11 / 115
第11話
「“修漣”は俺の弟だった」
しーんという空気感が否めない。
「…すみません、どこまで本気で言ってます?先輩一人っ子でしょ、そのくらい知ってます!」
どやぁ、と胸を張って言ったが二人は顔を見合わせて残念感を醸していた。
「言い方を変えようか」
ここで何故か柿崎さんが話し出す。
「修漣は真幸の、正確には宝漣(ほうれん)のきょうだい」
???…わからない…。
「じゃあ、ここからはファンタジーの世界だと思って聞いて」
その前置きが意味不明なんですけど…。
「はい」
とりあえず返事をした。
「昔、二人のきょうだいがいた。名前は宝漣と修漣。残念なことに二人は若くして亡くなってしまったが数年後に別の人に生まれ変わった」
「あー、ファンタジーですね」
ファンタジーと先輩に何の関係が?
「その宝漣がコイツ」
指差した先は先輩…。
「エイプリルフール…違うよね…」
二人にからかわれているのか?
「別に信じなくていい」
今まで黙っていた先輩がポツリと言った。
表情筋が死んでるといっても過言でない先輩が寂しそうな顔をしている…。
僕は先輩にそんな顔をさせたかったんじゃない!
「すぐには無理です。でもそのうち理解できると思います」
口をついて出た言葉だが、嘘はない(と思う)。
先輩との楽しいランチタイムは柿崎さんからのファンタジーの話で終了した。
僕は溜まった仕事に没頭してあの話の事をしばし忘れた。
そして終業後…あの話を速攻で思い出した。
会社を出るとあの男、修漣とやらがいた。
ともだちにシェアしよう!