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第22話
「先輩、体大丈夫ですか?」
腕のなかに先輩がいる。
ころんとこちらを向き、
「…ユキって呼べよ…」
…!普段はそんな甘えたこと言わないのに!そんなコト言われたら…
「…し…志摩……苦しい…」
力いっぱい抱き締めてしまった。
何が起こっても会社員たる者、出勤しなければならない…。
例え腕を射されても…(社畜)
ケガを負った腕がそうと分からないよう、庇いつつ業務をこなす。
同僚が席を外したタイミングで柿崎さんに疑問をぶつけた。
「柿崎さんは先輩と僕のあの事を知ってるんですか?」
「まあな」
「…まさか…柿崎さんまで…」
僕を狙ってる?
「怖がらなくていいって。何もしないよ」
笑って答えてくれたけど…そもそも“殺(や)りますよ”って言ってから殺すような真似しないよね…。
しばらくは隙を見せないようにしよう、そう心に決めた。
先輩との楽しいお仕事が終了して、もともとの自分の業務に戻ると予想していた通りに山のような書類が積み上げてあり、毎日コツコツ処理するしかないと腹を括ってちょっとづつ減らしていったのが…んん?増えてる??
「見間違いでなければ…増えてませんか?この山…」
問いかければ…あれ?一斉に向こうを見て…コントか!
「志摩ちゃん向こうで楽しくお仕事したでしょ?」
はあ、まあそうですけど…。
「…だから、ね!」
柿崎さん、僕に一体何を忖度しろっていうのか…。
「ちゃんと説明してやれ」
篠崎課長が口を開いた。けど、ここまで言ったんだから課長が直々に説明してくれてもいいんじゃないの…?
「志摩ちゃんが柴のところに出稼ぎに行ってる間にちょっと面倒な案件が発生しちゃって」
は?聞いてない。
「そっちに掛かりっきりになるから俺の仕事を少し引き受けて欲しいんだ」
「あ、何だ…パワハラかと思っちゃった、すみません」
あははは、一気に場が和む。
「笑ってられないぞ。締め切りが近いから」
え!課長!さらっと言わないで!
「が…頑張ります…」
何はともあれ、先輩との時間を確保すべく書類と格闘することとなった。
柿崎さん、凄い…。少しって言ってたけど結構な量がある。
一人でこれ以上背負ってたのか。
ちょっとアレだけど尊敬できる人なんだ…多分。
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