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第4話
今日は朝から仕事だ。
休日である土曜日…先輩といちゃいちゃするはずが…。
それは昨日会議が終わって速攻退勤したツケだった。
まあ、ある程度分かっていたとはいえ、まさか今日中に会議の報告書の提出が求められるとは…。
「サクッと仕上げて帰ろう!」
「そうしてくれ…」
篠崎課長が後ろから声を掛けてきた。
長めの茶髪をかきあげながら頭をかいている。
あ~、イケメン登場…。
「…スミマセン」
「全くだよ」
篠崎課長は今年45歳、年齢より若く見えるが仕事に関しては厳しい。もちろん部下のフォローはきちんとしてくれる。だが社会人たるもの、自分の受け持った仕事は自分で終わらせなければならない。故に僕は昨日の会議の報告書を自分で仕上げるために急遽土曜出勤となった。
「…最初から言ってくれればいいのに…」
独り言を吐きつつキーボードを叩く。
「会議が終わってから言おうと思ったんだって」
「え~」
そうだ。課長の返事を待たずして退勤したんだった。
「今日の1時までに仕上げろって言ってんだから優しいよな~俺」
「ハイ…スミマセン…」
そう、昨日の夜、あの後、スマホにメッセージが入っていて、用事があるだろうからって締め切りを今日にしてくれたんだ。
本来なら呼び戻されてもしょうがなかった。
「課長、この資料の数字はどっちを採用した方がいいですか?」
「ん?前と後、両方載せて」
「了解です」
さて、急げ急げ~。
見直しをして、プリントして提出。
「課長、お願いします」
「ん」
奥二重の鋭い目つきに眼鏡…最強かよ!
デスクに腰を掛けて報告書を捲る姿がカッコいい…。
「お?ホレた?」
「結構です」
「冷たいなぁ。今からこの報告書を元にして次の資料作んなきゃいけないのに」
「え!」
知らなかったよ!
「スミマセン、本当に」
昨日は浮かれてたから…。
だって…先輩とおうちデート…。
また今から行ってもいいかな?とか考える。
「こんなもんかな。お疲れ」
「ありがとうございます」
急いで鞄に荷物を詰め込む。
「慌てんなって」
「はい!」
僕は課長の声を背中に聞いてドアを閉めた。
「先輩、仕事終わりました。今から行きます」
早速メッセージを送り、先輩の部屋に急ぐ。
まだ1時になってないから惣菜でも買っていくか。
先輩が好きな弁当屋(お高い!)に寄って茄子の揚げ浸しと鶏の竜田揚げ、ポテトサラダを買って~、、、と
そこでスマホが震え、着信を伝えてくる。
「先輩…えー!」
そこには『今日は来なくていい』とだけあった。
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