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第34話

…今日は仕事が手につかない…。 隣のデスクに居るべき薫は先輩と学会に出席…。 あ~あ、僕が行きたかった…。 「こら、志摩」 あ~あ、柿崎さんに怒られる…。 「はい、なんでしょう」 自分でもわかるくらい空気が淀んでいる。 「その顔、何とかならない?」 「無理です」 「ほら、コーヒーあげるから」 「要りません」 柿崎さんを冷たくあしらい仕事に手をつける…。 雑念を振り払うには集中するしかなく普段の何倍もの精神力をつぎ込んで仕事に打ち込んだ。 疲れるし何よりも楽しくない。 薫の出現と先輩の出張で心を掻き乱されるなんて…子供なんだろうなぁ。 明日は土曜日、仕事はお休み。 業務を終わらせ、自分の部屋で買ってきたお弁当を食べた。 味気ない…。 先輩に会いたいよう。 顔がみたいよう。 せめてラインでお話しよう。 『先輩、お疲れ様です。学会はどうですか?興味深い発表はありましたか?僕は早く先輩に会いたいです。 寂しい…(´;ω;`)』 ちょっと女々しいかな…。 返信を待って……待ってもなかなか既読すらつかない。 今日は普段メールのやり取りだけの先生方も来るから飲み会にでも行ってるのかな~? 寂しさをほろ苦いビールで紛らわせた。 中学三年生の時に親の転勤で見知らぬ町に引っ越す事が決まり、父親は仕事の都合上先に行ってしまったが僕は受験生ということもあって卒業するまで母親と住んでいる町に残った。 引っ越し先の学校を受験することは決めていたが受験校の情報がない。 ギリギリ文化祭を見学できた学校が一つだけあって、高校はこんな感じなのかとあちらこちらを見て回った。 その中でやけに本格的な研究発表が展示してあって、高校生ってすごいんだなとひどく感心したのだが、その発表者が先輩だったというのを後から知った。 「先輩がすごい人だっていうのは知ってるんだよ…」 大学を卒業して就職した企業でも研究を続けている…。 今回発表はしないが学会にも論文を出している。 僕はしがないサラリーマン。 先輩は将来を嘱望される研究者。 あーヤバい、落ちていく…。 先輩は僕の事をどう思ってるんだろう? 言い寄ってくる後輩? 恋人? 好きって言われたことあったかな? いつも僕が我慢出来なくて…半ば無理やり迫っているようなものだから…。 僕は先輩に必要とされているのかな…?

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