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第26話

「…んんっ」 ユキの上に倒れ込んだ。 でも体格差があるから体重は乗せない。 「んっ」 ちゅっと唇に吸い付いてユキの表情を伺う。 「……い」 「え?」 「重いし、抜け!」 あら、まだユキの中に入ったままだった。 「ゴメン、ユキ」 「こんな所で…」 ぶつくさ言いながら服を直すが怒ってはいないようだ。良かった。 「ほら、手伝え」 「はい、もちろんです」 洗い物やチップ詰め等、作業の後片付けを手伝った。 先輩は「全身が気持ち悪い」とか「体が痛い」とかぶつぶつ言っていたがそこは聞き流しておく。 土曜日のこんな時間に会社にいても、先輩と一緒なら全然苦じゃない。 明日は半日程度で作業が終了するというので僕も昼まで業務を行うことにした。 「…伊藤くん、何してるの?」 日曜日、薫が何食わぬ顔をして白衣を着ていた。 朝は先輩一人だったのに。12時に先輩の様子を見に来たら…薫が…伊藤薫がいた。 僕は自慢じゃないけど怒ることも拒否することも殆どない。 何で薫が先輩とアッセイしてるんだ! 「コトくん、来ちゃった」 来ちゃったじゃないよ! 僕と先輩のいちゃいちゃタイムの邪魔しないで! 全て心の中で叫んでから先輩に声を掛けた。 「先輩、進捗は?」 「もう終わる」 「片付けますね」 僕は予備の白衣を着て備品を片付けた。 「志摩、今日分のデータ類は改めて整理するから今はこのままでいい」 「分かりました」 紙で出力されたものはファイルに纏める。 「伊藤、昨日までのデータは明日共通ファイルにエクセル入力しておいて。田中さんに引き継いでおくから」 「はい明日田中さんに確認してもらいます」 「じゃあ先輩、帰りましょう」 点検、戸締まり、消灯をして二人を廊下に押し出した。 「僕、これから先輩と用事があるからまたね、伊藤」 「コトくん…」 先輩の腕を引き、即座に会社を出て先輩の部屋へ向かった。 「志摩…」 「…え?、」 「ゴーイン」 はい、反省…。 先輩からの一言は図星で、心が痛んだ。 「伊藤とは仲が悪いのか?」 ギクッとした。 多分、今一番触れて欲しくないヤツ…。 「先輩の部屋で話しますから…弁当でも買って帰りましょうよ」 それだけしか今は言えない…。

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