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第30話

狭く熱いユキの中を擦り、融けそうな感覚に囚われる。 僕の下で嬌声をあげて涙を流すユキはとても綺麗で、儚げに見えた。 蜃気楼のように…夢と現(うつつ)の境目が曖昧で…確かにユキを抱いているはずなのに際限無く求めてしまう。 いっそ一つになれたら… 隙間に入り込もうとする液体のように、最後のピースを嵌めるパズルのように。 何度目かの高みにのぼり、その熱を吐き出してもなお…欲しい… 渇望してしまう…。 「…しつこい…」 ユキさん、正気に戻った…。 スイッチが入れば可愛く甘えてくれるのに…。 「調子にのっちゃいました…スミマセン…」 可愛い過ぎるユキさんにも原因がある、とはさすがに言えない。 「汗もかいたしシャワー浴びましょう、先輩」 ギロっと睨まれた。 しまった!間違えた! 「…ね、ユキさん」 仕方ない、という顔をしたユキさんを抱っこしてバスルームに入った。 暗い闇、見えない恐怖。 場所や時間の感覚がない。 恐る恐る… 手を伸ばして… 指先に触るものの感触を確かめる術もなく、 ただ… 不安にうち震える。 手と足に枷を嵌められて 体から自由を奪われた。 夜毎開かれる体は抵抗はするが 無意味だと知っている。 嬲られることに慣れてしまった。 『…は……から』 『ど……ても……見……ない』 ー夢? 違う… 遠い…遠い記憶。 幸せなはずなのに…悲しい記憶…。 「…ま、志摩…」 揺り起こされれば目の前に愛しい人。 「はい、ここに…」 『ここにおります、宝漣さま…』 ……! ばっと起き上がった。 何だ、今の? 心臓が壊れそうなほど強く早く打っている。 「志摩…」 先輩が心配そうに顔を覗き込んでくる。 脂汗が滝のように流れて気分が悪い。 「先輩…ぎゅってして…」 普段なら絶対にやってくれないのは分かっている。 「…しま…」 でも、優しく両手で抱き締めてくれた。

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