん簡単に入るものだな……」 「ああ、またそんな意地悪を言って」 ぱぁ…と松燕の顔が紅に染まった。 意外な反応に、おれの一物が跳ねた。 「あ…んく…」 艶っぽい声にもまた、おれの一物が反応を返す。 「どうして…こんななんだ?」 男の中に入った事は無かったが、女と違うというのは知っていた。 陰間となった幼なじみが男を咥え込むためには支度が必要なのだと言っていた。 そいつの場合はとろみの強い液体を作り、筆にたっぷりと含ませ尻に塗りこんでいたらしい。 慣れてくるとそれも手早くなるらしいが、松燕はそんな支度をした様子はなかった。 なのに、女より狭い松燕の穴はトロりと滑らかにおれを受け入れ、掴みさするようにうごめいている。 「…オマエが変えたんだ。オマエの真羅を受け入れられる身体に、オマエを慰めるための身体に、オマエを喰らい尽くせる身体に、オマエ無しではいられない身体に。…オマエの雌に……」 猫又を慰める為の身体……。 目の前に黒い幕でも降りて来たようだった。 けれどそれに反して、おれの身体は男を求めてたぎっている。 猫又でしか満足できない身体を、ただの人であるおれが満せるわけがない。 そんな思いとは裏腹に、おれの一物はまたがる松燕の尻を硬く貫き、グポグポと突き上げていた。 「ぁう…くんんん…。いきなり……どうした?ブチ…今日はぁあっ最初からこんなに!」 松燕が艶めいた声を出す。 ()い……のか…? グンとおれのモノが力を増した。それが少し奇妙に感じられた。 力を増すくらいなら何でもないが、おれの一物が一回り大きくなったような気がしたのだ。 ……おれは、一物も半分猫又になっているのかもしれない。 けれど、今はそれもこの男を満足させるために都合のいい事のように思えた。 松燕は「ぁあ……!」と艶めいた声をあげて、おれに揺さぶられ快楽に顔を歪めている。 「松燕、自分が満足することばかり考えずに、おれを満足させてくれ」 「ぁふ…んっ…急にあんなに攻めたてたクセに…やはり猫は我がままだ。わかった、オマエは動くな。俺の穴でオマエの性を全部搾り取って、猫又の寿命を百年縮めてみせるから」 やんわりと微笑みながら、とんでもない事を口にする。 腰を沈め深く咥え込み、あごをそらしてクウっと仰け反る。 満足げにはぁ…っと声を漏らしておれを見つめると、ゆっくり前後に腰を揺らし始めた。 男の中でズリュズリュとこすり上げられ、一気に快感が高まる。 松燕が腰を浮かせば一物がジュッと吸い上げられるようだ。 そしてまた深く咥え込まれる。 「あう…ふっっふっふうぅっ!」 いつも飄々とした男が、快楽に溺れ美しい髪を乱して必死に腰を振り立てている。 当然快感はあるが、それより色香を放つ男の痴態に目が釘付けになった。 「なぜだ?…オマエいつもはもっと……」 激しく腰を動かしながら、少し困ったような顔をする。 「どうした?百年寿命を縮めるんじゃ無かったのか?」 「ん…んぁ…。そう…ん…。足りない…ってことか。ああ、もう、意地の悪い化け猫め」 いつもこの男が猫畜生とどんな交わりをしているのかなど知らない。 イラ立ち混じりに下から突き上げた。 「ぁ…ああ。動くなと言うのに!ぁっあっああ!」 松燕の中がジュンと潤んで、より絡みついてきた。 ぐたりとおれの胸にもたれ震えながらも、腰の動きは止めない。いや、止まらないんだろう。 「化け猫の一物がそんなに好きか?」 虚ろな目でおれを見つめ、うっすら笑う。 「だれが…こんな身体にした……」 知ったことか。 腹立たしくて、さらに突き上げる。 「あっ、あううっ!あっああっ!」 頭を振り立てて子供のようにバタバタと足を暴れさせる。 「好(い)い!ああっ、好(い)い!もっとあぅっ…もっと突いてくれ!」 バンバンとおれの胸を叩く。 