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第13話

いつの間にか先輩からラインが入っていた。 マジか!怒っていて気づかなかった! 『修漣が接触してきても無視しろ』 あれ?それだけ? …がっかり…。 『ケンカ売られましたけど、叩き落としてきました。大丈夫です』 そう返信しておいた。 ああ、先輩に会いたい。 先輩の部署が忙しくなり人手が欲しいということで僕は暫く分析の方で仕事を手伝うこととなった。 先輩に会いたかったけど…まさか駆り出されるとは…。 …嬉しい…。 「手、止まってる」 おっとイケナイ、作業を再開しつつ斜向かいにいる先輩に熱い視線を送る。 あ~カッコいい~。 気負わず白衣を纏う姿もいいな~。 マスクしてるから表情はわかりづらいけど眼鏡の奥の瞳がデキル男って雰囲気を醸していて最高~。 「事代堂くん、ヨダレ」 おっと、じゅる…じゃなくて! 「田中さん、冗談は止めてください」 朝からハラスメントだよ。 「志摩ちゃん鏡見ておいで」 ふふっと柔らかく笑われた。からかわれただけか。 大学ではもともと分析を専門にしていて先輩の研究のお手伝いをしたこともあった。 卒業後、先輩と同じ会社に入社はできたものの所属までは一緒にならなかった。 それでも先輩の推薦で繁忙期だけお手伝いさせてもらっている。 勿論先輩と一緒にいたいから! 昼終わりのチャイムが鳴る。 あ、メシ…。 腹が減った 雑念が一瞬頭をかすめた瞬間、それは起こった。 分析装置に試薬をセットしようと腕を伸ばした時、隣にあった瓶を倒してしまった。 元に戻そうとして指が別のボトルに当たり、それを腕にかけてしまったのだ。 「いてて!」 液体が白衣の上からかかって腕に刺激的な痛みが走る。 田中さんが僕の白衣を脱がせ、腕に流水をかけ始めた。 「肌に直接かかった訳じゃないし量も少ないから大丈夫だと思うけど…医務室に行って診てもらってね」 「はい…すみません…」 先輩は青ざめた顔をしてこっちを見ている。 幸せな気持ちが一瞬で沈んでしまった。

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