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第24話

「おまたせしました」 「…お疲れ様…です」 平然と席につく先輩の後を追って座る。 「志摩ちゃん今日は出勤だったんだ」 「コトくん、久しぶりだね」 あわあわ、話しかけられちゃったよ。 「研修以来だねぇ…はは」 不自然さが際立つ…。 「志摩ちゃんと伊藤くん、同期でしょ。研修も一緒に受けて仲良かったみたいだね」 田中さん、余計な事を…! 「まぁ、薫くんは北海道支社に配属だから研修の時以外は会わないんですけどね!」 予防線、予防線! 「あ、僕はホッケ定食で。先輩は?」 「…塩ラーメン」 話題を変えなければ! 「田中さん今日はアッセイですか?」 「伊藤くんを案内しようと思って」 は?どこに? 「彼ねぇ、急だけど週明け移動の辞令が出るんだよ」 はぁぁぁ!聞いてないんですけど! 「志摩ちゃん同期でしょ?面倒見てあげてね」 「えっと…、僕に出来ることなら…」 エエカッコしてしまった…。 いつの間にか注文していた食事が届き、先輩が静かに麺をすすっている…。 なんだか落ち着かない中で少し冷めたホッケに箸をつけた。 「先輩!」 田中さん達と別れ、社内のエレベーターに乗り込むなり先輩に壁ドン(エレドン?)した。 行き先を知らないエレベーターはドアを閉め、僕らを密室に閉じ込めた。 「伊藤とは同期なだけですからね!」 先輩が僕の目を見ない。 「何にもないですよ!!」 「…なまえ……」 「はい?」 「名前で…呼んでた」 はぁぁ、名前ー!焦って名前呼びしちゃった!? 「ど…同期ですから…」 チラッと僕を見るも……目を合わせてよ~。 妬いてる?先輩可愛い…。 顎を掬ってキス…しようとしたら、先輩がエレベーターを降りてしまった。あら、もう3Fに着いてたのか。 いつの間にボタン押したんだろう。 仕方ない、午後の仕事を始めよう。 僕は5Fに向かった。 キーボードを叩く音に集中して、空腹に気づけば夜…。 あ!先輩放っといちゃった! 階段で3Fに急ぐ。 「先輩!」 奥の前処理室で作業していた。 来客用白衣を羽織り奥の部屋へ入った。 「先輩そろそろ終わりですか?」 チラッと僕を見て 「…これだけ仕込んで帰る」 「分かりました」 近くの椅子に腰かけて作業を眺めた。 マイクロチューブを手にとり、ピペットで10ミリチューブに移注、試薬を添加してミキサーで撹拌後反応させる。操作の基本。 先輩の指は美しい動作でチューブを手に取りピペットを操る。 美しい手技は美しいデータを生み出す。 無駄のない指の動きに…ちょっとムラムラする…。 最近忙しくて会えてなかったし…触りたい…。 僕の先輩を見る目が、邪なものに変わっていった。

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