この男がこんなに淫乱だとは思わなかった。 適当に男を振り払って、足を掴んで四つん這いにさせる。 「ほら、一物を突き入れて欲しけりゃ、そこをおれにしっかり見せてみろ」 松燕はおれの言葉に従い、素直に両手で尻たぶを開いて見せた。 紅梅色の尻穴が濡れて嫌らしくうごめいている。 作り変えられたと言うが、傍目にはわからない。 けれど、ソコから男を誘う香りが立っているような気もする。 顔を寄せればドクンと血肉が沸き立った。 グイと一物を押し込んだだけで、ああっと男が鳴いた。 雑に突き上げるが、その動きに合わせて松燕も腰を動かし、快楽として受け止めている。 「あっぁんん!()い!ブチ……もっと、ブチ!」 「ブチと呼ぶな」 イラ立ち混じりに突き上げるが、松燕は高く一声鳴くと、トロけた目つきで艶めいた微笑みを見せた。 「んぁっっ!どうした?さっきは、ブチと呼べと繰り返し言っていたくせに」 いくら言っても松燕には通じない。 「もういい。『オマエ』でいいから、とにかくおれを『ブチ』と呼ぶな。おれを見ろ。名前は……呼ぶな」 「ふふ。我がままな。まあいい。オマエの言う通りにしよう。さあ、もっとくれ…。もっと…ぁっああ…そう…もっと!」 ぐいと押し込んで小刻みに揺らす。 「んぁあぁっぁあ!好い。っぁんっく…好い…熱い…もっと腹一杯にくれ……」 媚びた笑みに誘われて、ぐいと最奥まで突っ込んでさらに揺する。 「うぐ…あう。くるし……」 息をつまらせる松燕の尻に、さらにグイグイと腰を押し付ける。 グンとおれのモノが一回り力を増した。 ギチギチと中を押し広げれば、松燕の身体もそれに合わせて通常ではありえないうごめきを見せる。 「苦しいなら、止めるか?おれの性を絞りつくすんじゃなかったか?」 「ぁあ…好いんだ!壊れるくらい…壊して…俺を壊して。オマエに……喰われたい!」 気でも違ったように叫びながら、ギュウギュウと尻を絞る。 おれのモノがドクリと脈打ち、また一回り体積を増す。 松燕の中でおれのモノが腕ほどの太さにまで肥大したような気がする。 「あひ!もっと喰って…!壊して。ああっ大きい…奥が…ああ……入口も…すごい…ああっ!」 鳴き叫びながら身を固めて足の指をギュッと丸める。 猫又を満足させるための、盛りのついたメス猫…。 充分そそる姿だが、おれを見てないというのが気に喰わない。 「なにが喰われたいだ。今おれの一物を美味そうに喰らっているのは松燕、あんただろう?」 背中から置い被さって耳にガブリと噛み付いた。 「あ…?な…そ…れは」 正気に返ったような顔をして、恥じらいの表情を見せる。 そんな松燕にドクンドクンとおれの胸が弾んだ。 「なんだ、淫乱なメス猫が今さら何を恥じらってる」 「どうした…オマエ、やはりいつもと違う」 「……知ったことか。ほら、もっとしっかり尻をあげておれを誘え」 松燕はぐっと尻をあげて、おれを見つめる。 強く突き上げると少し無理に首をねじっておれの唇を求めた。 「いっぱい…くれ。オマエの種が臓腑にまで満ちるくらい。ん…ぁあ。好い!噛んで…。噛んで!」 唇を噛み、頬を噛み、耳を噛むと鋭い牙が少し肉に食い込んだ。 「あ…ああ…好い。俺がオマエを喰らって、オマエに俺が喰らわれて…。喰い合って互いの一部になるんだ……」 松燕が自ら首を差し出す。 そこに躊躇なく喰らいついた。 つぷりと牙が刺さる。けれど、血の味はなかった。 「ああ…ん…んぁっ好い!」 正気を失ったようにゆらゆらと松燕が揺れる。 「こら、勝手に気をやるな。おれを見ろ」 再び耳を噛んで引き寄せ、低く唸る。 松燕の視線がおれの目をとらえた。 涙を流しながら嬉しそうに笑う。 「気をやるななど…難しいことを言う。尻を突かれただけでもう何度も達しているんだ。