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第15話

分析室での作業を一通り終え、気付くともう21時。 心配だから今日は先輩の家に寄って帰ろう。 いきなり来たから入れてもらえないかもと思いつつ呼び鈴を押した。 ガチャリと扉が開き、今だに顔色が白いままの先輩が出てきた。 「具合はどうですか?寝てなくて大丈夫なんですか?」 質問する僕を面倒臭そうに見て 「…入れよ」 と言った。 先輩はベッドに腰掛け、僕は鞄をすぐ脇に置いて正面の床に座った。 「先輩、田中さんのこと…好きなんですか?」 …目が点になる先輩…レアだ。 「…今日、前処理室で抱き合ってましたね…」 本当は抱き合ってなんかない、凭れていただけだがわざとそう言った。 びくっと先輩の肩が震え、驚きで目を見開く。 「…見てた?」 黙って頷いた。 先輩は僕から目をそらし、大きな溜め息を一つ落とした。 「あれは違う」 …だから何が!? 「…あれは…オレの弱さだ」 …?はあ? 「あの、もう少し分りやすくなりませんか?」 頭をガシガシと掻いて今度は、はあーっと長い溜め息を落とした。 「今日、希塩酸を腕に掛けたろ?あれ見て昔の事を思い出した」 「それって僕の全身にもっとたくさんの液体が掛かったヤツですか?」 勢いよく先輩が僕を見た。 「おまえ…思い出した…?」 「何となく…ですけど…」 先輩が顔を下に向けて肩を小刻みに震わす。 「アレを見たら…もう、ダメになった」 僕は膝立ちになって先輩の腰に抱きついた。 「僕は大丈夫です。怪我だって。少し赤くなっただけですし」 先輩は僕の髪に指を通し髪をなぜる。 気持ちがいい。 僕の事を心配してくれてる。 愛しいユキさん。 半分立ち上がり先輩にのしかかった。 唇をそっと押し付け反応をみる。 白かった顔はわずかに上気していた。 それを確認して口付けを深くしていく。 ちゅっ、ぴちゃ、ぴちゃと濡れた音がしだすと先輩はぎゅっと目を閉じ真っ赤になった。

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