なのに…こんなふうにオマエに喰われ…我慢などできるわけがない」 「何度もか。おれの性を全部搾り取ると言ったくせに一人()がって、食い意地のはったメス猫だ」 おれの言葉にばつの悪そうな表情をみせながらも、甘えるようにギュウギュウと尻の入口を絞める。 松燕の中でいくら気持ち良くなっても、所詮は猫の身代わり。そう思うとどうにもこの甘美な身体に溺れることが出来なかった。 けれど、松燕が快楽に溺れている今なら……。 「あんたが欲しがってるおれの種をたっぷりそそいでやる。ほら、仰向けになって、腰を上げろ」 足をおれの肩にかけさせ、気遣いもなく松燕の尻に一物を突き入れる。 けれど、そんな扱いすら松燕は少し嬉しそうだ。 「あっあっ早い…ソレ…。んぁあ…好い……」 手で畳を引っ掻きながら、半起ちの一物の先からよだれを垂らし自らの腹を濡らしている。 それに手を伸ばせば、上からぎゅっと松燕に掴まれた。 「今は駄目だ。尻に放たれたオマエの種で達したいんだ」 松燕の言葉に一瞬喜びを感じ、すぐに失望した。 この男が欲しがっているのは…おれの種じゃない。 ことさら腰を持ち上げて、松燕の一物がだらしなく暴れるよう突き揺する。 苛立ちまぎれに惨めな姿をさらさせ、溜飲を下げるつもりだったのに、松燕はおれの気など知らず、艶めいた表情で動きに合わせ悦び鳴いている。 松燕の痴態に目を奪われ、おれの一物を包む熱くからみつくような感触に夢中になった。 「……く…ぅん。松燕……いく…ぞ」 「あ…くる…あぁあ好い。……好きだ…好きだ」 松燕はだらしなく足を広げ、腰を揺すりながら、指の跡がつきそうなくらいおれの腕を握りしめた。 「もっとだ…ほら…搾り取れ…っく…ぁ……」 「あ…いい…いっぱい…ぁあ。すき……」 おれの放出が終わっても、松燕はまだ中をビクビクと震わせながら、どこか遠くへ心をやってしまったような顔をしている。 「そんなに種付けされるのが好きか?」 またがぶりと耳を噛めば、すうっとおれに視線を寄越し、ふて腐れたような顔を作って見せる。 「わかっているくせに。さっきのはオマエのことが好きだと言ったのだ」 「ふん、おれではなく、おれの一物が好きなのだろう?」 性を放出する前まで、おれの一物は腕ほどの太さになっていた。 それはきっとおれの中の猫又のせいだろう。 「…それは…まあ、今ではたしかにソレも好きだが…。いや、それよりもオマエ、睦み合ったばかりだというのになぜそんなに不機嫌なんだ。それに…今日は少しその…交わりの様子も違った」 「違うとは?」 「不機嫌で、俺の扱いがずいぶんと手荒だった」 「喜んでいるように見えたが?」 ふんと鼻を鳴らすが松燕は気にした様子もない。 おれだってこれまでは、情を交える相手をあんなに雑に扱ったことなどなかった。 「それは…オマエが不機嫌でさえなければ、ああいうのも…悪くはない」 「そうか、なら、これからずっとああだ。それでもいいか?」 どうせおれは猫畜生の代わりだ。 やけっぱちで聞いた。 「…たまに優しくしてくれるなら…。その…いつもよりオマエの気持ちが伝わるようで…その……好かった」 松燕は初心な乙女のようにおれの胸に顔を埋めた。 「おれの気分で手荒にしたり優しくしたり、それでいいのか?」 そう聞くと、松燕がおれを抱く腕の力をぎゅっと強めた。 「ああ、そうしてくれ。どうせ交わりの時には、オマエに与えられるものは全て快楽となるんだ。ただ快楽を与えられるだけでなくオマエの気持ちが伝わるなら…俺は嬉しい」 これは…猫又よりおれの方が松燕を喜ばせることができた…という事なんだろうか。 けれど……。 そう、松燕が求めているのは、猫又の心だ。

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